2014年09月09日

軽度知的障碍なっちゃんの記録(動画)

このブログ右サイドバーに、軽度知的障碍21歳なっちゃんのレッスン風景をご紹介していますが、ここでご紹介させていただくのは、教室の行事から見るなっちゃんの成長の記録です。この記録がみなさんのレッスンに役立つものであることを願いながら、記事にさせていただきました。
※現在各地に赴いてのセミナーはしていません。「ネットでセミナーとして無料動画配信しています。このブログ右サイドバーにリンクしています。
※親御さんからネット公開のご了承を得ています。


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重度知的障碍のげんちゃんと双子のなっちゃんは、個人レッスンを開始する前に、げんちゃんと2人でグループレッスンをしていました。個人レッスンをするようになったのは、それから1年半〜2年くらいしてからのこと。週に1回のグループレッスンと週に1回の個人レッスンを並行していました。個人レッスンで使用した教材は、リラ・フレッチャーです。

なっちゃんは出会ったばかりの小学2年生の頃、軽度知的障碍と診断されていました。しかし、その後中度知的障碍と診断が変わり、高校生になった頃再び軽度知的障碍と診断を受けました。子どもって成長し続けているので、その時々に応じて診断が変わることがよくあるんですよね。そのため、私は障碍名を気にせず、その時々の成長に応じてレッスンすることにしています。

なっちゃんの動画をご紹介する前に、なっちゃんの読譜の経緯をと思います。なっちゃんは、線と間の区別がつかないタイプの子でした。

線と間
 
,里茲Δ法∪に刺さっている丸、線に刺さっていない丸について、時間をかけて説明をします。その後、△里茲Δ平泙鮓せ、刺さっているかな?刺さっていないかな?,里匹辰舛隆櫃汎韻犬な?というクイズを出すのです。当時のなっちゃんは、これに答えることができませんでした。そこで楽譜を色音符にするようになったのですが、このアプローチ方法を思いついたのはしばらくしてからのこと。なっちゃんには導入期、とても苦労させてしまいました。

しかし、いつこの線と間の区別がつくようになるかわかりません。子どもは成長し続けているのですから。そこで、1年に1回くらい上記のクイズを出し、確認するようにしていたのですが、高校生になった頃、区別がつくようになっていることがわかりました。とうとう読譜のアプローチができる時期がきたんだ!と興奮した私は、早速、呉暁さんの教材を使ったアプローチを開始しました。

教材の横に五線譜の見本表を置きます。見本表と教材の音符を見比べて、自分で教材を色音符の楽譜にしていく、というアプローチでした。線と間の区別がつくのだからと始めたアプローチでしたが、なっちゃんはちんぷんかんぷんな様子。楽譜に書かれた音符と同じ音符を、見本表から見つけ出すことができません。おかしいなぁと思った私は、「これは何本目に刺さってるよね、だから・・・」という説明を始めました。

そこで気付きました。ああ、5本の線を正しく数えることができないのだと。1本目の線「ドレミ」までは読めるのですが、それ以上の線が関わってくると、目がチカチカしてくるのか、頭が混乱するのか、正しく何本目と判断することができなくなります。このアプローチは時期尚早だったのだとわかった私は、「なっちゃん、ごめんね。これじゃ、わけがわからなかったよね〜。先生が悪かったんだよ。わからなくて当たり前だよね。本当にごめんね。」と謝り、読譜のアプローチをやめました。

高校を卒業し就職した、社会人1年目のこと。とうとう5本の線の区別がついているということがわかりました。今こそ時期だ!と思った私は、再び呉暁さんの教材と見本表によるアプローチを開始しました。なっちゃんはわかるものだから楽しくてたまらない様子。「これも家でやってくる〜!」と自分から言い出すほどでした。その上、自分が演奏する曲の楽譜を、自分で色塗りしてきてくれました。たまにト音記号とヘ音記号の見本表を見間違えてきてしまうことはありますが(笑)、お母さんの手助けなしに、1人で色塗りに挑戦してきてくれるようになったのです。

20歳を過ぎた頃から、五線譜にドレミファソラシドシラソファミレドと音符を書く練習を取り入れ始めました。それが安定してきた頃、今度は私が音名を書いた下に、その音符を書くという宿題を出すようになり、今は私が書いた音符を音名で書いて答えるという宿題を出しています。最近は、新たな一歩となるアプローチを開始しようとしているところです。呉暁さんの教材を、色音符なしで歌う、弾く、というアプローチです。(これらのアプローチは5分程度に留めており、それ以外の時間は色音符の楽譜を用いて、ピアノのレッスンをしています。)

なっちゃん最初の動画は小学4年生の頃のものです。ちょうどグループレッスンと個人レッスンを並行し始めた頃のものですが、この頃のなっちゃんはよくぐずり、レッスンが止まることがありました。悲しかったこと、嫌だったことがあると、数か月前のことでもついさっき起きたことのように思い出し、泣きだしてしまうのです。一度フラッシュバックしてしまうと、お母さんや私がいくらなだめてもダメ。なかなか気持ちを切り替えることができません。それでも音楽は大好きで、リズム感も音感もよく、お家でお母さんが一緒に練習に付き添ってくださっていたお陰で、地道な一歩一歩を進んでくれていました。


なっちゃん小学4年生 (YouTube動画)


次の映像は小学5年生のなっちゃんです。なっちゃんは図形が苦手だったため、線と間の区別がつきませんでしたが、これは鍵盤把握にも通じます。ゆっくり考えればわかることでも、楽曲中反射的に鍵盤把握に対応するというのは、とても大変なことです。そこで、ポジション移動しなくてもよい曲でレッスンするようにしていました。次の曲は、ポジション移動しなくても弾ける曲です。しかし、リズムが難しく、両手の兼ね合いもかなり複雑です。そこで、以下の順番でアプローチを進めていきました。

1)右だけ、左だけ、それぞれドレミでスラスラ歌える
2)片手ずつスラスラ弾ける
3)左のリズムを手で叩きながら、右のメロディをドレミで歌える
4)左を弾きながら、右のメロディを歌える


定型発達の子であれば、大抵ここまできたらすんなり両手奏ができるようになっているものですが、なっちゃんは4)がスラスラできるようになっても、両手で弾くことができませんでした。そこで、もうワンクッション入れることに。

5)右を弾きながら、左のリズムをタンバリンで叩く

タンバリンは、私やお母さんが持っています。なっちゃんが右手を弾きながら、左手でタンバリンを叩ける位置にタンバリンを持っていてあげるのです。このワンクッションを挟むことで、両手で弾けるようになりました。


なっちゃん小学5年生


続いての映像は小学6年生のなっちゃんです。この1年ほど、ポジション移動に慣れるための楽曲を選曲し、レッスンするようになっていました。ポジション移動に少し慣れてきていたということ、お母さんが練習に付き添ってくださっているということで、ポジション移動の難しい曲ではありましたが、発表会のために挑戦して弾けるようになってくれました。


なっちゃん小学6年生


なっちゃんは、小さな音で弾こうとすると、テンポが倍近く遅くなってしまう子でした。拍感がないわけではありません。弱音のコントロールというのは、自分の体を制御する必要があり、発達障碍の子にとってはとても難しいテクニックのひとつなのです。中学生に入り、テンポを遅くすることなく弱音で演奏することができるようになり、次第にクレッシェンドやデクレッシェンドなど、柔軟な表現にも挑戦できるようになっていきました。

次の映像は中学2年生のなっちゃんです。これまでの動画で、速い指の動きが一切なかったことにお気づきでしょうか?なっちゃんは体の節々が固く、動きにぎこちないところのある子です。中学生に入り、少しずつ速い動きに対応できるようになってきて、レッスンではわざとそういう曲を選曲するようになりました。もちろん、楽曲すべてが16分音符といったものは選んでいません。ほんの一部分に速いリズムが入っている曲を選曲し、慣れていってもらいました。

中学2年生になり速い動きに慣れてきたものの、その動きはとてもぎこちなく、音もカチンコチン。なめらかさがありませんでした。そこで、この1年はなめらかな動きに挑戦するようにしていました。映像はお母さんとの連弾です。お母さんはなっちゃんの1年後くらいに習い始めた初心者です。大人の初心者の方って、本番ものすごく緊張しますよね。頭が真っ白になってしまいます。「このときばかりは、なつを頼りにしちゃう。」と親子に逆転現象が起きる連弾が、私は大好きです。


なっちゃん中学2年生


高校1年生のとき「粉雪が弾きたい」と、なっちゃんに弾きたい曲が出てきました。私が選曲する時期はおしまい。これからは、なっちゃんが弾きたい曲をレパートリーにしていき、趣味として定着したピアノを楽しんでもらうスタンスにしていこうと思いました。

高校2年のとき。とうとう家での練習をお母さんの付き添いなしに、1人でできるようになりました。注意力が以前とは比べものにならにほど高くなり、レッスンで注意されたことをきちんと記憶して、手助けなしに1人でその点に注意力を注ぎ、部分練習することができるようになったのです。

なっちゃんは、急に頭が混乱して、当たり前に弾けていたところが全く弾けなくなることがありました。これは、知的障碍の子によく見られる現象なのですが、なにかをきっかけに混乱してしまい、普通に弾けていたところが別人のように全く弾けなくなるのです。一度混乱してしまうと、「あれ?あれ?あれ?」と混乱している自分に混乱してしまい、全く前へ進めなくなってしまいます。このような混乱が起きるたびに、以下のような声かけをし続けてきました。

1)落ち着いて
2)片手ずつ弾こう
3)左手を弾きながら右を歌おう


この3つを1回ずつやるだけで、もともと弾けていた箇所です。混乱がおさまります。高校2年生になったなっちゃんは、混乱すると私の声かけなしに、「ああ、混乱しちゃった!えっと、落ち着いて!片手ずつ弾いて・・・左手弾きながら歌って・・・。」と、つぶやきながら私の手助けなしに1人で混乱を解くことができるようになっていました。そのため、家での練習もお母さんの手助けなしに、1人で曲を仕上げることができるようになったのです。

ところで、動画では楽譜を見ながら演奏しています。楽譜はもちろん色音符です。これまでのなっちゃんは暗譜で演奏していましたが、ここまでの長い楽曲になると暗譜は難しく無理があるため、楽譜を見ながらの演奏となっています。色音符ではありますが、リピート、ダ・カーポなど、すべて把握した上で楽譜を追ってくれています。


なっちゃん高校2年生


〜 本における、なっちゃんの登場箇所 〜

・第1章 (1)具体的に伝える ァ俵饌療”はすべての生徒さんに通じることの「うしさん」の話。

・第1章 知的障害の子 (2)理解力と精神年齢がアンバランスな子

・第2章 線上と線間の区別がつきますか? (1)区別がつかない




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emksan at 12:38│ 障碍&幼児 | ピアノ/レッスン