スケール

2010年08月09日

スケール親指の柔軟性

自閉症の女の子へのレッスン。
この子は家へ来たばかりの頃、鉛筆が持てなかった子。
筆圧が驚くほどなく、鉛筆を持とうにも手の中で鉛筆はフラフラフラフラ。

「うちの子鉛筆が持てないんです。」

というお母様の言う意味が最初わからなかったのですが、
こういうことなのね〜!!と見て驚きました。
なんとか持つものの、鉛筆が手の中でフラフラするので、
描く線はそこに線があるのかないのかというほど薄いのです。

こういう生徒さんは私のお教室に何人かいましたが、
今現在はみなさんしっかりとした指で、
しっかりとした音を奏でてくれています。
1本1本の指を鍛えることから始めて・・・。
本当にみんな努力家!!
鉛筆が持てなかったなんて信じられないほど、
スラスラとしっかりした音、美しい響きで曲を仕上げてくれています。

ところで、こんな風につむぎ歌やブルグミュラーを弾けるようになったこの子ですが、
やっぱり親指や小指は弱いのです。
特に親指のコントロールがとても苦手。
見ていると他の子にはない関節の弱さが目立ちます。
これまで様々な楽曲に取り組みつつ、
並行して親指の強化や、
親指のコントロール力を身につけるような訓練を、
地道にしてきていました。

ずいぶんと親指がコントロールできるようになってきて、
最近はスケールを16分音符の速さで弾くところまできています。
ここにひとつ壁が。
1本1本の指は16分音符の速さに対応できるまでになっているのですが、
くぐりの際に、リズムが崩れてしまうのです。
これは、他のお子さんにも言えることですし、
大人の生徒さんでも見られがちなことですネ。

そこで、「親指ひょっこりゲーム」なるものを始めました。
いつまでも親指が隠れていないということです。
美しいスケールを弾くには親指直後の指の準備が、
いかに早くできているかが勝負。
この子は「ひょっこりっ!」という掛け声をとっても気に入ってくれて、
単純な部分練習も「ひょっこりっ!」「ひょっこりっ!」と、
レッスン中それぞれ10回以上も取り組んでくれました。

ほんと、子どもってちょっとした声かけ次第なのですよネ。
「ゲーム」にしちゃうと、目がキラキラ輝いて、
つまらない単純な練習も、楽しい練習に様変わり。
どうやら「ひょっこり」というリズミカルな面白い単語を用いたのも
よかったようです。

ということで、この練習は発達障害のお子さんだけではなく、
すべての生徒さんに利用できる練習方法だと感じています。
大人の生徒さんには「ひょっこり」なぁんてかわいらしい声かけは必要ないかもしれませんが、
この練習のルールがわかりやすく伝わるかもしれませんネ。
今回もビデオを作りました。

・2音間のみによる親指柔軟性の練習方法
・スケールくだり「ミ」で止める練習方法
・スケールのぼり「ファ」で止める練習方法

以上の練習方法をご紹介しています。





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emksan at 15:21|PermalinkTrackBack(0)

2007年10月19日

マイナースケールを感じて/生きた楽典

私は短調のスケールを弾くのが好き。
長調にはない面白さというか、
響きがあるんです。

スケールって隣り合った音同士が並んでいますネ。
ハ長調ならドレミファソラシド。
これら隣り合った音同士の関係を”2度”といいます。
ドとレの関係は2度です。
レとミの関係も2度。
ミとファの関係も2度。

そして、そこにはいろんな2度があります。
黒鍵をまたいでの2度もあれば、
黒鍵が間にない2度もあります。
例えば、ドとレの間には黒鍵が1つあります。
しかし、ミとファの間には黒鍵がありません。
ドとレ、ミとファの音の幅は微妙に違う。
ミとファの方が狭いのです。

2do


このように基本的に2度には2種類の2度があります。
長2度短2度です。
間に必ずひとつ鍵盤がある・・・長2度。
間にひとつも鍵盤がない・・・短2度。
例えば、ミと#ファの間にはナチュラルのファ(白鍵のファ)があります。
だから、これは長2度です。
反対にドと♭レの間には、ひとつも鍵盤がありません。
だから、これは短2度です。

長音階は、これら2度が連なってできた音階です。
しかし、短音階にはこれ以外の2度があらわれるんです。

zou2do

ここに普通じゃない2度があります。
ファと#ソの間には、いくつ鍵盤があると思いますか?
黒鍵の#ファ、白鍵のソ、間に2つの鍵盤があるんです。
今までで一番幅の広い2度です。
普通じゃない。
私はこの普通じゃない音と音の開きに魅力を感じるんです。
すごくエキゾチックな感じ。

だから、和声的短音階を弾くときはいつも、
この増2度の幅を感じて弾きたいと思います。
幅を感じずに弾くのと、大きな開きを感じて弾くのとでは、
第6音の弾き方も、導音である第7音の弾き方も違ってくるからです。

この和声的短音階は、
和声進行のために必要な臨時記号が加えられているため、
和声的短音階と呼ばれます。

waseiteki

なんか変ですよね。
教会旋法のような響きに聞こえてしまいます。
このような響きを避けるために、
導音である第7音を半音上げたのが和声的短音階です。

waseiteki2

こうするとしっくりきますネ。
なら、そのまま調号に#をつけちゃえば?
なぁんて思ってしまうかもしれませんが、
半音上げる必要のないときだってあるのです。
例えば、次に説明する旋律的短音階。
何故下りは♯が付かないのか?
導音としての機能を必要としないからです。
導音は主音へ行く音。
でも、くだりのソは主音のラではなくファに行く音ですよね。
だから#は必要ないんです。

ということで、旋律的短音階です。

senrituteki


ここには普通じゃない2度はあらわれてきませんね。
その代わり折り返し地点に独特の変化があらわれます。
私はこの折り返し地点が大好きなんです。
##で主音まで上りつめた緊張感は、
主音直後に2つ続くナチュラルで解消されます。
私は特に、このナチュラルになった瞬間が好きです。
主音直後の”ソ”をすごく丁寧に弾きたくなります。

長調と短調の大きな違いは、
先日お話した第3音の変化のほか、
この第6音第7音に特徴があるような気がします。
だから、短調の第6音と第7音には、
すごい思い入れを持ってしまう。(笑)

楽曲の中で、
メロディに和声的短音階が出てきたりしたら、
もうたまんないんですよね〜。(笑)
この増2度がたまらんっ!と思って弾いちゃいます。
増音程(2度に限らず)の幅が私の心にもたらす影響。
それは張り詰めた緊張感なのか、
憤りなのか、憐憫なのか・・・。
何をそこに感じるかは人それぞれですが、
増音程のあるところには、
必ず何かがひそんでいるんです。


楽典の問題で、
ときどき第6音に絡んだ問題が出題されます。
これってすごく重要だな、と思います。
でも、大切なのは机上で問題を解くことではないはず。

試験に迫られない時間のある生徒さんに、
私がやってもらっていること。
それは和声的旋律的ともに、
第6音から折り返して再び第6音に戻ってくる、
この折り返し地点だけを弾く、ということです。

弾いて実際に感じること。
楽典では音程の問題をたくさん解かされます。
それは、音程というものがとても大切だから。
しかし、机の上で数字だけ書いていても、
演奏には何の役にも立ちません。
大切なのは音程そのものを感じることなのですから。

短調のスケールって、
難しいんじゃなくて面白いんですヨ♪


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