2015年08月03日

自閉症りつくんの成長の記録

このブログ右サイドバーに、自閉症りつくんのレッスン風景をご紹介していますが、ここでご紹介させていただくのは、発表会の映像による成長の記録です。この記録がみなさんのレッスンに役立つものであることを願いながら、記事にさせていただきました。
※現在各地に赴いてのセミナーはしていません。「ネットでセミナーとして無料動画配信しています。このブログ右サイドバーにリンクしています。
※親御さんからネット公開のご了承を得ています。


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『あきらめないで!ピアノ・レッスン〜発達障害児に学ぶ効果的レッスンアプローチ〜』(ヤマハミュージックメディア)に書いた、自閉症スペクトラムの様々な特徴を持っている子です。教え始めた当初は、時計が読めなかったので、時間へのこだわりは全くみられなかったのですが、時計の読み方がわかるようになってからは、時間へのこだわりを強く見せるようになりました。ちょっとでも予定が狂うとパニックになります。そのため、予定の変更が難しい子でした。

最初にご紹介する動画は、習い始めてまだ数カ月、小学2年生のりつくんです。初めての発表会だったので、まずは人前で弾くということを目標にしたステージでした。司会でお母さんが「先生と上手に合わせてね。」と言っていますが、これは、この子がどんどん速く弾きたがるクセがあったためです。これは、自閉症スペクトラムの私の生徒さんほとんどに見られた現象で、まるで追い立てられているかのように速く弾きたがります。 

そのため、私は拍子打ちをしながら歌詞で歌うというアプローチをしていました。「速く弾かないで。落ち着いてゆっくり弾こう。」と伝えたところで、「速く」だとか「落ち着いて」だとかいう言葉は漠然とし過ぎていて、なかなか理解してもらえません。そこで、拍子打ちをしながら歌詞で歌ってもらい、それに慣れた頃、「先生、これからりつくんの真似をするからね。聴いてみてね。」と前置きをし、どんどん拍子打ちを速くしていきながら歌ってみせます。これをするとみんな笑ってくれて、「ね、変でしょう?」というと納得してくれます。それ以降は、「お歌と同じ速さでね」と伝えることで、速く弾きたいという気持ちを押さえて弾くよう、努力してくれるようになります。

もちろん速く弾きたいという、焦燥感にかられたような衝動を抑えるのは、なかなか難しいようで、わかっていても速くまくしたてるように弾いてしまいがちなのですが、大抵の子はレッスン中まくしたてて弾いていても、本番はものすごく集中して、1音1音ゆっくりと、とても丁寧に弾いてくれます。

りつくん小学2年生


次のVTRは、翌年2006年の映像です。おじぎがきっちりできているのがわかりますが、レッスン中は、おじぎの練習をするたびに寝転んで、ふざけていました。でも、不思議と本番になるときっちりやってくれるんですよね。レッスン中おじぎでふざけて寝転ぶ子は多いのですが、どの子も本番ではふざけずにきっちりやってくれます。こういう子で本番も寝転んだという子は、今のところ私のお教室には1人もいません。大切なことは、レッスン中「こうやるんだよ」という正しい方法を見せておく、伝えておくということなのではないでしょうか。また、本番はトップバッターにしないことで他の子の様子を見てもらえ、「こうやるものなんだ」ということを理解してもらうことができるので、発表会に慣れていないうちは、トップバッターにしないことをお薦めします。トップバッターにする場合は、他の子のリハーサルを見てもらう、事前に発表会のDVDを見て予習しておいてもらうのがよいのではと思いますよ。

りつくん小学3年生

続いての映像は小学5年生の頃のものです。『あきらめないで!ピアノ・レッスン』(ヤマハミュージックメディア)に書いたスタカートが難しかった子の話は、りつくんのことです。他の子もスタカートには苦労するものなのですが、この子は一番苦労し、一生懸命取り組んでくれた子でした。音を切るということが理解できても、体が思うように動かせません。一度鍵盤を押さえた指は強力に貼りついてしまい、なかなか鍵盤から離れないのです。「ジャンプだよ!」と大げさに見本を見せることで、ようやく体が動くようになりましたが、最初のうちは、無理やり鍵盤から自分の指をはがそうとするので、その長さは付点8分音符もの長さになっていました。この映像は、スタカートのアプローチをし始めて1年くらいの頃のものです。この頃には、軽やかなスタカートができるようになっています。

りつくん小学5年生

次の映像は、小学6年生のりつくんです。思春期に入り、こだわりが非常に強くなりました。自傷行為や多動が激しくなり始めた時期です。レッスンでは、少しでも音を間違うと自分の指をいじめたり、自分を叩いたりと自傷行為が目立つようになりました。「この指が悪いんだ!こいつが悪いんだ!」と、自分の指を外側に折り曲げるので、指が折れてしまうのではないかと内心ハラハラです。とにかくレッスンでは、りつくんの自傷行為が起こらないように、パニックにならないように、りつくんに予測不能なこと、理解しにくいことがないよう心がけました。しかし、このような心がけは100%できるわけではなく、こちらの想像を越えたところでフラッシュバックが起こり、パニックになることもあります。

このように薄氷を踏むような状態だった反面、理解力が増したため、音の強弱へのレッスンが可能になってきました。そのため、りつくんの調子が良さそうで、受け入れてもらえそうな時だけ、強弱についての指導を加えていました。

りつくん小学6年生

続いては、中学1年生、思春期真っただ中のりつくんです。本格的に自傷行為が激しくなり、レッスンにおける様々な注意が一切できなくなりました。また、これまでの指導で身についたはずの姿勢も、指の形も、初期の頃の悪い形に逆戻り。弾く指はまっすぐ伸び、鍵盤を叩くようなタッチが目立つようになりました。イライラをピアノにぶつけるような弾き方に、様変わりしたのです。しかしその中にあって、ペダルは楽譜の記号が視覚的にわかりやすかったようで、「これはペダルの記号なんだよ」と見方を教えてあげると、自分からその記号通りにペダルを踏んでくれるようになりました。

鍵盤を叩くように弾くことが多くなったりつくんですが、人前ではレッスンほど汚い音では弾いていません。このときは調子の悪いりつくんに、「姿勢をまっすぐ」だとか、「鍵盤をたたかないで」などといった声かけは一切できなかったのですが、そういう声かけがなくても、本番は丁寧に弾いてくれました。

りつくん中学1年生

現在りつくんは、高校3年生。あるとき突然、りつくんが私の横に駆け寄ってきて、ボソッと「ジブリが弾きたいです」と言ってきました。りつくんが自発的に何かをしたいと発することはほとんどなかったので、びっくりした私は嬉しくてたまらなくなり、「うん。ジブリを弾こう!」と、今ではジブリ特集の分厚い楽譜を使ってレッスンしています。先日、暑中お見舞いをもらったのですが、そこには「ピアノを全部ひきたいです」という文字がありました。これは、ジブリ特集に入っている曲を全部弾けるようになりたい、という意味だと思います。それくらい、りつくんはこの曲集がお気に入りで、この曲集を使ってからどんどんピアノが上達しています。今では鍵盤を叩くように弾くこともなくなり、とてもきれいな音色で弾いてくれるようになりました。


〜 本における、りつくん登場箇所 〜

・第3章 それぞれの身体能力に応じたアプローチ方法
      (7)スタカートができない







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emksan at 21:12│TrackBack(0)mixiチェック 障碍&幼児 

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