2007年10月29日
ピアノの歴史19【ベートーヴェン第4期】
【ベートーヴェン(1770〜1827)】 【ベートーヴェン/本---Amazon.co.jp】
このピアノは国立音楽大学楽器学資料館が所蔵している、
1820年製のブロードウッドです。
・・・・ベートーヴェンが持っていたピアノの音域と同じ。
写真で見る限り、形もそっくりです。
1817年47歳の誕生日を迎えたベートーヴェンに、
1台のピアノが贈られました。
カルクブレンナー、リース、フェラリ、クラーマー、クニヴェットら
ロンドンに在住していた音楽家からの贈り物、
ジョン・ブロードウッド・アンド・サンズのグランドピアノでした。
イギリス式のアクションを持ち、
音域は6オクターブありました。(C1-c4)
ダンパーペダルとシフトペダル付き。
右側のダンパーペダルは2本に分かれており、
そのうちの右側が高音域のダンパーを持ち上げ、
左側は低音域のダンパーを持ち上げました。
・・・・・一体どんな感じなんでしょうね〜。
面白い使い勝手のよさそうな機能ですよネ。
ベートーヴェンはこのピアノを終生所有し続けました。
現在、ハンガリー国立博物館が所蔵しています。
【1818-1821年頃・・・使用楽器ブロードウッド製C1-c4】
〜イギリス式6オクターブ〜
ピアノソナタOp.106第3-4楽章、Op.109、Op.110、Op.111
作品106の第1-2楽章には、このブロードウッドにはない高音域が使われています。
ブロードウッドを手に入れる前のピアノはf4までの音がありましたが、
このブロードウッドはc4に留まります。
しかし、低音域が4度も広がりました。
第3-4楽章をこのピアノで作曲したベートーヴェンは、
第4楽章で初めてC1という最低音を使っています。
この音は第4楽章の115小節目に出てくるのですが、
面白いことにすべての音がオクターブで書かれているにも関わらず、
最初の1音はオクターブで書かれていません。
これは、このピアノでは出せなかった音だからなのですね。
・・・・・こうやってみると、本当にベートーヴェンの意思を尊重するならば、
この音をオクターブで弾くべきなのでしょうか?
しかし右手が大きく跳躍し上昇する勢いを感じるのは、
第2音目からだとするなら楽譜通りの方がいい気もしますし。
ベートーヴェンはピアノの性能をわかった上で、
この第1音目だけはオクターブで弾かなくてもいいように、
作曲したのかもしれないですよね〜。
オクターブで弾くか弾かないか。
ピアノを弾かない人にとってはどうでもよさそうなことでも、
実際弾く人間にとっては音楽の感じ方が全く異なってくるので、
結構重要だったりするんですよネ。
その後作曲された作品109や作品111には、
このピアノでは弾けない高音が使われています。
しかし、当時のピアノで不可能だったわけではなさそうです。
ウェーバーがこの頃持っていたピアノの音域は6オクターブ半あり、
これら作品を演奏できる音域を持っていたからです。
ベートーヴェンにとって最後となったピアノは、
コンラッド・グラーフが製作したものでした。
ベートーヴェンの死の数年前に作られたピアノのようです。
このピアノはウィーン式のアクションで、
ベートーヴェンが所有してきたピアノの中で一番広い音域を持っていました。
しかし残念ながら、
このピアノでピアノソナタやピアノ協奏曲が作曲されることはありませんでした。
『ベートーヴェンはピアノの不完全さについてひどく不満を述べ立て、
こんなピアノでは効果のある音も、力強い音も出すことができない、
と言ってブロードウッドのピアノを指し示した。
私の目に映ったのは、なんと惨憺(さんたん)たる場景だったことか。
高音部はもはや全然音が鳴らなかったし、切れた弦がからまって、
まるで嵐の突風に吹き寄せられた茨の塊のようなありさまであった。』
--------1824年9月、最後のソナタ(Op.111)を書き終えたベートーヴェン。
そのときベートーヴェンの自室にあったブロードウッドについて。
(ハープ製作者のヨハン・アンドレアス・シュトゥンプの手記より)
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