教材

2007年11月24日

ピアノ導入教材を眺めて(7)拍子感

今日は”拍子”について教材を眺めてみようと思います。
拍子にはイロイロありますネ。
4分の4拍子、4分の3拍子、4分の2拍子。
8分の6拍子や8分の3拍子、そして2分の2拍子。
さらにさらに、4分の5拍子などというものもあります。

私が子どもの頃使ったバイエルは、
51番まで4分の4・3・2拍子しか出てきません。
52番で初めて8分の6拍子が出てきますネ。
しかし、それ以外の拍子は出てきません。

私が気に入ってレッスンで使用しているオルガン・ピアノは、
ほとんどが4分の4拍子と4分の3拍子。
たまぁに4分の2拍子がある程度。
それ以外の拍子は、1,2巻には出てきません。

バスティンは、ピアノ・ベイシックス1巻だけを見ると、
やはりこれも4分の2・3・4拍子だけですね。
私のお気に入りのリラ・フレッチャーも同様です。

これらに共通して感じるのは、
”感覚”での導入ではなく”理論”で指導するという方法です。
4分の4拍子は、4分音符が1小節に4つ・・・といった具合ですネ。
で、私はどのような指導をしているかというと、これのどれとも違うのです。
まずは”感覚”で・・・というのが、拍子感における私の方針だからです。

そこでマイナーな教材ミュージック・ツリーなんですヨ。
ミュージック・ツリーのタイム・トゥ・ビギンは、
5線のないプレピアノ・・・といった教材です。
5線はありませんが、いきなり3曲目で5拍子が出てきます。
4分音符と2分音符による5拍子です。
小節線すらない楽譜なので、
本当にただただ”感覚”による拍子感です。

その後教材の中ほどで変拍子が出てきます。
5拍子と4拍子が交互に出てくるんですヨ。
hyuosi1

この曲はほんっとうに楽しい曲で、生徒さんたちみんなが気に入る曲です。
実際の楽譜は5線もなければ小節線もありません
とても面白い伴奏がついていて、私も大好きな曲なんですヨ。
そのほか、4分の6拍子の曲も多く出てきます。
 ・・・・・まだ8分音符が出てきていないので、
     4分音符・2分音符・付点2分音符で作れる拍子なのデス。


小節線が出てくるのは、この楽譜のずっとずっと後ろの方です。
それまでは、小節に何拍入っているか・・・という理論は抜きで、
感覚だけに訴えていきます。

私は、このプレの段階で理論抜きにして、
感覚だけで拍子感を身につけていく方法が気に入っています。
この方法で育った子は、
途中でテンポが狂ったりすることがほとんどないんですよね。
安定した拍子感というものを身につけるのだと思います。

安定した拍子感を身につけるために、
この教材には”歌詞”という強力な助っ人がいます。
前述の5拍子の曲にしたって、
歌詞がなければただただ”タンタンターアンタン、タンタンターアン”と、
能面のようなリズムで終わってしまいかねません。
しかし、そこに生き生きとした歌詞が加わることによって、
1小節のまとまり拍の重さ⇔軽さ
が実感できるんですよね。

拍の重さや軽さ、ノリを伴った拍子感というものを、
私はずっとずっと学んできませんでした。
常にリズムを譜読みするときは、「1と2と3と〜」と計算するだけ。
そこに生き生きとしたリズムなんてなかったのです。
もちろん拍子の重さと軽さなんて感じたこともありません。
頭では、「123123」と数えていても、
それは能面のような「数える」という行為でしかなく、
音楽ではなかったんですよね。

小学2年生頃、ソナチネでテンポの狂いが目立ち始めます。
突然拍子が狂うんですね。
そりゃそうです。
もともと安定した拍子感というものが体にないのですから。
細かなリズムだけで音楽を進めていたら、
ワケがわからなくなってテンポも狂うってもんです。

中学に入って先生に言われたコト。

「あなたは、リズム感がないわねぇ〜」

(_ _;)(_ _;)(_ _;)(_ _;)(_ _;)(_ _;)
言われても、どんな風にリズム感がないのかがわからない私・・・。
かわいそうな私・・・。(T_T)

なんとかリズムを克服できたのは、
中学時代ブラスバンドでパーカッションをやったからでしょうか。
その後本格的にスネアを習ったことがあったので、
そこで確実になっていったのだと思います。

とはいえ、それはあくまでも”リズム”でして・・・。
楽曲の中で常に流れ続けている安定した拍子感というものは、
正直ピアノ講師になってから手に入った気がします。
拍子を音楽的に指導したいと、
自分なりに試行錯誤した時期があったんですよね。
そうしたら、いつの間にか自分の演奏にもそれが生かせるようになって。

理論は体が覚えてしまえば、あとからいくらでも入っていく。
理論で頭をガッチガチにしてから音楽に変換すると、音楽が生き生きしてこない。

私の経験から私が感じているコト。
理論が先という方法だとどこかにひずみが生じてしまう。
ひずんでいた私が実感しているコト。<(;~▽~)
だからこそ、生徒さんたちに私と同じ経験はさせたくないと思うのです。

私が使用しているミュージック・ツリーは、一風変わっているのかもしれません。
5拍子がこんなに頻繁に出てくる教材は珍しいですものネ。
だから、ミュージック・ツリーじゃなきゃダメとは思わないのです。
どんな教材を使っていても拍子感を身につけることはできます。
というのも、

教材から拍子感を学ぶことなんてできない

からです。
体に取り込む・・・という意味合いの拍子感は、

先生から直接伝授

されるもので、教材から学べる類のものではないんですよね。

ジャズをやるのに楽譜とにらめっこしていてもノレナイ。
CDをたっくさん聴いて、先生のセッションをたっくさん聴いて、
先生からノリをトコトン伝授される。
そうやって学ぶのが”ノリ”ですよね。
ジャズでいう”ノリ”が、クラシックでいう”拍子感”なのデス。
この基本の拍子感があって、
そこに様々なダンスやら歌やらの”ノリ”が加わるのがクラシックなんですよね。

ということで、5拍子の出てこない教材があったってイイのです。
もちろん出てくる方が楽しいとは思うケレド、
理論ではなく生きた拍子感を習得するという視点でみると、

拍子に関しては教材云々ではなく、口伝

ってコトなんです。
じゃぁ、なんで”拍子”という観点から教材を眺めたんだ!ですが・・・。
それは、単に私がミュージック・ツリーを気に入っているからです。(^_^;)
こういう教材もあるよ〜ってことなのデスヨ。


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2007年11月23日

ピアノ導入教材を眺めて(6)歌詞の付き方

突然何それ?というテーマですが。
”歌詞の付き方”を眺めてみようと思うのデス。
というのも、私は導入期に歌うということを、
とても大切に思っているからです。

ここで重要だと思うのは”歌いやすい”というコト。
生き生きと歌うことは、
生き生きと演奏することに繋がるからです。

私が教材を眺める中でチェックするのは、
日本語の高低アクセントに無理のないメロディがついているか、ということです。
逆に言えば、そのメロディに合った高低アクセントの歌詞がついているかというコト。
輸入されてきた教材によくあるのです。
とぉっても歌いにくい歌詞に訳されているということが。
これなら歌わない方がマシじゃない?くらいに。(笑)
逆に混乱を招いてしまうんですよね。

家にある教材をイロイロ眺めていたのですが、
結構こだわって教材を選んでいたせいか、
歌いにくい歌詞の楽譜が手元にありません。<(;~▽~)
が、楽曲のフレーズと歌詞のフレーズが一致しないパターンで、
いい例が見つかったので、それをご紹介しますネ。

これは私が気に入って使用している、オルガン・ピアノの例です。
こういうパターンは例外で、これ以外はうまく歌詞が付けられている楽譜なんですヨ。


kyouzaikashi1

これを使って初めてレッスンしたとき、まいったなぁ〜と思ったものデス。
演奏するフレーズと歌詞がズレてます。
本来この楽曲はアーフタクトで演奏されるべきなので、
この歌詞じゃ上手く弾けないんですよね。
混乱してしまうだけです。
普段歌っている歌詞の方が混乱を招かずに済みます。
「わたしゃ おんがーくか」
歌詞の上では付点のリズムが付いてしまいますが、
これはそれほど混乱をきたさないのですし。

この教材でこういう例は本当に珍しく、
うまいこと歌詞が付いている曲ばかりなんですヨ。
気持ちよく歌えば、いい演奏になる・・・みたいな歌詞ばかりです。

例えばコレ。
これはバイエルに歌詞をつけたものですが、
見事な歌詞だなぁとつくづく思います。

kyouzaikashi2

ほんと見事な歌詞ですよね。
日本語の高低アクセントとメロディの自然な関係。
フレーズと歌詞のまとまりの一致。
Bの変化を「さぁ、さぁ」という出だしで表現しているところなど。
こういう曲はしっかり歌詞で歌いこんで、
そこで得たものを演奏に生かしたいなぁと思うんですヨ。

次の例は音符の動きと言葉のイメージがしっくりくるパターン
これも歌っていて楽しいですし、演奏がとっても生き生きと自然になります。
ミュージック・ツリーの例とオルガン・ピアノの例、2つ見てみましょう。


kyouzaikashi3

これ好きなんですよね〜。
指と音がクルクル回る感じが、生き生きと表現されている歌詞ですよネ。
自然に3拍子で演奏できるようになりますし、
1小節のまとまりも生き生きと演奏できるようになる歌詞です。
これはミュージック・ツリーからの例ですが、
次にあげるのはオルガン・ピアノからの例です。


kyouzaikashi4

これも大好きな曲です。
”くるくるくるくる”そのまま指の動きのイメージですよネ。
動きと拍子とフレーズが一致する歌詞って本当にすばらしい!
しかも日本語の高低アクセントにも無理がなく歌いやすいですよね。
こういう楽曲に出会うとウキウキしちゃいます。

楽器店へ行って楽譜を眺めると、
歌詞に気を使っている教材なのか、
全く意識されていない教材なのか一目瞭然です。
子どもにとっての歌詞は、そのまま楽曲のイメージに繋がるもの。
だから、ないがしろにはできない・・・というのが私の意見です。

でも、最近の教材は気を配っている教材が多いですネ。
教材って進化するんだなぁって、こういうとき思います。
特に輸入ものは、そのまま輸入していいのか・・・ってトコロなんですよね。
日本に合った輸入の仕方というか・・・。
本来その教材が求めているものを日本で発揮するためには、
日本用に変換しなきゃいけないことも出てくるわけで。

こういうところにまで気を配ってくれている教材は、
使いやすい教材が多いなぁと思うんですヨ。


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2007年11月22日

ピアノ導入教材を眺めて(5)調の導入

私はバイエルで育ったクチなのですが。
バイエルの短所をそのまま自分の短所にしてしまった感があります。
もちろん今は克服してるんですヨ。
ただ、克服するのに時間がかかった気がするんです。

バイエルの短所。
それはしばらくハ長調だということ。
途中からト長調やヘ長調が出てきますが、
出てくる調の種類が少ない。

最近の教材は、この短所へアプローチした教材が多いですね。
いろんな調に導入期から触れておくほうがいい・・・という、
時代の流れがあるんですネ。
もちろんバイエルを使っててもいいんですよ。
バイエルは曲の構成がしっかりしていたり、
手の形が安定しやすいなどの利点があります。
バイエルで移調して遊ぶ・・・ということだってできるわけですから。

ただ、それでは話が終わってしまうので(笑)、
今はどんな形で様々な調に触れるようになってきているのか・・・、
というお話をしていこうと思います。

自分のお教室のための教材を探していた10年前のコト。
ほよよよぉ〜!と目から鱗だったのがコレなのです。
5指の型で様々な調に触れる・・・というものです。
これなら簡単!しかも楽しい!!
過去の自分が悲しくなりましたヨ。(T_T)


tyou1

123454321と弾けばいいだけ。
まずは、白い鍵盤からの5指の型を弾けるようになります。
楽譜で覚える必要なんてないんです。
耳と体だけです。
子どもにとっては、その方がラクチンなのデス。

私が使用している教材ミュージック・ツリーでは、
テキストブック2に全音と半音が出てきて、
この5指の型でハ長調、ニ長調、ヘ長調が出てきます。
この中に「移調してみよう」というアプローチが入ります。
 ・・・・・もちろんそれ以前にも、いろんな調の曲が出てきています。
     それこそ2の指を使って演奏するだけの曲の頃から。


私はこの時点で、白い鍵盤からの調すべてを弾くようにしています。
ロ長調だけ音を探すのに苦労しますが、
それ以外の調は、結構スイスイ見つけてくれるものなんですよね〜。
子どもの耳は柔軟デス。
2の指しか使っていない頃から、
様々な調の曲に触れているというのもいいのでしょうね。
黒鍵への違和感も、最初の頃から黒鍵に触れているのでありません。

その後、短調の5指の型を覚えます。
長調の3の指を半音下げればいいだけなんですよね。
体で長調と短調の違いを感じることができる。
これは私にとって目から鱗のことでした。

ミュージック・ツリーはピアノと楽典が一体化しているのが特徴です。
これはバスティンにもいえることですネ。
私はミュージック・ツリーを使っているので、
ミュージック・ツリーのアプローチ方法についてご紹介しましょう。

ミュージック・ツリーでは、この5指の型と同時に完全5度を覚えてしまいます。
バスティンは結構早い時期に、トニックドミナントの和音をおさえ始めますよね。
ミュージック・ツリーでは長3和音、短3和音は覚えますが、
いずれも分散和音でしか出てきません。
また、トニックとドミナントも主音と属音という1音で演奏します。
その代わり、自分で伴奏をつけてみようという試みがあります。
1音だけを弾けばいいので、とっつきやすく気軽に楽しめます。

これは、私のイメージでしかないのですが、
ミュージック・ツリーバスティンはとても似ているところがあるなぁと感じます。
確かミュージック・ツリーの開発が先で、
その後にバスティンが出版されたと思うのですが、
ミュージック・ツリーのよいところをそのまま受け継ぎ、
それをさらに万人向けにしたのがバスティン・・・というのが私の印象です。
 ・・・・・ただ、これはあくまでも私の私的な感想ですヨ。
     どう感じるかは、それぞれ指導者によると思うので、
     私の感じ方が絶対だとは思わないでくださいネ。


ところで、私が本格的に”調”というものに触れたのは、
ハノンのスケールだったような気がします。
昔は残酷でしたねぇ〜。(^_^;)
だって、いきなり4オクターブですよ!
そりゃ調に対して苦手意識を持ちますよ。
しかも、それをそのまま自分の演奏に生かせていたかというと、
まぁ、テクニック的には生かせていたでしょうが、
”楽典を演奏に生かす”という意味では、
まったく何も学んでなかった気がします。
 ・・・・・もちろん机上のコトは頭にあったんですヨ。
     全半全全半全全とかね。機械的ですねぇ。


その点、今の教材はかなり改良されて、
調がとても身近なものになりましたよね。
最近はどの教材もハ長調にこだわらず・・・、
という方向で作られているような気がしますし。

1本指でしかまだ弾けないというプレの段階から、
様々な調のカラーに触れていること。
これってすごく大切なことだし、そのほうがずっと楽しいですよネ♪


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2007年11月21日

ピアノ導入教材を眺めて(4)左右の頻度と両手奏への導入

前回かなりの独断と偏見で語ってしまったので、
今回は客観的に眺めて・・・でいこうと思います。(笑)

まず左右の頻度です。
どの教材を使おうかな?と楽譜を眺めるとき、
私は”左右の頻度”という視点で眺めることがあります。
右手ばかりが動く教材は、なるべく避けるんですヨ。
ただでさえ鈍い左手の動きが妨げられるので。
導入の段階で、左を右と同程度動かしていきたいと思うのデス。

教材の1ページ目から最後までさら〜っと眺めます。
例えばコレ↓。リラ・フレッチャーのとある曲から。

sayuuhinndo1

両手奏へ入る前に、どれくらいこのように左右同等の扱いがされているか。
また両手奏が導入されて以降、
どの程度左手が伴奏以外の動きを受け持っているか。
ざざっと教材を眺めることって大切だと思うんですヨ。

たいがいの教材は両手奏に入る前、
左右同等の頻度で出てくるように思います。
問題は両手奏が出てきてから・・・のアプローチかな。

例えば、私が使用しているミュージック・ツリー
この教材の難点は、両手奏がなかなか出てこないということです。
その反面左右の頻度がかなり同等です。

例えば、私が使用しているオルガン・ピアノ
両手奏に入ったとたんに左の頻度がガクンと下がります
その反面両手奏へのアプローチがわかりやすく、
順序だてて曲が並んでいます。

ということで、私はそれぞれの長所と短所を生かすべく、
両方の教材を併用することにしています。

すごく魅力的な教材なのに、
左手がハーモニーばかり受け持って動かない。
そういう教材って結構あるものです。
でも、その教材が悪いわけではなく、
全体を眺めてみて偏っているな〜と思ったら、
他で補えばいいのですよネ。
どの教材にも短所はあるのですから。

次に両手奏のお話。
オルガン・ピアノを中心に眺めていこうと思います。
どの教材でも、最初は両手同時にタンタンターアン、
などと簡単なアプローチから入ります。
この動きは重音になり響きが豊かになるので、
子どもたちみんな大好きですネ。

次にどちらかの音が切れて、どちらかの音が繋がる・・・
という動きへのアプローチがあらわれます。
私はオルガンピアノのアプローチが無理がなく気に入っています。
左手はソだけに単純化し、右手にレガートのメロディがきます。
バイエルのいいところをそのまま生かした感じですネ。

ryoutesou1

これはメロディも覚えやすく、部分練習しやすい曲ですね〜。(笑)
最初はどうしても左手につられて右まで切れてしまうんですよネ。
しばらくいろんな楽曲でこういう動きに慣れていきます。
単純な曲で、この動きを習得してしまえること。
その点が気に入っています。

次に同時に指が動くということを、
左の主音と属音を使うことで習得していきます。
これも左手は1と5の指だけ!と思えるので、
ラクに導入できる方法ですね。

ただ、オルガン・ピアノではこのような曲が突然出てくるんです。

ryoutesou2

これはねぇ・・・かなりいきなり感満載だと思うんですヨ。
突然こんなの弾け〜!と言われても、
子どもは混乱しちゃうだろうなぁと。
リラ・フレッチャーには、このようなユニゾンの動きへ導入する前に、
このような楽曲が入っています。

ryoutesou3

これだと左右同じ指を動かせばいいだけなので、
混乱がかなり解消されます。
ユニゾンは片方が5の指であれば、もう片方は1の指を動かさなきゃいけない。
不器用な子は、すぐに混乱しちゃいます。

しかも隣り合った音であれば動かしやすい(理解しやすい)ですが、
跳躍となるとさらに難しさが倍増します。
前述のちょうちょうは、レシシーと3度の動きが入りますね。
これはとてもわかりにくいし動かしにくいものなのです。
最初にこのようなユニゾンを学ぶのであれば、
跳躍せず指を順番に動かせばよいものから入る方が、
苦労が少なくて済むだろうと思います。

例えば、リラ・フレッチャーにはこのような曲があります。

ryoutesou4


こちらの方が単純でわかりやすいですね。
ただ、オルガン・ピアノの楽曲は誰もが知っている親しみのある曲です。
そういう曲を使用することで音と鍵盤がリンクしやすく、やる気が増すということもあるんですよね。
だから一概にリラ・フレッチャーの方法じゃなきゃダメ!ってわけじゃないんですヨ。

こうやって左右の頻度、両手奏へのアプローチの流れを、
ざざっと把握しながらレッスンすると、
それぞれの教材の長所を生かし、
短所をフォローしながらレッスンすることが可能になります。
あぁ、もうすぐあの楽曲だからコレコレをやっておこう・・・とか、
最近右ばかり使ってるから左を使った楽曲をやってみよう・・・とかネ。

たまに

「バイエルを使っているんですけれど、それでいいんでしょうか。」

なんて質問を耳にすることがあります。
もちろん他の教材でも、今使用している教材でいいんだろうか・・・と。
熱心な親御さんであればあるほど、
使っている教材というものが気になるのだろうと思います。

でも、教材が成長させてくれるわけじゃないんですよね。
どんなにすばらしい教材でも適当に使えば適当なものしか手に入りません。
どんなに短所ばかりが目に付く教材でも長所はあるもので、
その長所を生かして短所をフォローしていけば、
すばらしい教材になるものなんです。
要は使い方次第なんですヨ。



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2007年11月20日

ピアノ導入教材を眺めて(3)正しい手の形への導き方

今日は”テクニック”という視点から、教材を眺めてみようと思います。
ただこの観点は眺めるというよりも、
私の独断と偏見がかなり入り混じってしまう気がします。m(_ _)m

私は幼児教育学をやってきているので、
幼児の身体発達に添った形で、
無理なくピアノへ導入したいという思いが強くあります。
で、独断と偏見になっちゃうんですね〜。(^_^;)

何度かここで書いているかもしれませんが・・・。
子どもの身体発達は、体の中心から先へ向かって発達していきます。

kodomonoe1
↑最初は肩の関節が自由になり、点を描けるようになります。
線はまだ描けません。


kodomonoe2

が使えるようになると、上記のような線が書けるようになります。
肘の関節から手を左右に振ることで、
上記のような線が描けるようになるんですよネ。


kodomonoe3
↑やっとこさ丸らしきものが描けるようになってきます。
これは手首を回せるようになったから。
でも、まだ端と端が上手にくっつきません。
ただ、カーブが描けるようになった・・・というところでしょうか。


kodomonoe4
↑最終的に端と端が繋がるのは、
という関節が自由に使えるようになってから。
指って本当に細かい動きが可能なんですよネ。
人間の体って、本当によくできてます!!


ピアノという楽器は、この最終段階の指を使って演奏する楽器です。
やっと丸が描けるか描けないか・・・という状態で始めるピアノ。
どのような形でピアノと向き合えば、
楽しく正しい手の形や動きを取り込んでいけるのでしょう?

私にとっての大きなきっかけは、
知的障害重度の生徒さんのレッスンでした。
ここで何度か書いたかもしれません。


『親指は使うのが一番難しい!』


ということです。
彼の親指を鍵盤に載せることの難しさといったら!
親指は他の指と付き方が違うんですよね。
そのことに気づき親指にこだわらなくなったら、
次々に指が自由になっていき、
今では5本の指を鍵盤に載せて弾いてくれるまでに成長してくれました。

よくよく見てみると、
私が気に入っている教材は2の指からの導入になっています。
知らず知らずのうちに、
子どもの体にとって優しい教材を使っていたようです。
 ・・・・・これはラッキーでした。

私が使用している教材はミュージック・ツリーです。
かなりマイナーな教材のようで、
なかなか手に入らないのが残念なのですが。(T_T)
この2の指からの導入教材。
最近、増えているようですネ。

ということで、私の使用しているミュージック・ツリーをもとに、
ピアノを弾くための正しい手の形をどのように手に入れていくか・・・を、
眺めてみようと思います。

ミュージック・ツリー”タイム・トゥ・ビギン”。
これは5線が全く出てこない教材です。
音符を黒丸と白丸だけであらわし、
それが上下することで音の高低を表現しています。
これはバスティンなどでも見かける手法ですネ。

5線が出る前、5本の指を白鍵へ置く前に、
黒鍵を中心に使用しているのが特徴です。
これはショパンが発見したことじゃなかったかな・・・。
理想的な手の形を作るのに、ハ長調は一番難しいのですヨ。
人間の指はそれぞれ付き方も違えば長さも違う。
この指の長さや付き方の違いに、
ぴったりとフィットする鍵盤は黒鍵なんです。

position

ちょっと鍵盤に対して私の指だと大きいですねぇ。
親指はミに置いた方が私の場合自然かもしれませぬ。

長い3本の指を自然に黒鍵に合わせて伸ばしてあげると、
親指と小指が理想的な位置に落ち着きます。
こういうことが起こらなくなるんですヨ。↓

oyayubi-wrong

↑この状態から脱せないうちは、
手首も下がったままになってしまいます。
親指の正しい使い方を覚えないと、
正しい手の形は手に入らないんですよね。

黒鍵から導入することで、
自然に手首の位置が上がり、
親指も↓のように理想的な位置で弾けるようになります。

oyayubi-model

現代のプレピアノといった教材は、
黒鍵を使用して2,3の指からというものが多いように思います。
プレピアノなしに、いきなり親指から入る教材での導入は、
正しい手の形を手に入れるのに苦労するような気がします。
少なくとも、私は指導しづらいなぁと感じます。

次に、1指と5指の安定です。
私が使用している教材(ミュージック・ツリー)は、
2,3、4指に使い慣れてきたなぁといった頃に、
1-5の練習が出てきます。
 ・・・・タイム・トゥ・ビギンにはまだ出てきません。
    テキストブック1に出てきます。


1-5yubiundou

これは、私がとても気に入っている練習です。
楽譜を見る必要はないんですよね。
動きを覚えて、右手は最高音まで左手は最低音まで移動していけばいいだけ。
子どもは楽しくて端っこの鍵盤まで弾きたがります。
また、ここに書かれたアーティキレーションスラーが、
余分な力を抜くためのいい練習になるんですヨ。
手のひらの安定と、手首の柔軟性の両方が身に付くんです。

私はピアノを演奏する上で、
1-5指の安定ってすごく大切だなぁと思っています。
手のひらにV字ができる。
↓このV字の安定を大切だと思っているんです。

1-5yubiantei

以前使った画像に書き足してるので、
ちょいと見にくいかもしれませんが・・・。
オレンジ色の線をご覧ください。
このV字が安定していること、という意味です。

導入の時期にこの安定感を見に付けると、
指がと〜っても自由になるんですよネ。
音もクリアにきれいになります。

この枠組みがしっかりしてから3和音へ導入すると、
すごく安定した形で演奏できます。
いきなり3和音はきついな〜というのが私の感想です。

ということで、今回は私の独断と偏見デシタ。
次回は、もう少し”眺める”という視点を大切に、
両手奏や左右の頻度などのお話をしたいと思います。


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2007年11月19日

ピアノ導入教材を眺めて(2)ト音記号とヘ音記号

ドレミが読めるようになるって結構大変。
ト音記号とヘ音記号があるもんだから、
なおさら混乱しちゃう。
一体どんな導入が一番混乱を招かず、
やる気を引き出してくれるのでしょう?
今日は音符を読む(音名)という視点から
教材を眺めてみようと思います。


【ト音記号に慣れてきたらヘ音記号を導入】

これは
バイエルの手法ですネ。
最初はト音記号だけ。
しばらくしてからヘ音記号が出てきます。
ト音記号とヘ音記号を別々に覚えなければならないので、
戸惑ってしまったり混乱してしまったりする子が出てきやすい教材です。
また、なかなかヘ音記号を覚えることができません。

もちろんバイエルにもいい点はあるのです。
どの教材にも長所と短所があるんですよネ。
短所さえわかっていれば、
その教材の長所を生かして、
短所は自分でフォローして・・・が可能なので、
バイエルはやめたほうがイイ、とは決して思いません。


【1点ハ音を中心にト音記号とヘ音記号を一体化して覚える】

現代ではこれが主流なのかな、と思います。
ト音記号とヘ音記号は繋がっている・・・と覚えるので、
混乱がなくて済むのです。

dokuhu

最初真ん中のドを覚え、
そこからト音記号の「ドレ」とヘ音記号の「ドシ」、
「ドレミ」⇔「ドシラ」、「ドレミファ」⇔「ドシラソ」と
親指を中心のドに置き、音域を広げていきます。


【線上の音、線間の音を覚える】

こちらも前述同様、現代の主流のひとつかなと思います。
前述の方法と併用して教えている先生もいらっしゃるかも。

dokuhu2

線上の音、ヘ音記号はソシレファラ、ト音記号はドミソシレファ。
線間の音、ヘ音記号はファラドミソシ、ト音記号はレファラドミソ。

何番目の線に刺さっているか、
何番目の間にはさまっているか。
そうやって覚えていきます。
この方法は和音の基本形へ導入がとてもラクな方法で、
和音に苦手意識を持たずに譜読みすることができるようになると思います。


【ト音記号の「ソ」、ヘ音記号の「ファ」から見た目の音程で覚えていく】

まずは、音符の名前は抜きにして、
隣同士の音との関係を把握することから始めます。

ontei1

5線は使いません。
最初はこんな感じで2度や3度の音程を見た目で感じて覚えます。
音符の○の位置が高くなったり低くなったり、
隣同士の音との関係を鍵盤にリンクさせることができるようになった後で、
音名を導入します。

ト音記号の「ソ」、ヘ音記号の「ファ」の位置を覚えます。
その後そこから2度上、2度下、3度上、3度下・・・と覚える音を増やしていきます。

この方法は一部とても気に入っているのですが、
音名そのものを覚えるのはとても大変です。
外国人の思考回路には合っている・・・という話を聞いたことがあるのですが、
私の教えている生徒さんたちには、混乱を招くだけのようでした。


【私の場合】

私は音名そのものの導入は、
1点ハ音を中心に・・・という方法をとっています。
バイエルの長所を生かしつつ読譜は1点ハ音からという教材があるんです。
オルガン・ピアノという教本です。
音名の読譜という点においては、この教本を中心にしています。

また、年齢によっては線上線間を使う場合もあります。
ただ4、5歳児に線上線間はちょっときついんですよね。
しかし小学生になるとラクに入っていくのが線上線間。
途中から線上線間に切り替えて・・・が私のパターンかも。
私の場合線上線間用の教材は使用していないので、
線上線間用の教具を用いています。

しかし最後にご紹介した方法にも利点があるんですよ〜。
楽譜を模様として視覚的に捉えることで、
フレーズのまとまりやハーモニーの変化に敏感になるということ、
これは初見が早くなることにも繋がります。
また、それ以外の点においても気に入っているところがあるので、
オルガン・ピアノと併用して、ミュージック・ツリーという教材を使っています。

ただし、ト音記号の「ソ」とヘ音記号の「ファ」という読譜を、
ここで指摘してしまうと生徒さんが混乱してしまうだけなので、
この教材において音名を読むことは強制していません。

また、発達障害の生徒さんなど、
ミュージック・ツリーが不向きだと思われる生徒さんもいらっしゃいます。
その場合1点ハ音から読譜ができる楽譜、
リラ・フレッチャーを使用することもあります。

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