2014年06月20日

インベンションで起きる混乱

昨日、中学1年生の女の子のレッスンがありました。
プレインベンションを終え、インベンション第1番をレッスン中です。
先週は、片手ずつが弾けるようになっていたので、
その場で一緒に両手の練習をし、
弾けるようになったところでレッスンが終わりました。

ところが、昨日、
インベンションのレッスンに入ったとたん、


「全然できませんでした。」


と言うではありませんか。
他の楽曲はきちんと練習できていたので、
これはきっと混乱してわからなくなったのだろうと推測し、


「何がわからなかった?」


と聞き返しました。
本人は1,2小節目がわからなくなったといいます。
でも、その原因がわからない。
何がわからなくなったのかがわからないんですね。(笑)
そこで、一体何が原因で混乱してしまったのか、
その原因を探ることにしました。

この子はプレインベンションで、
すでに2つの旋律を同時に頭の中で横に流す、
ということができるようになっていた子です。
そのため、原因は両手の兼ね合いではないだろうと思いました。
推測できることは、1小節目のプラルトリラーです。


「とりあえず、このプラルトリラーを外して弾いてみようよ。」


と声をかけました。
案の定、混乱して弾けなくなっていました。
この曲の両手奏に入る前、
プラルトリラーを外し、
両手で弾けるようになっていたにも関わらず、
それができなくなっていたのです。


 ・ ドレミファレミドソ、ドーシードーレ


これがこの曲1小節目右手のメロディ、
この曲のテーマとなっているメロディですが、
プラルトリラーのせいで、
テーマが怪しくなっているのだと感じ、


「プラルトリラーを外して、メロディを歌ってみて。」


と言いました。
案の定、ドーシードのところでつっかえます。
単純な16分音符と8分音符のメロディ。
このリズムがもう怪しい。(笑)
8分音符に切り替えられなくなっているのです。
しかも、「ドーシード」の箇所に差し掛かると、
間違えて「ドードー・・・???」と「シ」が出てこなくて、
わけがわからないという表情を見せます。

読譜はできるんですよ。
でも、それは混乱していなければ・・・の話。
プラルトリラーという新しい要素が入ったせいで、
単純な譜読みすらできなくなってしまっているのです。
実はこれ、大人の生徒さんにも見られる現象です。
インベンションでありがちなことなのではないでしょうか。
そこで、早速こんな質問をしてみることに。


「ねぇ。このプラルトリラーって、
何の音にプラルトリラーが付いてるのかな?」


「ド」


即答でした。(笑)
そりゃぁ、わけがわからなくなるよねぇ・・・です。


「楽譜をよく読んでご覧よ。この音、”ド”かな?」

「あ!シだ!!」

「シにプラルトリラーが付いているんだよ。
だから、プラルトリラーを外して歌うときは、シで歌おうね。
シがメロディの音。
そのシに飾りが付いてるか、付いていないかってことだよ。
プラルトリラーは上の音からドシドシって弾くから、
ドと混乱しちゃったんだね。
ドのためのドシドシじゃなくて、
シのためのドシドシなんだよ。」


改めて歌ってもらうと、歌えました、歌えました。(笑)
ようやくプラルトリラーの呪縛から逃れることができたようです。
そこで次のアプローチへ。


「先生はもとのメロディを歌うから、
Aちゃんは、プラルトリラー付きのメロディを歌ってね。」



私: ・ ドレミファレミドソ、ドーシードー
Aちゃん: ・ ドレミファレミドソ、ドードシドシードー



私の「シ」とAちゃんの「ドシドシ」が重なります。
これを何度か体験してもらった後、


「今度は逆。Aちゃんがもとのメロディを歌って。
先生はプラルトリラー付きで歌うからね。」



こういうアプローチをしていると、
生徒さんの目の輝きが変化してくるのがよくわかります。
「わかってきたぞ!そういうことだったのか!」
という目の輝きです。
モヤモヤとしていたものが、スッキリしていくときの表情。
頭がすっきりしてきたようだったので、


「ちょっと、プラルトリラー付きで両手で弾いてみない?」


と誘いました。
ここでまた混乱するようであれば、
他のアプローチが必要だと感じていたので、
まずはこのまま家に帰しても大丈夫かどうか、
確認することにしたのです。


「あ!できた!!!」


その嬉しそうな顔ったら♪
でも、家に帰ったらまた混乱する可能性は十分にあります。
そこで、


・プラルトリラーなしで弾く練習をしてから、
プラルトリラーを付けて弾くこと。



と伝えました。

こういうとき私が大切にしているのは、
「わからなくなったのはなぜか?」ということを、
本人に自覚してもらうということです。


・混乱していた


これが第1の原因です。
混乱したら自己解決できなくなってしまいます。
まずは、混乱していたのだということを自覚してもらいます。
次に、


・何を混乱していたのか


ということを把握してもらいます。
この把握は、私がいるから把握できるというのではなく、
家に帰って1人になったとき混乱しても、
自分が混乱している原因がわかる、
というくらいにまで理解を深めてもらいます。

ここまでくれば、
あとは混乱しなくなるまで、
ひたすら地道に練習するのみ。
混乱を自己解決できると思えれば、
練習にもはずみがつきます。

生徒さんの混乱にしっかりと向き合い、
生徒さんの頭の中が整理されるまで、
とことん付き合うということは、
とても大切と感じます。


「わかった!もう先生がいなくても大丈夫!」


そう思えたときの生徒さんの表情は格別!
私はそんな生徒さんの生き生きとした、
自信に満ちた表情が大好きです。


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emksan at 11:50│TrackBack(0) ピアノ/レッスン 

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