ピアノ/練習&勉強

2017年09月24日

フォルテピアノ第一人者小倉貴久子さんへのインタビュー(8)

ムジカノーヴァ2014年6、7月号に掲載された、小倉貴久子さんのインタビュー記事全文掲載も、今回で最後となります。最後は胸が熱くなる、小倉さんからピアノ指導者へのメッセージです。

私の手元にも届きました!
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目次にワクワク!「フォルテピアノを活用したピアノレッスン」の内容は、想像をはるかに超えて素晴らしいです。1行読むたびに、このような本が出版されたことを奇跡のように思い、感激しています。
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DVD付属という贅沢さ! 小倉さんご所有のフォルテピアノやチェンバロの動画です。フォルテピアノを聴いたことがなく、文字だけではピンとこないという方も、DVDがあることで理解が深まるだろうと思います♪
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【小倉貴久子さんへのインタビュー】
ムジカノーヴァ2014年7月号より インタビュアー中嶋恵美子

―― 最後に、読者のみなさんにアドバイスをお願いします。

 私はコンクールの審査をさせてもらうことも多いのですが、指がよく動いて、ミスのない演奏という点では、レベルはすごく上がっていると思います。ただ、伝えたいものがよくわからない、音楽が感じられない演奏に出会うこともよくあります。ピアノはテクニックを身につけるために、ものすごい練習が必要な楽器ですから、練習時間の確保は大変です。でも、耳が育っていないと、どんなに練習を積んでも、結局は頭打ちなんですね。あるところから上に行けなくなってしまう。だから、やっぱり狡阿“ということを並行して行うことが大切だと思います。先生方には、生徒さんたちに、さまざまな音楽、演奏を聴く機会をたくさん持つことがいかに大切かを伝えてほしいですね。聴くことに気づいて「こういう風に弾きたい」という気持ちが生まれると、知識欲もでてきますから、そうなったらしめたもの! あとは放っておいても大丈夫です。(笑)

 ピアニストは誰もがなれるわけではないですけど、音楽を楽しむことなら誰にでもできる。時々「小さいときにものすごく練習させられた苦しい思い出があるから、もうピアノなんて聴きたくない」という人がいますけれど、これは本当にもったいないことだと思います。ピアノの先生方ご自身がいろんな音楽を聴き、心から楽しんでいる姿を通して、音楽が身近にある豊かな人生のすばらしさを生徒さんに伝えていっていただきたいなと思います。







ヒンデミット:ヴァイオリン&ヴィオラ・ソナタ集 作品11
桐山建志
マイスター・ミュージック
2014-02-25



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2017年09月20日

フォルテピアノ第一人者小倉貴久子さんへのインタビュー(7)

第7弾は即興です。モーツァルトの即興とは、どういうものだったのでしょう? そして、私たちはどうやってその即興を身につけていけばよいのでしょう? 

今日が発売日のDVD付属のMOOK本。もうそろそろみなさんのお手元に届く頃でしょうか。私はAmazonで予約注文しているのですが、「今日届くといいな」とワクワクしながら朝を過ごしています♪



【小倉貴久子さんへのインタビュー】
ムジカノーヴァ2014年7月号より インタビュアー中嶋恵美子

―― 学生のみなさんに即興を指導されるとき、当時のいろんな作曲家の作品に触れてごらん、ということが一番のアドバイスなんでしょうか?

 あとは模倣です。モーツァルトも模倣が得意で、いろんな作曲家を模倣しながら多くのことを学んでいったんですね。モーツァルトのFdurのソナタ(K.332)の第2楽章では「繰り返したときはこうやって弾くんですよ」と、モーツァルト自身がわざわざ書いてくれていますし、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハは「変奏くり返しつきのクラヴィーアソナタ」(「C.P.E.バッハ クラヴィーア・ソナタ6曲」橋本英二編著/全音楽譜出版社)という曲集を出しています。これにはきっとびっくりすると思います。「全く違う!」というくらい即興されていますから。でも、レオポルト・モーツァルトは、もとの曲がわからなくなるような即興はよくない、あの人の即興は品がいい、あの人のはグロテスク、などと手紙に書いていますから、即興に対する考え方も人それぞれだったということですね。
 グロテスクと評価されたものが悪いかというと、そうとも言い切れないですけど、少なくともモーツァルトはレオポルトに育てられたわけですから、モーツァルトの作品でそれをやってしまうのはよくないと思います。それでも、18世紀にはここまで即興された例があるんだと学ぶことは大切ですよね。


―― 小倉さんは古典派にとどまらず、フォルテピアノでロマン派の作品を弾かれたり、最近では1913年製のベヒシュタインでヒンデミットまで演奏されていますね。

 1913年製のベヒシュタインは、渡邊順生さんが企画・構成された「ピアノの歴史」というシリーズで弾かせていただいたのが出会いです。渡邊さんはこの年代のピアノがフォルテピアノの最後で、それ以降のピアノは現代の価値で作られている、というお考えなんですね。私自身は現代のピアノに近いのではと思っていたんですけど、実際に弾いてみたら全然違った。鍵盤の重みはあるのに反応がすごく良くて、減衰が速い。ラフマニノフを弾くなら現代のピアノでしょう、と思っていたのに、このベヒシュタインで弾いてみたら、この楽器だからこそ伝えられることがこんなにあるんだと、価値観が変わりました。

―― 小倉さんの時代を選ばない幅広いフォルテピアノの活動は、日本にとってとてもありがたい、意義あるものだと思います。音の減衰による繊細さというのは録音では伝わらない部分があるので、読者のみなさんにはぜひ、生で聴いてもらいたいですね。

 どんなにいいマイクで録音しても、生とはやはり違いますから、ぜひ!


ヒンデミット:ヴァイオリン&ヴィオラ・ソナタ集 作品11
桐山建志
マイスター・ミュージック
2014-02-25



小倉貴久子の《モーツァルトのクラヴィーアのある部屋》
第30回 ヨハン・クリスティアン・バッハ
2017年11月3日(金・祝日)
午後1時半開演(開場1時) 第一生命ホール

小倉 貴久子(クラヴィーア) 桐山建志、天野 寿彦、廣海史帆、原田 陽、山内彩香(ヴァイオリン) 成田 寛、丸山 韶(ヴィオラ)・山本 徹(チェロ)・小室昌広(コントラバス) 前田りり子(フルート)・三宮正満・荒井 豪(オーボエ) 岡本正之、安本久男(ファゴット)・塚田 聡・大森啓史(ホルン)
☆ピリオド楽器使用室内オーケストラ☆

J.Ch.バッハ
コンチェルト ニ長調 作品13-2

W.A.モーツァルト
ロンドンのスケッチブックより小品 ハ長調 K.15s
コンチェルト ニ長調 K.107-1(原曲 J.Ch.バッハ:ソナタ ニ長調 作品5-2)
コンチェルト 第15番 変ロ長調 K.450
コンチェルト 第27番 変ロ長調 K.595

《お申込み》 
イープラス
トリトンアーツ・チケットデスク Tel.03-3532-5702(平日11:00〜18:00)
メヌエット・デア・フリューゲル(主催)Tel.048-688-4921 klavier@kikuko-mdf.com

そのほか小倉貴久子さんの演奏会情報はこちら

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2017年09月17日

フォルテピアノ第一人者小倉貴久子さんへのインタビュー(6)

第6弾は、時代の空気を感じとるには? 「当時の語法がわかるようになって、私たち演奏家は自由になれる」が私の胸に強く響いてきます。今回は、小倉さんのお一人の語りです。

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【小倉貴久子さんへのインタビュー】
ムジカノーヴァ2014年7月号より インタビュアー中嶋恵美子

 この8月で13回目となる「小倉貴久子の『モーツァルトのクラヴィーアのある部屋』」というシリーズでは、各回モーツァルトに関連のある作曲家を取り上げて演奏しているのですが、ここで取り上げる作曲家だけに目を向けると、現代の私たちに訴えかけてくるものは、モーツァルトほどは多くないと思うんですよ。でも、彼らがどんな風にモーツァルトに影響を与えたのか、という視点で彼らの作品を見ていくと、非常に興味深くて、すごく面白いと思います。モーツァルトはたくさんの作曲家から影響を受けていて、例えばヨハン・セバスチャン・バッハとは会ってはいないですけど、音楽愛好家であったオーストリアの外交官、ヴァン・スヴィーテン男爵の蔵書から彼の音楽について学んでいます。モーツァルトは本当に多くのことを貪欲に吸収しているんですね。
 
 私は藝大の大学院に行き、留学もして、様々なことを学んできましたけれど、古典派といえばモーツァルト、ハイドン、ベートーヴェンみたいな感じでしたから、ごく一部の作曲家の音楽だけで当時の空気を感じ取ろうなんて、できるわけがなかったんです。今ここにいる私と中嶋さん、編集部の人、たった3人を研究するだけでは現代の空気がわからないのと同じです。
 しかも、モーツァルトもベートーヴェンも、時代から外れた作品を書こうとした天才です。でも、彼らのいったい何が革新的だったのかは、当時の空気を知らないとわからないわけですよね。最初は「この作曲家が当時はモーツァルトより人気があったってどういうこと?」って理解しがたくても、その時代の人の気持ちになって聴いていくうちに、何かが見えてくる・・・。
 モーツァルトの時代には、例えば、ラーメンといえばスープに麺が入っている食べ物とイメージが湧くように、ソナタというのはこういうものだとイメージが湧く、つまりスタイルがわかることが重要だったんですね。ところがモーツァルトは晩年になると、そういったスタイルから外れた曲を書き始めた。そして、人気がなくなっていくわけです。
 
 私たちが名曲と言っている作品の中には、当時の人に評価されなかったものもありますよね。評価されなかった曲は時代感からはみ出していた作品で、流行っていた曲は時代感にマッチしていた作品。後者の曲を書いた、つまり、当時すごく人気のあった作曲家というのはどんな曲を書いていたのか。彼らの気持ちになってみると、「こういうことなのかな」「感じだったのかな」と、作品を書いた目的や時代の空気感みたいなものが見えてくるんです。そんな経験を重ねているうちに、当時の語法がわかるようになって、私たち演奏家は自由になれるんですよね。21世紀感では自由になれないんです。



小倉貴久子の《モーツァルトのクラヴィーアのある部屋》
第29回 J.B.アウエルンハンマー
2017年9月28日(木)
午後7時開演(開場6:30) 近江楽堂
二台のクラヴィーアのための作品と連弾曲
小倉貴久子 山名敏之
〜使用楽器〜
Klavier made by Chris Maene after Anton Walter [1795]
Klavier made by Itaru Ohtagaki after J.L.Dulcken [1795]

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2017年09月15日

フォルテピアノ第一人者小倉貴久子さんへのインタビュー(5)

第5弾となる今回は、モーツァルトを育てた父レオポルトの教育方針についてです。私はこの伸びやかな小倉さんの語り口が大好き! (4)の文末にリンクでご紹介した小倉さんのシリーズ・コンサートでは、フォルテピアノの演奏とともに、この楽しい語り口も味わうことができます♪ 


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【小倉貴久子さんへのインタビュー】
ムジカノーヴァ2014年7月号より インタビュアー中嶋恵美子

―― 小倉さんは古典派の曲でリピートするとき、当時のスタイルで即興を加えていらっしゃいます。バロック時代の舞曲形式から、リピートするときに即興するというスタイルがあったわけですが、それがなくなるのはベートーヴェンくらいですか?

 ベートーヴェンは、繰り返しのときに即興されるのを嫌がったんですね。若いころの作品にはリピートが書かれていますけれど、だんだん書かなくなります。好き勝手に即興されたくない、という気持ちがあったんじゃないかと。ただ、音を加えられるのは嫌でも、繰り返しを同じように演奏することはなかったと思います。当時の聴衆は、繰り返した後どう変化するのか、という点に大きな関心を持っていましたから、ダイナミックレンジを変えたりといったことは必要ですね。

―― CD『輪舞』の小倉さんの即興は、モーツァルトのスタイルを保持しつつも、左手のリズムが変わっていたり、音が加えられていたりと変幻自在。当時の即興の在り方や、どういう時代だったのかという点について、お話いただけますか?

 モーツァルトの場合、何かやってやろうと奇抜なことをすると音楽が嫌らしくなってしまうんです。そういう演奏は絶対に避けたい。天真爛漫で自然な感じがいいですね。音楽は自然でなければいけないというのは、お父さんのレオポルト・モーツァルトがいつもヴォルフガングに言っていたことです。でも、音楽の自然さと当時のスタイル、このふたつの一体感を保つのはすごく難しいです。
 モーツァルトは天才ですけれど、ものすごく努力家でもあった。その彼にとって、この人以上の先生は考えられないという最良の師がお父さんです。レオポルトは、系統的な音楽教育を受けたわけではないようですけれど、独学でヴァイオリン教本まで書いたすごい勉強家。しかも、音楽以外の分野にも非常に興味を持っていた博識な人でしたから、レオポルトはヴォルフガングのすばらしい才能を知って、自分の人生はこの子に賭ける、ザルツブルクに留まっていてはダメだ、と旅行を決行したわけです。ペストやコレラの流行、馬車での悪路の移動など、死と隣り合わせの危険な長旅に子どもを連れて行くなんて、生半可な気持ちではできないことですよね。

 でも、レオポルトが重きを置いた教育方針のひとつが、違う文化に触れさせることだった。イタリアの陽射しはザルツブルクとは違うし、建物や絵画も、そこで活躍している音楽家たちの作品も違う。今みたいにインターネットがあるわけではないですから、情報をキャッチするには現地に行くしかなかったわけです。各地でいろんな作曲家が、ヴォルフガングはすばらしい才能の持ち主ではあったけれど、子どもだったこともあって、きっと全部手の内を見せてくれたんだと思います。音楽のために吸収しなくてはいけないものがある場所、それこそヨーロッパ中の行くべきところは全部行ったんじゃないかと。人格形成に大きな影響を与える幼少期の経験。その豊かさが、モーツァルトの才能を大きく開花させたわけです。







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2017年09月13日

フォルテピアノ第一人者小倉貴久子さんへのインタビュー(4)

第3弾に引き続く内容の第4弾。小倉さんは、モダンピアノに向かうときフォルテピアノのどういった点を生かしていらっしゃるのでしょう? もっと詳しく知りたいと思われた方は、9月20日に発売される「フォルテピアノから知る古典派ピアノ曲の奏法」がお勧めです。もちろん私も予約済み! いつか小倉さんにレッスンを受けるべく、インタビュー記事を読み直しながらピアノの練習に励んでいます♪




【小倉貴久子さんへのインタビュー】
ムジカノーヴァ2014年6月号より インタビュアー中嶋恵美子


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―― 小倉さんは、モダンピアノに向かわれるとき、フォルテピアノのどういった点を生かしているのですか?

 例えば、モーツァルトをモダンで演奏するときには、フォルテピアノの音の減衰の速さを再現するために、フォルテピアノよりも音の切り上げをずっと早くしていますね。とは言っても、今日はモダンだからそうしようとねらってやっているわけではなく、自然とそうなる。結局、耳ですよね。フォルテピアノで演奏しようと、モダンピアノで演奏しようと、常にそこにあるのは作品の本質を伝えたいという思いだけです。
 私はモダンピアノでラヴェルやドビュッシーを弾くときよりも、モーツァルトを弾くときのほうが、指の強さの必要性を感じています。モダンは、ある程度の重さをかけないと芯のある音が出ないので、その点は気を付けて弾いています。


―― モダンピアノは音の立ち上がりと減衰が違うわけですが、テンポ設定は変わってきますか?

 テンポは、子音がはっきり聴こえるか、アーティキュレーションがちゃんと表現できるか、このあたりで決まってくるので、響きのよい空間だと遅くなって、響きがドライなところでは速くなる。反応の悪いピアノだと遅くなるし、軽いピアノだと速くなります。

―― 20世紀に活躍したピアニストのCDを聴くと、ピアノそのものが違うって感じがしますね。フォルテピアノにしても減衰の速さが美しい。だから、特にバロックやモーツァルトの作品では、音が重なったときの繊細な美しさが違うんですよね。モダンだといつまでもポーンと音が鳴ってしまうので・・・。

 繊細な美しさを存分に味わえないことがありますよね。ピアノの音が減衰していく美しさ、ピアニッシモの中で可能となるたくさんの表現、そういった面に目が向かないのはとても残念です。奏者のすぐ近くで聴けるサロンコンサートも、モダンピアノでは音の洪水にやられてしまって、サロンならではの魅力を味わえないことがありますし。

―― 古楽器だから味わえる贅沢な楽しみ。それを味わえる場所がサロン。ぜひ、読者の方々にもサロンで聴いていただきたいですね。


小倉貴久子の《モーツァルトのクラヴィーアのある部屋》
第29回 J.B.アウエルンハンマー


二台のクラヴィーアのための作品と連弾曲
小倉貴久子 山名敏之
〜使用楽器〜
Klavier made by Chris Maene after Anton Walter [1795]
Klavier made by Itaru Ohtagaki after J.L.Dulcken [1795]

2017年9月28日(木)
午後7時開演(開場6:30) 近江楽堂
全席自由4000円 学生2000円

《チケット取り扱い》
イープラス  
メヌエット・デア・フリューゲル 048-688-4921
東京オペラシティチケットセンター 03-5353-9999

小倉貴久子さんの演奏会情報はこちら


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2017年09月11日

フォルテピアノ第一人者小倉貴久子さんへのインタビュー(3)

ムジカノーヴァ編集部に相談させていただき、抜粋ではなく全文掲載することにしました♪ 今回は第3弾! 第3弾と第4弾は、ピアノを弾く者なら誰もが興味を持つ内容だろうと思います。フォルテピアノの奏法や表現はモダンピアノと何が違うのでしょう? そして、それをモダンピアノに生かすにはどうしたらよいのでしょう? 9月20日に発売される「フォルテピアノから知る古典派ピアノ曲の奏法」のイントロダクションになるような内容ですね。9月20日が待ち遠しい!

フォルテピアノから知る古典派ピアノ曲の奏法 (ONTOMO MOOK)
音楽之友社
2017-09-20







【小倉貴久子さんへのインタビュー】
ムジカノーヴァ2014年6月号より インタビュアー中嶋恵美子

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―― 『輪舞』のCD(記事最下部参照)を聴いて強く感じたことがあります。「これこそがモーツァルトのアーティキュレーションだ!」って。重力がフッと抜ける瞬間があって、それがモダンの抜けとは違うんです。管楽器専門誌『パイパーズ』388号のインタビュー記事の中で、小倉さんは「フォルテピアノは自然にアーティキュレーションがかけやすい」とおっしゃっていましたが、奏法や表現というのは、フォルテピアノのどういった特性から生まれるものなんでしょうか?

 まず、鍵盤が軽いというのは大きいですね。ちょっとした指先の動きで音が出てしまう。モダンピアノでも、例えば、タカギクラヴィアの社長、高木裕さんがホロヴィッツの専属調律師だった方にお聞きして、ホロヴィッツが使っていたのと同じ仕様に調整したスタインウェイをお持ちなのですが、そのピアノはとにかく軽い。でも、軽いということは危険も伴います。ミスをしやすくなるんですね。
 高木さんは、そのピアノのことをF1仕様だとおっしゃっていましたが、F1の車は、ほんのちょっとハンドルを動かすだけで操作できるけれど、乗用車がその仕様では事故が続発して危険すぎる。乗用車はハンドルに遊びの部分がたくさんあることで安全性を高めていますからね。フォルテピアノもF1カーと同じ。事故、つまりミスタッチしやすい反面、ちょっとした動きでいろんなことができるんです。


 そのひとつが、自然なアーティキュレーションですね。アーティキュレーションの切れ目で、音を切り上げた(手首をフワッと上げて鍵盤から指を離す動作をした)とき、モダンピアノだとアーティキュレーションによってフレーズが分断されやすい。音を切り上げるためには、フォルテピアノより大きな動作が必要となりますからね。そうなると、古典派の作品や、ロマン派でもショパンは古典的な人でしたし、シューマンの音楽も言葉と密接な関係がありますから、そういった作品の演奏ではフレーズは分断したくないけれど、アーティキュレーションをつけないと何を言っているのかわからなくなってしまう。その点、作曲家たちが生きていた時代の楽器だと、アーティキュレーションによってフレージングが分断される危険性はぐっと減るわけです。
 でも、モダンピアノをずっと勉強してきた学生は、フォルテピアノのレッスンで私からよく言われていますね。切るという動作を手首でやってしまうと、フレーズはそこで分かれてしまいますよ、と。


―― ひとつのフレーズに、手首の動きはひとつ。

そうです。フォルテピアノでは、指の第1関節のちょっとした動きだけでアーティキュレーションが表現できる。でも、モダンをずっと弾いてきた人は、フォルテピアノならではの音の反応、奏法に慣れるのにどうしても時間がかかりがちですね。

パイパーズ388号 パイパーズオンラインショップに1冊在庫があるようです。パイパーズのバックナンバー情報はこちら。バックナンバーの在庫がない場合は、希望の記事をコピーし、1ページ108円で販売してくれます。





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