2013年09月30日

広汎性発達障碍4歳児:多動が見られる子へのレッスン(5)3つの視点に応じたアプローチ具体例

 〜 広汎性発達障碍4歳児:多動が見られる子へのレッスン 〜

(1)個性を知る
(2)理解力を知る、(3)身体能力を知る 
(4)個性に応じたアプローチが基本
(5)3つの視点に応じたアプローチ具体例
(6)教材に頼らない楽曲アプローチ
(7)その後のこの子(FB投稿へのリンク)



line


(5)3つの視点に応じたアプローチ具体例


1.鍵盤把握へのアプローチ

2つと3つの黒鍵の区別がつくということは、鍵盤把握へのアプローチが可能ということで、この子の個性に応じた形で鍵盤把握へのアプローチを開始することにしました。


。欧弔硲海弔旅鍵

2つのお山シート、3つのお山シートを鍵盤の正しい位置にセットしていきます。セットしたらジャンジャン!手の形など気にせずピアノを鳴らします。


▲匹慮鞍彷聴

2つのお山の近くには「ド」があるよ、というアプローチです。この子は多動なのでジッと取り組んでくれることはありませんが、「ド」の位置について私が教えようとしていることについては、理解を示してくれました。それでも、「ド」を探しているうちに、他の鍵盤もジャンジャンと鳴らし始め、のちにお話しするエレベーターゲームに自然に移行してしまいます。そのため、「ド」を探す私の姿を見せる、というのが主なアプローチ方法で、何が何でも本人に探させよう、というアプローチにはしていません。


ドレミファソラシの鍵盤把握

のちほどご紹介する、音の並びへのアプローチで「ドレミファソラシ」という存在を知ったこの子は、「ファソラソファ〜ソラシラソ〜ラシドシラララララ〜」という、最後の「ラララララ〜」がとても気に入った様子。多動なこの子が一本指でランダムにピアノを弾き始めたとき、音の並びと鍵盤把握をこの機会に一致させてしまおう!と思った私は、「ミ!」「ソ!」「ファミレ!」と、この子が鍵盤を押さえるたびに、その鍵盤の音名を唱えました。そして、私が「ラ」と唱えたとき、この子は「これがラなのか!」といった感じで、「ラララララ〜」とラの鍵盤を連打したのです。音の並びで面白いと思っていた「ラ」を発見した喜びが、この子の顔に現れていました。もちろん私は、この子の連打に合わせて「ラララララ〜」と音の並びのときと同じように唱えました。ここでちょっとしたゲームが生まれたわけですが、多動のこの子には通常の鍵盤把握アプローチは注意力が散漫になり、定着しないだろうと感じていたので、いいアプローチが見つかったと嬉しくなりました。このゲームを数カ月も続けていれば、自然に鍵盤把握と音の並びが一致していくだろうと思います。



2.音の並びへのアプローチ

定型発達の子に使っている方法と同じ方法をこの子にも使っています。ブログ右サイドバーに無料の読譜教材をリンクしていますが、そこの読譜準備/音の並びにあるアプローチです。

定型発達の子と異なるのは、じっとさせようと無理強いしないことです。例えば、多動なこの子が教室内をうろつきまわった後、教室後ろの椅子にちょこんと座ったとき。私はこの子の動きが止まった一瞬の隙を見逃さず「そこで音の階段やろうか?」と、その子の傍にかけ寄ります。無理やりピアノの前に座らせるのではなく、その子がいる場所まで私が赴き、その場でアプローチをする。これだけでレッスンが進展するんですよね。私が持っていった音の階段を見たこの子は、このアプローチにきちんと付き合ってくれました。

第1週目はドレミファソラシド、第2週目はドレミファソラシドシラソファミレド、第3週目はドレドレミレミファミファソファ〜、第4週目はドレミレドレミファミレミファソファミ〜、というアプローチです。いずれも不安感の強いこの子は、自分で音の階段を指さして歌ってくれることはありません。しかし、音の階段を指す私の指先を、興味深く見てくれます。この子にとっては「見る」「聴く」ということが学びの第一歩なんですよね。行動を起こしてくれるようになるのは、このアプローチのずっとずっと後のことです。この子から不安が取り除かれ、自分でもできそうと思ってもらえるようになれば、こちらから声かけしなくても自発的にやってくれるようになるでしょう。それまでは無理強いせず、ただ見せるだけ、聴かせるだけのアプローチに集中します。

お母様にも同じように家で見せてあげるよう、お願いしていました。この子は「ドレミファソ」という動きより、「ドレド、レミレ」という動きの方を気に入り、何度も「やって!」とせがまれたそうです。そのおかげで、この子の中に「ドレミファソラシ」という音名が定着しました。前述の”ドレミファソラシの鍵盤把握”に書いたゲームが生まれたのは、このような背景があったからと思います。


3.丸い指へのアプローチ

エレベーターゲームを教えた際、グーから差し出した一本指を丸くするための注意力が、この子にはあるということがわかりました。また、身体面においても、丸い指で鍵盤を押さえるだけの関節の強さ、指先の器用さがあるということがわかりました。多動のため注意力を持続させることが難しいという1点を除けば、丸い指へのアプローチが可能だとわかったのです。

そこで、持続性は求めずに、丸い指を提示し続けるという方法をとることにしました。「丸い指になっていないよ」という否定の声かけはしません。自閉症スペクトラムの子は否定されるのが苦手ですし、この子はもともと不安感の強いタイプの子です。そういう子に「違うよ」というのは、不安をあおるだけなので、ただ提示するに留めるというアプローチになります。

エレベーターゲームも鍵盤把握も、楽曲演奏も、グーから一本指を出した状態での演奏にはなりますが、すべてに「一本指を丸い指で弾く」という一貫したテーマを持たせることにしました。「丸い指で弾こうね」とこの子が弾く隣で、丸い指の手本を見せます。手本を提示した瞬間は、丸い指で弾こうと試みてくれるのがわかります。ただ、それが持続しないというだけです。持続させるには、膨大な注意力が必要になるのでしょう。そのため、大した注意力を必要としなくても丸い指で弾けるようになることを目標にしています。要するに「慣れ」ですね。

そのためには期間が必要と感じています。常に丸い指で弾くことを求めるのではなく、丸い指で弾ける時間を徐々に長くしていくことを目指す、といった感じでしょうか。それには一本指であったとしても、数カ月以上かかるのではと思います。


〜エレベーターゲーム〜

私が定型発達児導入期にも用いている方法です。小学1年生の子にも使っています。グーから一本指を出し、右手は中間音から最高音まで一本指で弾いていきます。最高音に到着したら「到着!」と、先生やお母さんとバトンタッチでもいいですし、タンバリンを叩くのでもいいですね。この子は到着音を連打して楽しんでくれています。左手は中間音から最低音へ移動させます。2の指で慣れてきたら、3の指を導入します。このゲームの目的は、指の関節強化にあります。関節の弱い子は、ピアノを弾く手の形では負担が重過ぎ、脱力を備えた状態で関節を強化するのは難しいですよね。グーにすることで付け根を安定させ、適度に脱力させながら関節を強化するというのが、このエレベーターゲームの目的です。

定型発達児で、導入当初エレベーターゲームをしていた子がいます。現在小学1年生でオルガン・ピアノ3巻に入ったところですが、関節の弱さが気になっていました。そこで、再びエレベーターゲームを取り入れたところ、驚くほど関節が安定してきました。生徒さんによっては、長期間エレベーターゲームが必要な場合もあるのだと感じています。楽曲の中で関節の安定を求めるのは、それほど注意力を必要としない、ほとんど無意識でも安定した関節で弾ける、という状態が必要なのですね。


※ エレベーターゲーム後の、関節強化方法ですが、私は「●●ちゃん、なぁに」というゲームを取り入れています。1本指で関節が安定しても、2音間のレガートが出てきたとたん負担が重くなり、もしくは手の形のバランスを失い、関節がそのアンバランスな負担に耐えられなくなるのです。グーから2・3指を出し、チョキの手の形にします。「●●ちゃん」と呼びかけながら3−2−3と指を動かして、好きな鍵盤を弾きます。生徒さんは、「なぁに」と答えながら、やはり3−2−3指を動かして、好きな鍵盤を弾きます。ルールは丸い指。第1関節がつぶれないとことです。前述の小学1年生の子はエレベーターゲームとこのゲームを併用させ、レッスン前にやっています。このことで関節が安定しやすくなり、楽曲内で第1関節について注意することがほとんどなくなりました。



次回『教材に頼らない楽曲アプローチ』はこちら


クリックで応援してネ♪
にほんブログ村 クラシックブログ ピアノへ  


emksan at 13:42│TrackBack(0) 障碍&幼児 | ピアノ/レッスン

トラックバックURL