2017年09月11日

フォルテピアノ第一人者小倉貴久子さんへのインタビュー(3)

ムジカノーヴァ編集部に相談させていただき、抜粋ではなく全文掲載することにしました♪ 今回は第3弾! 第3弾と第4弾は、ピアノを弾く者なら誰もが興味を持つ内容だろうと思います。フォルテピアノの奏法や表現はモダンピアノと何が違うのでしょう? そして、それをモダンピアノに生かすにはどうしたらよいのでしょう? 9月20日に発売される「フォルテピアノから知る古典派ピアノ曲の奏法」のイントロダクションになるような内容ですね。9月20日が待ち遠しい!

フォルテピアノから知る古典派ピアノ曲の奏法 (ONTOMO MOOK)
音楽之友社
2017-09-20







【小倉貴久子さんへのインタビュー】
ムジカノーヴァ2014年6月号より インタビュアー中嶋恵美子

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―― 『輪舞』のCD(記事最下部参照)を聴いて強く感じたことがあります。「これこそがモーツァルトのアーティキュレーションだ!」って。重力がフッと抜ける瞬間があって、それがモダンの抜けとは違うんです。管楽器専門誌『パイパーズ』388号のインタビュー記事の中で、小倉さんは「フォルテピアノは自然にアーティキュレーションがかけやすい」とおっしゃっていましたが、奏法や表現というのは、フォルテピアノのどういった特性から生まれるものなんでしょうか?

 まず、鍵盤が軽いというのは大きいですね。ちょっとした指先の動きで音が出てしまう。モダンピアノでも、例えば、タカギクラヴィアの社長、高木裕さんがホロヴィッツの専属調律師だった方にお聞きして、ホロヴィッツが使っていたのと同じ仕様に調整したスタインウェイをお持ちなのですが、そのピアノはとにかく軽い。でも、軽いということは危険も伴います。ミスをしやすくなるんですね。
 高木さんは、そのピアノのことをF1仕様だとおっしゃっていましたが、F1の車は、ほんのちょっとハンドルを動かすだけで操作できるけれど、乗用車がその仕様では事故が続発して危険すぎる。乗用車はハンドルに遊びの部分がたくさんあることで安全性を高めていますからね。フォルテピアノもF1カーと同じ。事故、つまりミスタッチしやすい反面、ちょっとした動きでいろんなことができるんです。


 そのひとつが、自然なアーティキュレーションですね。アーティキュレーションの切れ目で、音を切り上げた(手首をフワッと上げて鍵盤から指を離す動作をした)とき、モダンピアノだとアーティキュレーションによってフレーズが分断されやすい。音を切り上げるためには、フォルテピアノより大きな動作が必要となりますからね。そうなると、古典派の作品や、ロマン派でもショパンは古典的な人でしたし、シューマンの音楽も言葉と密接な関係がありますから、そういった作品の演奏ではフレーズは分断したくないけれど、アーティキュレーションをつけないと何を言っているのかわからなくなってしまう。その点、作曲家たちが生きていた時代の楽器だと、アーティキュレーションによってフレージングが分断される危険性はぐっと減るわけです。
 でも、モダンピアノをずっと勉強してきた学生は、フォルテピアノのレッスンで私からよく言われていますね。切るという動作を手首でやってしまうと、フレーズはそこで分かれてしまいますよ、と。


―― ひとつのフレーズに、手首の動きはひとつ。

そうです。フォルテピアノでは、指の第1関節のちょっとした動きだけでアーティキュレーションが表現できる。でも、モダンをずっと弾いてきた人は、フォルテピアノならではの音の反応、奏法に慣れるのにどうしても時間がかかりがちですね。

パイパーズ388号 パイパーズオンラインショップに1冊在庫があるようです。パイパーズのバックナンバー情報はこちら。バックナンバーの在庫がない場合は、希望の記事をコピーし、1ページ108円で販売してくれます。





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emksan at 13:37│ 音楽/本・CD | ピアノ/練習&勉強