2014年05月18日

古楽器への誤解〜誤解を生じさせないために〜

古楽器の良さって、
その楽器を知りつくした人の演奏を聴かないと、
誤解が生じる恐れがあるんですよね。
古い楽器だから拙い響きなんだな、という誤解。

多分、アーノンクールが
古楽器研究と演奏活動を広めるべく苦労していた、
1970年代から20年くらいは、
ヨーロッパにもそういう空気が蔓延していたのではなかったかと思います。

アーノンクールは著書の中で、
その楽器が使われていた当時は、
その楽器を熟知する質の高い演奏家がいたと言っています。
ただ、その楽器が掘り出されたばかりの現代は、
その楽器にどういう響きがあり、どういう奏法があり、
どういう演奏が可能なのかがわからない。
何もわからない人間が、ちょっと音を鳴らしただけで、
古い楽器だから楽器の完成度はこんなもの、と判断してしまう。

古楽器って、モダン楽器より難しかったりするんですよね。
繊細なので。

特別な力量をもった人でなければ、
いい響きを奏でることができない楽器を拙い楽器といい、
誰もが簡単に響きを作り出せる楽器を良い楽器というのであれば、
古楽器は万人が簡単に操作できる楽器ではないという意味で、
拙い楽器と言えるのでしょうけれど、
それはあまりに、音楽とはかけ離れた視点からの判断と思うのです。

フォルテピアノの第一人者、
小倉貴久子さんのご自宅で開かれた、
ムジカノーヴァのインタビュー。(6、7月号)

小倉さんのご自宅に、
私が長年弾いてみたいと思い続けてきたクラヴィコードがありました。
小倉さんのご自宅はまるで博物館。
その貴重な楽器を小倉さんはとても気さくに、
「弾いていいですよ♪」と触らせてくださったのです。

小倉さんが珈琲を淹れてくださっている間に、
クラヴィコードを弾き始めた私は、
思っていた以上に小さい音だなぁとか、
ベーブンクの効き目(ヴィブラート)も繊細なんだなぁとか、
いろいろ弾きながら楽しんでいたのですが、
小倉さんがそばにいらして、
一音弾いてくださった瞬間びっくり!

それまで私が弾いてきた音とは別物の音が出てきたからです。
私が鳴らしていた響きの10倍くらい豊かな響き。
私の響きはこの楽器の響きではなく、
ただただこの楽器の弦の動きをタンジェント
(モダンピアノでいうハンマー。クラヴィコードのタンジェントは、
マイナスドライバーのような形と質感です。)で止めていただけ、
響きを殺していただけだったのです。

自分が鳴らしたクラヴィコードの響きだけで、
この楽器を解釈していたら、
私はクラヴィコードという楽器を多いに誤解していたことでしょう。
このような大いなる誤解が、
日本にはまだたくさんある気がします。
チェンバロに対しても、フォルテピアノに対しても。

古楽器に対するこのような誤解をしている間は、
それらの知識や体感を、
バッハやモーツァルト、ベートーヴェンを演奏する際の
ヒントにすることはできないでしょう。
当時の作曲家は、
当時の楽器を知りつくした上で作曲しているのですから。

それに、1人の聴衆としても、
もったいない誤解だなぁと思うんですよ。
古楽器にはモダン楽器にはない繊細な響きがあり、
繊細なニュアンスがあります。
音色の変化も本当にすばらしい。
私は1音1音の色合いの豊かさから、
現代にはない時間の豊かさを感じています。

博物館などで、
古楽器に触れたことのある方はいらっしゃることでしょう。
どうかご自分で奏でた音だけで、
古楽器の響きを判断してしまわず、
是非、古楽器を知り尽くした演奏家による古楽器の演奏を、
生で聴いてみてください。
自分の指やCDではわからなかった、
古楽器の本当の響きを体感することができるのではと思いますヨ。


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emksan at 10:47│TrackBack(0) ピアノ/ピアノの歴史 | ピアノ/知識

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