2013年09月27日

広汎性発達障碍4歳児:多動が見られる子へのレッスン(1)個性を知る

 〜 広汎性発達障碍4歳児:多動が見られる子へのレッスン 〜

体験レッスン後、2回のレッスンを経て、先日第3回目のレッスンを終えました。約1カ月この子と付き合ってきたことで、レッスンをどのように進めていったらよいのかが見えてきたように思います。今日は私が出版した本の各章になっている、『個性を知る』『理解力を知る』『身体能力を知る』という視点で、私がどのように生徒さんを観察し、レッスン目標を設定しているかを、具体的にご紹介できたらと思います。

※個性・理解力・身体能力という3つの視点詳細については、セミナー内容詳細を書いたこちらをご参照ください。これらを章ごとに分けて書いた本とセミナー内容詳細を、より具体的事例を用いて説明しようと試みているのが、今回のブログ記事となります。


(1)個性を知る
(2)理解力を知る、(3)身体能力を知る 
(4)個性に応じたアプローチが基本
(5)3つの視点に応じたアプローチ具体例
(6)教材に頼らない楽曲アプローチ
(7)その後のこの子(FB投稿へのリンク)


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(1) 個性を知る


●会ってすぐにわかったのは多動だということです。体験レッスンのときは、1分としてじっとしていられない感じでした。しかし、音楽には強い興味を示しており、第2回目、第3回目のレッスンでは、ピアノに向かうと集中力が持続しやすいということがわかりました。もちろん、ずっと座っていられるわけではありませんが、他のことをやっているときよりも集中力が持続するのです。


●自閉症スペクトラムの子は、間違えたくないという強迫観念のようなものから、先生がやっているところ、お友だちがやっているところをじっくり観察し、「できそう」という手ごたえをつかんでからでなければ、行動しないことがあります。自閉症スペクトラムの子全員がそうというわけではありませんが、この子にはその傾向が強く見られました。これは、新しい楽曲についての拒否反応として表れます。知らない曲への不安感が強いのです。

また、楽器を叩こうと誘っても、最初から一緒に叩いてくれるということはありません。「ママと」と要求してくるか、私が叩くところを見るだけとなります。しかし、見ていないわけではなく、興味がないわけでもありません。嫌がっているように見えて、嫌がっているわけではなく怖いだけなのだと感じます。実際、しばらく「聴くだけ」「見るだけ」「ママと一緒」を体験すると、不安感が目減りし、表情が和らぎ、その楽曲を楽しんでくれるようになりました。

※「見せる」「聴かせる」ことをしているとき、生徒さんの目がその行為から逸れていることが多々ありますが、見ていないわけでもなければ、聴いていないわけでもありません。多動なので、見ているようには見えないですし、聴いているようにも見えないかもしれませんが、実はかなり細部までしっかりと見聴きしているんですよね。そのため私は、見せている間、聴かせている間、生徒さんが動き回ったりしても注意することはありません。生徒さんは自分が理解できずに不安に思っている箇所をきちんと選別し、見聴きしているのだと、その後の経過を見れば一目瞭然だからです。


●お教室内に飾られている置物や、パソコン周辺、ピアノの下、あらゆるものに興味を示し、動き回る子ですが、「レッスンでは使いません。」と説明すれば、理解を示してそこから離れてくれます。毎回気になりはするのですが、そこに長居はしないということです。興味の衝動が解消されるまで、多少待ってあげることにしていますが、それは10秒から15秒で済みます。生徒さんによっては1分〜3分ほど必要な場合もありますから、この子は切り替えが早いなぁと感じています。


●ご両親は音楽好きで、どちらも楽器経験者です。そのため、日常生活の中に音楽が満ちているのではと想像しています。お母さまのこの子への接し方には余裕があり、気持ちにゆとりのある家庭生活がこの子を伸びやかにしているのだと感じます。特に自閉症スペクトラムの子は(障碍のない定型発達児にも言えることですが)、短所を改善しようと思うあまりに、その子の個性を認めず、求めるだけになってしまうことがあるのですが、そうするとパニックがひどくなったり、多動がひどくなったり、不安感が強くなったりします。

そういう場合、その子の精神安定を図りつつのレッスンアプローチとなり、レッスンの進みが遅くなってしまうんですよね。精神状態が不安定でアプローチを受け入れてもらいにくいため、アプローチを受け入れてもらえるための土壌を作ることから取り掛からなければならなくなるからです。しかし、この子にその必要はありません。安定した気持ちで満たされているからです。だからこそ、前述の興味が向いたことへの切り替えもすばやくできるのだろうと思います。

ちなみに、生徒さんたちの精神不安定さは、家庭が安定したゆとりあるものだったとしても、起きることがあります。その場合、要因は学校など他の場面に譲られます。その要因は学校の先生にある場合もありますが、学校の先生ではなく学校行事にある場合もあります。特に運動会前などは練習の疲労感とともに、授業が運動会の練習に変更されることで、自閉症スペクトラムの生徒さんたちは不安定になりがちです。

定型発達児の場合は、小学1年生に上がったばかりでお昼寝の時間がなくなり、ピアノレッスン時間には眠くなり集中できなくなることもありますし、新しい学校生活での緊張感から精神不安に陥ることもあります。小学4〜6年生の女の子は、生理が始まったことで精神が不安定になることがあります。


 ・・・・次回「理解力を知る」に続く こちら


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emksan at 12:15│ 障碍&幼児 | ピアノ/レッスン