2022年11月15日

ピアノレッスンに大切なあれこれへの先見の明


自分で言うのもなんだけど、ピアノレッスンに於いて、どうやら私には先見の明があったらしい。

始まりはバロックダンス。生徒に教えるメヌエットがどういう踊りなのかわからなくて、それを調べたのがきっかけでした。30年以上も前のこと。当時はバロックダンスという言葉を知らなくて"民族舞踏"などのキーワードで検索したのだけれど、全然ヒットしなくてわからずじまい。あるとき雑誌の広告欄に浜中康子さんのビデオを見つけ、そこで初めてバロックダンスなる名称を知ったのでした。このビデオ、今はDVDになって販売されています。

以来、浜中康子さんのバロックダンス講演や、フランス大使館のバロックダンスコンサートなど、"バロックダンス"でネットをチェックし、魅力的な企画を見つけるようになりました。見つけられる数は少なかったし、踊りを習うまではいかなかったけれど、レッスンや自分の演奏に生きてくるあれこれを楽しみながら吸収。今ではピアノ指導者でバロックダンスを知らない人はいないですよね。ピアノ指導者向けのバロックダンス講座もあちらこちらで見かけますし、浜中康子さん以外のバロックダンサーの活躍も目に留まります。

バロックダンスがきっかけでピリオド楽器の魅力にハマりました。子どもの頃からピアノが苦しみでしかなく、指導者になってからも練習し学ばなければという義務感だけで動いていた私に、趣味としての音楽が芽生えたのです。これは本当に嬉しかった!純粋に音楽を味わい楽しめるようになったのだから。

次にフォルテピアノ。私は音大出身とはいえ幼児教育専攻で音楽史に疎く、ピアノを教え始めてから「これじゃやばいぞ」と焦って勉強を始めました。けれど音楽史だけでは頭が整理できない。イメージが湧かない。そこで音楽史をピアノ史と世界史に結びつけた年表を、ホームページ上に作成することにしたのでした。(今はサーバーを変えたためホームページはやっていません。)

この頃「フォルテピアノ」というピリオド楽器を知り、こりゃピアノを教えている身で知らないなんてまずいぞ!とまたまた焦ってネット検索。ピエール゠ロラン・エマール というフォルテピアノ奏者のコンサートを見つけ、その魅力に気づかされたのでした。とはいえ、当時はネット検索してもコンサートやフォルテピアノに関する講座などほとんど見つからず、本やらCDやらでなんとなくその世界を垣間見ることができた程度。そんなとき小倉貴久子さんのショパンコンサートが目に留まったのでした。ピアノ協奏曲を室内楽で。コンサート前日にはレクチャーまであり、これがとても面白かった!

今ではフォルテピアノというピリオド楽器の存在を知らないピアノ指導者などいませんよね。生で聴いたことがないという人は多いだろうけれど、この単語は広く知られるようになりました。フォルテピアノを知ることで見えてくるあんなこと、こんなこと。そういうピアノ指導者向けの講座も多くなったし、コンサートも増えました。最近では、川口成彦さんがピリオド楽器によるショパンコンクールで第2位になったことで、モーツァルトやベートーヴェン時代のフォルテピアノだけでなく、ロマン派時代のフォルテピアノにも目が向けられるようになってきました。

もうフォルテピアノを知らないでは済まされない、そんな時代に突入した感があります。ショパンコンクールで有名なショパン研究所も、川口さんが2位に輝いたショパン国際ピリオド楽器コンクールに主眼をおきはじめているようだし、なにより作曲家がどんな楽器で作曲をしたのか、それらの楽曲は当時の楽器でどのように響いたのか、どのような演奏スタイルを念頭に置いて作曲されたのかなどを知ることは、楽譜を読み込む上でとっても大切。

最近はクラヴィコード!バッハが最も愛した鍵盤楽器で、モーツァルトはこの楽器を馬車に積んで作曲しました。チェンバロはすでに広まっているけれど、この楽器を貸し出しているスタジオを私はまだ知りません。コンサートも少ない。最近ようやく聴く機会が増えてきたかな。それでも数えるほど。もともと音量が小さく、コンサート向けの楽器ではないのでなおさら。

30年前、ピアノの歴史を本で読んだとき、最も惹かれたのがクラヴィコードでした。でも、その頃は聴くことすらできなかった!ある講演会で音源を聴く機会が持てただけ。CDを検索するのも下手で出会えずじまい。想像は膨らみ、この楽器への憧憬は高まるばかり。30年後の今、クラヴィコードのある毎日を過ごすようになってもなお、この楽器の奥深さをもっと知りたい、この楽器の魅力を引き出せるようになりたいと思います。

クラヴィコードは弾くのがとても難しい楽器で、これは文字情報だけではわからなかったこと。指先への意識、脱力への意識。クラヴィコードのお陰で、モダンピアノにおける弱音表現が豊かになってきました。この楽器は弦楽器のように、もしくは声楽のように発音した後に音を操作することができます。ちょっと音程を高めにする、音質に圧をかける、ビブラートをかける、などなど。これらの意識は、発音後に操作できないモダンピアノにも生きてくるんですよね。

今後バロックダンス、フォルテピアノに続き、クラヴィコードの存在を知らないピアノ指導者はいないという時代がやってくるに違いありません。ピアノ指導者向け講座も増えるだろうけれど、小さなサロンでのコンサートも増えたらいいな!



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emksan at 11:56│ ピアノ/クラヴィコード、フォルテピアノ | ピアノ/ピアノの歴史