2017年09月17日

フォルテピアノ第一人者小倉貴久子さんへのインタビュー(6)

第6弾は、時代の空気を感じとるには? 「当時の語法がわかるようになって、私たち演奏家は自由になれる」が私の胸に強く響いてきます。今回は、小倉さんのお一人の語りです。

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【小倉貴久子さんへのインタビュー】
ムジカノーヴァ2014年7月号より インタビュアー中嶋恵美子

 この8月で13回目となる「小倉貴久子の『モーツァルトのクラヴィーアのある部屋』」というシリーズでは、各回モーツァルトに関連のある作曲家を取り上げて演奏しているのですが、ここで取り上げる作曲家だけに目を向けると、現代の私たちに訴えかけてくるものは、モーツァルトほどは多くないと思うんですよ。でも、彼らがどんな風にモーツァルトに影響を与えたのか、という視点で彼らの作品を見ていくと、非常に興味深くて、すごく面白いと思います。モーツァルトはたくさんの作曲家から影響を受けていて、例えばヨハン・セバスチャン・バッハとは会ってはいないですけど、音楽愛好家であったオーストリアの外交官、ヴァン・スヴィーテン男爵の蔵書から彼の音楽について学んでいます。モーツァルトは本当に多くのことを貪欲に吸収しているんですね。
 
 私は藝大の大学院に行き、留学もして、様々なことを学んできましたけれど、古典派といえばモーツァルト、ハイドン、ベートーヴェンみたいな感じでしたから、ごく一部の作曲家の音楽だけで当時の空気を感じ取ろうなんて、できるわけがなかったんです。今ここにいる私と中嶋さん、編集部の人、たった3人を研究するだけでは現代の空気がわからないのと同じです。
 しかも、モーツァルトもベートーヴェンも、時代から外れた作品を書こうとした天才です。でも、彼らのいったい何が革新的だったのかは、当時の空気を知らないとわからないわけですよね。最初は「この作曲家が当時はモーツァルトより人気があったってどういうこと?」って理解しがたくても、その時代の人の気持ちになって聴いていくうちに、何かが見えてくる・・・。
 モーツァルトの時代には、例えば、ラーメンといえばスープに麺が入っている食べ物とイメージが湧くように、ソナタというのはこういうものだとイメージが湧く、つまりスタイルがわかることが重要だったんですね。ところがモーツァルトは晩年になると、そういったスタイルから外れた曲を書き始めた。そして、人気がなくなっていくわけです。
 
 私たちが名曲と言っている作品の中には、当時の人に評価されなかったものもありますよね。評価されなかった曲は時代感からはみ出していた作品で、流行っていた曲は時代感にマッチしていた作品。後者の曲を書いた、つまり、当時すごく人気のあった作曲家というのはどんな曲を書いていたのか。彼らの気持ちになってみると、「こういうことなのかな」「感じだったのかな」と、作品を書いた目的や時代の空気感みたいなものが見えてくるんです。そんな経験を重ねているうちに、当時の語法がわかるようになって、私たち演奏家は自由になれるんですよね。21世紀感では自由になれないんです。



小倉貴久子の《モーツァルトのクラヴィーアのある部屋》
第29回 J.B.アウエルンハンマー
2017年9月28日(木)
午後7時開演(開場6:30) 近江楽堂
二台のクラヴィーアのための作品と連弾曲
小倉貴久子 山名敏之
〜使用楽器〜
Klavier made by Chris Maene after Anton Walter [1795]
Klavier made by Itaru Ohtagaki after J.L.Dulcken [1795]

そのほか小倉貴久子さんの演奏会情報はこちら




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emksan at 08:46│ 小倉貴久子さんへのインタビュー | ピアノ/練習&勉強