2013年11月14日

ラクに弾くコツを伝授するレッスン

弾けてないわけではないけれど、
弾きにくくてたまらない。
動きにくいので、
表情をつけるまでに至らない。
とにもかくにも、必死で楽譜通りに弾いている。

この曲、こんな曲じゃないはずなんだけど。
自分が弾くと、こんな風にしかならない。
苦しいだけで楽しくない。
私に、この曲は難し過ぎて、
弾けるようにはならないんじゃなかろうか・・・。


大人の生徒さんのレッスン。
生徒さんが弾いてくれた、
モーツァルトの「きらきら星変奏曲」からは、
こんな心の声が聞えてくるようでした。

こんなとき私は、
「大丈夫弾けるようになるよ〜!」と、
この切ない心の声を、
包み込みたい気持ちでいっぱいになります。
この生徒さんは子どもの頃しっかり練習してきた人。
指も速く動きます。
ただ、コツがつかめていないので、
ぎこちなくなってしまうだけなんですよね。

そこで、何故弾きにくくなっているのか?
弾きやすくするためのテクニックを伝授することに
レッスンの焦点を定めることにしました。

私はこういうレッスンをするとき、
パソコンの印刷用紙を持ち出してきて、
下写真のように伝授すべき練習方法を書き出し、
生徒さんに渡すことにしています。


きらきら星レッスンメモ編集済み


レッスン中にサササッと書き出していくので、
とても汚くて読みにくいですが。(笑)
今日はここからいくつかの練習方法を、
ご紹介したいと思います。

きらきら星var1-1

まずは、このパッセージ。赤枠と青枠です。
生徒さんの様子をみていると、安定感がないんですよね。
安定感がないと、
音を外しやすくなり、音も鳴ったり鳴らなかったり。
とにもかくにも弾きにくそう!
そこで伝授した練習方法がこれです。

きらきら星var1-2

弾きにくくしている原因は、2,3指のせい。
2,3指がフガフガしているのです。
こういうハーモニーは、
中の音への意識が重要なんですよね。
この練習は、1−5指をおさえたまま、
ドラドラと3232指だけを動かす、というものです。




生徒さんが上手く弾けないのは、
2,3指への意識が足りないから。
指が独立して動いていないんですね。
そのため、付け根から動かす意識を持つということ。
最終処理として第1関節で鍵盤をとらえる、ということを伝えました。




青枠の部分は、このような練習になりますね。

きらきら星var1-3

次に、以下の箇所。
赤枠のアルペジオです。

きらきら星var1-4

スケールにしてもアルペジオにしても、
親指の支え次第といえるくらい、親指は重要です。
この生徒さんは、その親指の支えがフガフガだったので、
以下のような練習方法を伝授することにしました。

きらきら星var1-5

以下は動画です。
最後の「ド」で、親指が安定していることが大切です。




次の動画は、親指が安定していない悪い例です。
フガフガな親指では、
そのあとに来る「ミソ」を上手く弾くことができなくなります。
親指を寝かせてしまうのではなく、
親指を立てて関節の安定をはかります。




これで親指が安定してきたら、
次の練習に入ります。
スケールもアルペジオも、
親指くぐり後の指の準備が必要不可欠。
この準備ができていないと、
「よっこいしょ」とその部分のリズムが崩れてしまうんです。

弾きながら鍵盤を探していては、
楽曲の速さに間に合わないですし、
腕に力が入りやすくなってしまいます。
「探す」という行為は、腕に力が入ってしまうんですよね。

きらきら星var1-6
親指「ド」の後にくる、ミソを一度に弾きます。
ドを弾いたらミを探し、
ミを弾いたらソを探すということなく、
反射的に、瞬間でにミソに指を準備するという練習です。




次に、左手のこの動き。
これまた親指の支えが要となった動きなんですよね。

きらきら星var1-7

この生徒さんは親指そのものが動いておらず、
手首に頼って親指の音を鳴らしていました。
これでは他の指まで不安定になってしまい、
伸びやかに弾くことができません。
なにより「ドミ」の後にくる「ド」に、
対応することができませんし、
この次の小節1音目にも対応できません。

きらきら星var1-8

そこで伝授したのが、上記の練習。
親指だけを動かすためのものですが、
最初のものは指が広がるため負荷がかかりいやすいので、
手が痛むような場合は、2小節目の2度バージョンで練習します。

とにかくやりすぎないことが大切。
まだそこまでの柔軟性がないうちは、
体に必要以上の負荷がかかってしまい、
痛めてしまいかねません。

少しずつこのような柔らかさを育み、
その範疇で親指そのものを動かします。
大きな音は必要ではありません。
動く範囲で少しだけ動かします。




次の動画は、親指が動いておらず、
手首の助けを借りている悪い例です。
このような練習をしても、
必要なことは習得できません。




ところで、このパッセージでは親指独立のほか、
枠組みの安定が必要になってきます。
ドからミに跳躍する、その枠の安定です。
効率よく動くには、重心をどこにおき、
どのような動線にしたらよいのか?
それを体感するのが以下の練習です。

きらきら星var1-9

ここで必要なのは、親指の支えです。
親指の関節を安定させて、
5指から2指への動線を確認します。




以下の動画は、悪い例です。
宙を浮いて移動するのは効率が悪い上、
音も外しやすく、腕に力が入ってしまいます。
また、腕に力が入ってしまうということは、
音楽の流れが滞ってしまうということ。
いいことがないんですよね。
大切なことは、バスの音「ド」の方向性です。




最後に、このパッセージにおける、
2指の動線を確認しました。
この指の動線は斜めなんですよね。
斜めに置かれたシャープペンが、
2指の動線です。

2指の動線1

2指の動線2


このパッセージの練習は、
生徒さんがまだ譜読みを開始していない変奏でしたが、
問題は、譜読みができても、
「思い通りには弾けない」というジレンマを抱えてしまうということ。

私は、生徒さんが一人で譜読みできても、
ジレンマに陥るだけだろうと判断したときは、
子どもの生徒さんでも一緒に譜読みをすることがあります。
楽譜は読める。
ジレンマはその先にあるテクニック。

何度弾いても、どんなに真面目に練習しても、
いっこうに弾けるようにならない!というジレンマ。
生徒さんがそういうジレンマに陥りそうな箇所というのは、
私自身経験済みのことなので、
先読みできるんですよね。(笑)

実際、そのパッセージだけを抜き出して、
その場で「弾いてみて」というと、
思ったような現象が目の前で起きます。
そこで、そんなときは先に弾くコツを伝授してしまうのです。

レッスンでここに上げたような練習をした後、
楽譜に書かれたように弾いてもらうと、
「さっきとは別人のようにラクに弾けている!」と
生徒さんはその場で実感することができます。
あとは身につければいいだけなんだ、
この練習をしていれば弾けるようになる!と、
希望が見えてくるんですよね。

こういう練習、
子どもの生徒さんには、
「魔法の練習」と言っています。(笑)
発達障碍の子などは、とぉっても素直なので、
「本当だ!魔法だ!」とその気になってくれるんですヨ。

この生徒さんの1時間レッスンは、
コツの伝授で始まり、
コツの伝授で終わりました。

「すごいすごい!!!
次のレッスンまで家で練習するのが楽しみ!!!」

生徒さんが目をキラキラと輝かせて、
こんな風に興奮してくれると、
私まで嬉しくなっちゃう♪

どんなに真面目に練習しても、
「なんでそこが弾けるようにならないのか?」という
原因が見えてこなければ、
苦しいだけなんですよね。
やみくもに弾くしかないのですから。

先生はそのためにいる!
原因を発見し、
「よしやるぞぉ〜!」と目を輝かせる生徒さんに出会うと、
教えるって楽しいな〜と、
とっても幸せな気持ちになります♪


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emksan at 13:46│TrackBack(0) ピアノ/レッスン 

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