2013年04月03日

第1回オーティズム・ミュージシャン・コンサート

昨日オーティズム・ミュージシャン・コンサートに、
自閉症の生徒さんと一緒に行ってきました。
自閉症の方々によるコンサートです。
とても有意義なコンサートでした。

第1部は、1人1人演奏の後、親御さんによるお話。
小さい頃どんな子だったのかとか、
どんなことに苦労しながら練習してきたのかとか、
今はどんな生活をしているのか等々。
頷けるお話がたくさん出てきました。

第2部はシェア会です。
音楽を通して繋がりを持とうという主旨。
私がこの会に赴いたのも、
生徒さんたちが大きくなってきて、
音楽を通じた交流がピアノ教室内だけでは、
物足りない子が出てきたから。
もっと広がりのある音楽仲間を見つけてもらいたい。
そんな思いからでした。

そこにいる全員が自己紹介をしました。
いろんなお話を伺うことができました。
30代自閉症の女性のお母さま。
当時は機械に触り過ぎると自閉症になると言われていたとか。
お子さんがレコードが大好きで毎日のように聴いていたので、
それが原因で自閉症になったのではなどと、
今では耳を疑うようなことを言われたそうです。

また、何人かの共通した経験として、
大手音楽教室のグループレッスンでの経験があります。
「白い目で見られることに耐えられなくなった。」
”白い目”という言葉が、
私の胸にグサリと強烈に響きました。
なかには、ピアノの先生からきつい言葉をもらったことのある子もいて。
発達障碍の子どもたちが、
理解のあるピアノ指導者に出会う難しさを、改めて感じました。

各地で演奏活動をすることで、
自閉症の子の特異を得意に変えるということを、
広めようとしている方がいらっしゃいます。
すばらしいピアノ演奏を聴かせてくださったのですが、
この子も大手音楽教室のグループレッスンに行っていたそうです。

周りの白い目に必死に耐えながら、
宿題だけは、誰よりもきっちりしていこうと心に決めて、
グループレッスンを続けたそうです。
お母様が小学校の音楽の先生だということもあり、
それが可能だったのかな、とも思います。
これが楽譜も読めない、ピアノの弾き方もわからない、
という親御さんでは、辞めざるえなくなってしまいますよね。

ちなみに、私の甥は障碍のない定型発達児ですが、
大手音楽教室のグループレッスンについていけず、
やめたクチです。
みんなと同じペースで学ぶというのは、
障碍のあるなしにかかわらず、とっても大変なこと。
グループレッスンでは、
1人1人の横に先生が付き添ってレッスンしてくれるわけではないので、
親御さんの負荷がかなり大きいのですよね。

たとえ、音楽の先生でピアノが弾けるからとはいえ、
宿題をきっちりとこなし、
周りの白い目に耐えるということ、
お子さんにどんな風にピアノを教えていったらよいのかという試行錯誤、
どんなにか大変な日々だったろうと思います。
お母さまの地道な努力があって、
この子のすばらしい演奏があるのだなぁと感じました。

優しい音色のヴァイオリンを聴かせてくれた男の子がいました。
お母様はピアノの先生。
右手と左手が全く別々の動きをしなければならないヴァイオリンを、
ボーイングからじっくりゆっくり取り組み、
今の美しい響きを手に入れたそうです。
ビブラートは特に難しくて3年がかりだったとのこと。
私の生徒さんも小学5年生からヴァイオリンを習い始めて、
高校生の今、ビブラートに挑戦中です。

第3部はビリーブという曲の合奏でした。
出演者だけでなく、みなさんも演奏に参加しませんか?
という全員参加型だったので、
私の生徒さんはヴァイオリンを持っていきました。
私はすっかり客席で演奏するのだろうと思っていたら、
楽器で参加する人数分椅子を並べてくださり、
1度みんなで合わせてみるというリハまでありました。

客席のみんなは歌を歌います。
私の後ろでは、元気よく気持ちよさげに
体をゆらしながら歌っている男の子がいました。
私は発達障碍の子のこういう素直な表現が大好きです。

合奏は初めて合わせたとは思えないほど、
ピッタリみんなの息が合っていて驚きました。
私の生徒さんも、どこでピアノ伴奏の入りを覚えたのか?(笑)
その場できっちりピアノ伴奏や、
周りの方々に合わせて演奏していました。
生徒さんが演奏中ずっと私を見つめて、
ニコニコしながら弾いていたので、
私もニコニコ笑顔を返しながら歌いました♪

この子がこんな風に大勢で合奏するのは初めてのこと。
お母さまも貴重な体験ができて感激だったとメールをくださいました。
生徒さんはというと、帰りの道中ずっと「楽しかった」と言い、
お家でも、寝るまで「楽しかった」と何度も言っていたそうです。

このコンサートで私が一番共感したのは、
その空間にあったように思います。
入口を入った瞬間から、みんなにこやか。
自然と「こんにちは〜!」という挨拶が
そこかしこで生まれていました。
発達障碍の子どもたちの素直さが、
そのまま表現できる空間だった、ということです。

コンサートが終わった後も、
フラフラッと初対面の子がやってきて、
「こんにちは」とか「○○ですか?」とか話しかけてくれました。
それがとても自然でなごやかで。
ここには観客や出演者というくくりがなく、
空間を全員で共有するという居心地の良さがありました。

だからだと思うんですよね。
演奏中のみなさんの表情がとても豊かで。
あぁ、心行くまで演奏を楽しんでいるんだなと、
感じとれる演奏ばかりでした。
パニックになりがちで、
当日もきちんと演奏できるか不安といっていた女の子も、
落ち着いた表情でおじぎをし、
2曲も集中してお母さんと連弾していました。
ときおり見せるムフフッという口元のゆるみが、
なんとも可愛らしくて♪

私の生徒さんたちもそうなのですが、
演奏が楽しいと、そのまま顔に出ちゃうんですよね〜。
ニコニコ、いや・・・ニヤニヤかな。(笑)
そんな表情を見ると、かわいくてたまらなくなる私です。

このコンサートは、自閉症の子たちから、
そういうゆとりのある表情を引き出すことを大切にしていて、
私はそこに強く共感を覚えたのでした。
この会は、今後2回、3回と続けていくそうです。
今回は平日で連れていけない子がいたので、
次回は休日だったらいいな。

こういう会に参加させていただくことで、
生徒さんの音楽世界を広げていけたらと願っています。


【もっと知りたい方へ】
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emksan at 18:15│TrackBack(0) 音楽/コンサート | 障碍&幼児

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