2015年09月13日

軽度知的障碍なっちゃん(22歳)のレッスン風景その2

前回ご紹介したなっちゃんのレッスン風景は、すでに譜読みを終えた曲のレッスンだったため、どういう経緯であそこまで至ったのか、お伝えすることができませんでした。そこで、新曲のレッスン風景を録画することにしました。読譜アプローチも録画し、字幕スーパーでレッスン内容を解説しています。


【解説の補足】

読譜を反射につなげる、オルガン・ピアノのアプローチは、色音符ではない状態で音名で歌い、弾きます。


【声かけの補足】

昔は、こんな風に余裕のある声かけはできなかったなぁとつくづく。こういう声かけが、障碍あるなし、大人子ども関係なく、あらゆる生徒さんにできるようになったのは、自閉症スペクトラムのイヤイヤ虫が付くタイプの生徒さんに出会ったおかげです。

イヤイヤ虫タイプの子から学んだのは、相手の意思を尊重する語尾でした。同じ自閉症スペクトラムの子でも、ですます調で話すタイプの子には「弾きます」という語尾を使う方がよいのですが、イヤイヤ虫タイプの子にはこの語尾が高圧的に響いてしまいます。 

こういう子は、「弾いてみない?」「弾こうか。」「これとこれ、どっちから弾きたい?」と声かけを変えるだけで、前向きにレッスンに取り組んでくれるようになるんですよね。こういった声かけは定型発達の子にもよくて、特に反抗期の小学4年生以降の子には必要な声かけとなるのではないでしょうか。 

レッスンは自分主体で進むものだということが、生徒さんの中で定着すると、この動画のように「ここにペダルを入れたいなぁ」「ト音記号からがいい」など、生徒さんの方から「こうしたい」と言ってくれるようになります。言われたからやるのではなく、自らの意思で取り組むという、意識の高いレッスンになるんですよね。 

こういう声かけを、それぞれの生徒さんに合わせてできるようになるのに、結局10年以上かかってしまいましたが、今ではすんなりと口から出てくれるようになりました。このことで生徒さんとのコミュニケーションが深まったように思います。 

この動画は、両手奏に至るまでの下記のような、「ステップの多さ」という観点で見ていただくこともできると思うのですが、「声かけの語尾」という観点でみていただくのもひとつではないかと思います

(1)片手ずつ弾く
(2)わからなかった左のリズムを確認する
(3)先生の右手に合わせて、左を歌う    
  →左リズムの理解を促すため
(4)先生の右手に合わせて左手を弾く
(5)両手に挑戦する

ところで、この自主性を促す声かけは、語尾だけではありません。たとえば、指番号。「楽譜には4の指って書いてるよね。」と注意するだけでは受動的なもので終わってしまいます。このとき「4の指で弾けばつっかえずに弾けるよ。4の指で弾くことがコツだよ。」という言葉をかければ、「何故その指使いなのか?」という理由がわかるため、「先生に言われたから」という受動的なものではなく、能動的にその指使いで弾こう思えるようになります。 

これは定型発達の子でも、大人の生徒さんでも同じですよね。指使いの理由は、効率が良いというだけでなく、音色、ノリ、フレージングといった、さまざまな理由が挙げられます。指くぐりは何故あるのか?何故3の指でくぐり、何故4の指でくぐるのか?3和音は135と125と、何故和音によって使う指が違うのか?理由がわかれば、同じような音型が出てきたときに自分で考えることができるようになります。 

「言われたから」という意識を植え付けてしまう声かけは、小学4年生にもなると反感を買ってしまいますよね。自我が芽生え、能動的に動きたいと思っている子に、このような声かけをしても「うるさいな」「わかってるよ」と思われるだけではないでしょうか。これは、幼児にしても同じことだろうと思います。注意をするのではなく「何故」を伝えることを、私は大切にしています。

FBへの投稿です。
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emksan at 14:49│ 障碍&幼児 | ピアノ/レッスン