2013年05月15日

音楽的自立を促すレッスン

通常、発達障碍の子へのレッスン記事は、
「幼児・発達障碍」というカテゴリに入れているのですが、
今回のお話は発達障碍の子の枠を超えたレッスン内容なので、
「ピアノ/レッスン」のカテゴリに入れることにしました。

昨日、広汎性発達障碍SYOTAくんのレッスンがありました。
発表会では、自作の曲、ショパンのワルツ、
ベートーヴェンの月光を弾きます。
ワルツも月光もある程度基本的なことをクリアし、
弾けるようになってきていたので、
昨日のレッスンは”口出ししない”をテーマにレッスンしました。

”口出ししない”ということは、
SYOTAくんらしさを引き出すということ。
2年ほど前から始めている方法で、
「録音研究してみる」というアプローチです。
(本当は定型発達の生徒さんにももっと適用させたい方法です。
音楽的自立を促すよい方法と感じているからです。
しかし、そのためにはある程度耳が育まれている必要があります。)

他の生徒さんについても同じことがいえますが、
SYOTAくんの場合は特に、
自分なりの音色に対するこだわり、
歌い方に対するこだわりがあるため、
”できるだけ口出ししたくない”という思いが、
私には強くあるのです。

しかし、基本的なことはクリアしておきたい。
基本的なレッスンをしている最中も、
「きっとこんな風に表現したいんだろうな」
という感覚が私に伝わってくるので、
なるべくそれを生かした形でレッスンするよう心がけるのですが、
SYOTAくん自身が基本的なことに囚われすぎてしまい、
SYOTAくんらしさが目減りしてしまうことがあるのです。

また、音色、音のバランス、拍感、自然な歌い方など、
言葉で説明したところで伝わらないことも多々でてきます。
弾いていると夢中になってしまい、
客観的な判断ができないんですよね。

SYOTAくんには、
自分なりの目指す音色や歌心というものがすでにあり、
それを音として実現させるためにはどうしたらよいのか、
という引き出しも豊富になってきているので、
録音研究をすると一気に演奏がよくなるのです。

「ショパンのワルツ、録音研究してみた?」

「いや、まだです。」

やっぱり。
SYOTAくんの演奏を聴いていると、
録音研究したのかしていないのかがすぐにわかります。
そこで昨日は、

「今日は、先生口出ししたくないから、
録音研究して、自分で考えてきてごらん。」

と伝えました。
いつものことなので、SYOTAくんも納得して頷いてくれます。
ベートーヴェンの『月光』も同じことでしたが、
もっとはっきりとした具体的イメージを持ってもらうための
働きかけをすることにしました。

ベートーヴェン時代のフォルテピアノについてのお話。
ベートーヴェンが楽譜に書きこんだ、
『月光』冒頭の指示についてのお話。
その後、1795年製ヴァルターの復原楽器による演奏、
ホロヴィッツによる演奏、
バックハウスによる演奏を聞き比べしてもらいました。
その際、以下のような点に注意を促しました。

「それぞれのピアニストが、
どういう音を大切にしたいと思って弾いているのか、
それを聞きとってごらん。
ハーモニーのこの音をこう響かせたい。
それぞれのピアニストにいろんな響かせ方があるからね。」

いつの間にかこういう会話ができるようになり、
この言葉を理解してもらえるようになっているんですよね。
そういう意味で、SYOTAくんのレッスンは3年くらい前から、
発達障碍の子の枠をはるかに超えたレッスン内容になっているのです。

聴き比べした後は、ペダル操作について説明しました。
次のハーモニーへ移り変わる際、
音色が変わって聴こえる移り変わり方と、
そのままの響きを維持させたまま移り変わる方法の違い、
薄く踏んだときの響きと、
深く踏んだときの響きの違い。
ぼかすのかぼかさないのかの違い。

これらはすべて、
これまでの楽曲ですでに経験してきていることですが、
今回はどのペダリングにするのかという選択を、
自分でしてきてもらおうと思ったのです。

SYOTAくんなりに響きのこだわりがあるはずで、
それに適したペダリングは、
私ではなくSYOTAくんにしかわからないことです。
自分なりに試行錯誤してきてもらいたいと思いました。
昨日のレッスンは、ほとんど弾くことなく、
このようなアプローチで終わりました。

私はこういうレッスンが大好きです。
弾くだけのレッスンでは得られなかったことが、
一気に得られることが多々あるからです。

音楽的自立を促すレッスン。
常に私が心がけている、
また、思考錯誤し続けているテーマですが、
生徒さんの精神年齢、拍感、耳による判断力、
楽譜の読み込み能力による判断力、
表現のための奏法技術への理解力、
様々な能力に応じたアプローチが必要になってくるので、
難しいアプローチといつも感じています。

でも、こういうレッスンが生徒さんに響いた時、
生徒さんの演奏は私の手を離れ、
生徒さんらしい演奏になっていくんですよね。
その瞬間がたまらなく好きです。
少しでも多くそういう瞬間を得ていきたい。
いつもそう思います。


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emksan at 11:59│TrackBack(0) ピアノ/レッスン 

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