2019年09月29日

我が家にクラヴィコードがやってきました!

自分のブログを「クラヴィコード」で検索してみると、最初に出てくるのがこの記事。

 http://musestown.livedoor.biz/archives/50633623.html 

2006年の記事です。実際にはこれより前からクラヴィコードには興味があって、なんとか聴く機会はないものか、見る機会はないものか、CDはないものかと、アンテナを張りまくっていました。今でこそクラヴィコードを聴く機会が増えましたが、当時はどんなにアンテナを張っていても聴くことができなかったんですよねぇ。フォルテピアノですらそうでした。聴けるのはチェンバロばかり。小倉さんのご活躍のおかげで、少しずつフォルテピアノの演奏会が増えてきて、で、ようやくクラヴィコードがお披露目されるようになってきた、といったところでしょうか。

バッハや様々な作曲家がこれだけ惚れ込む楽器なのだから、さぞかし素晴らしい楽器なのだろうと、当時から私はチェンバロよりクラヴィコードに惹かれていたのですが、音は聴いたことがないまま、文字情報だけの状態でした。

 「バッハがいちばん好んで弾いたのはクラヴィコードであった。 ハープシコード(チェンバロ)は多用な表現能力を備えてはいるが、 彼にとって感情表現が十分でなかった。 またピアノフォルテは、彼の生存中まだ幼児期にあった楽器だったために、 彼を満足させるには荒削りすぎた。 それゆえ彼はクラヴィコードを練習用、 および一般に個人的な音楽の楽しみのための最上の楽器、と考えたのである。 彼の洗練された考えの表現には、この楽器がもっとも好都合であった。 実際クラヴィコードは音の点では貧弱だったが、 きわめて柔軟性に富んでいるので、 ハープシコードやピアノフォルテからはこの楽器ほどの こまやかな表現が得られるとは信じがたかったのである。」(フォルケル)

「よいクラヴィコードは、音が弱いということを除いては、 音の美しさではピアノフォルテに劣らないし、 ベーブンクやポルタートをつけることができる点で、 ピアノフォルテよりも優れている」(P.E.バッハ)

それが今、自宅にクラヴィコードがあるのだから、ほんっとうにびっくりしちゃう。ジルバーマン(1683-1753)というドイツのバロック・オルガン製作者による設計図が残っていて、それをもとに太田垣さんに作っていただきました。

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まだ家にきて1週間程度だけれど、ベーブンクだけではないこの楽器の表現力を感じ始めています。ピアノはハンマーが弦を打ったら、それ以上弦に何らかの作用を与えることはできないけれど、クラヴィコードはタンジェントが弦に触れている間音が鳴り続けるので、鍵盤を押さえている間中、弦と指が密接な関係にあり、弦になんらかの働きかけをすることができるんですね。それはベーブンクほどの揺らぎではないにしても、一度弾いたら「ポーン」とまっすぐ音が鳴るしかないピアノにはない、まるで声のように語りかける揺らぎを生み出すことができるんです。

 なんて魅力だろう!・・・・と思いつつ、そこまで感じ取れたものの、それを生かすだけの技量がまだまだ私には足りないので、課題は山積み。でもね、課題があるって練習が楽しいんですよ。何が課題なのか、自分に足りないのは何なのかがわからない練習は苦痛の極みですが、自分に足りないものがわかっている練習はそりゃぁ楽しくて楽しくてたまらないものなのデス♬

 クラヴィコードの音色が聴いてみたい!と本を読んで切望していた頃、まさか自分がクラヴィコードを持って、第一線で活躍する第一人者からレッスンが受けられることになるだなんて想像だにしていませんでした。人生何が起こるかわからないものですね。地道に一歩一歩がいいんだな。きっと。こればかりは、その一歩一歩を歩んでこられた自分に感謝です。(*‘∀‘)



emksan at 15:40│