2013年02月01日

ポッジャーの公開レッスン

バッハの公開レッスンDVD。
得るところが多くありました。
ポッジャーは、私が大好きなバロック・ヴァイオリン奏者なのですが、
このDVDにはピアノに通じる学びがたくさんありました。
キーワードは、コントラスト、スペース、アーティキュレーション。





レッスン中、ポッジャーはよくバスを歌います。
これはハーモニーを感じるということ。
インベンションを練習する際にも、
バスを歌いながら弾くと違う世界が見えてきますよね。

ポッジャーのすばらしいところは、
アナリーゼが表現という「体現」に結びついているところと思います。
このハーモニーはドミナントで次にトニックへ行き、
ここは借用和音で・・・なんて説明はありません。
そうではなく「バスの動きから何を感じるか?」という、
純粋な生きたアナリーゼがそこにはあるのです。

ポッジャーは体中でそれを表現します。
その表現力がすごい。
ポッジャーの動きひとつで、バスの進行がカラフルになるんですよ。

ほとんどの生徒さんたちは、
バロック音楽をよく聴き知っているレベルの高い生徒さんばかり。
(なかに1人だけそうではない生徒さんがいましたが・・・。)
そのため、反応がすごくいい。
たくさんの音楽を聴くことで得た、
自分の中に持っている表現の引き出しを、
ポッジャーから引き出してもらうといった感じ。


「あ、そうか!ここはこの引き出し、ここはあの引き出しを使えばいいのか!」


そんな生徒さんの目から鱗の喜びを、
演奏を通して感じ取ることができました。
バスを歌い、体中で表現するポッジャーの横で、
それはそれは気持ち良さそうに「目から鱗」で演奏するのです。
その喜びが手に取るように伝わってきました。

そして、スペース。
これはピアノ演奏においても重要だと感じています。
音を繋げて弾くだけでは、
大切な響きが流れてしまうことがあるからです。

ここで重要と感じたのは、
音の方向性を感じた上でのスペースということです。
ある地点からある地点へ向かう際、
最終地点である音を奏でる前に微妙なスペースを入れることで、
頂点の音が引き立ち、しかも美しく響くのです。

また、このスペースはコントラストとも密接な関わりがあります。
例えば、長3度の響きから短3度の響きに変わる瞬間。
ここにはコントラストがあるはずで、
そのコントラストを耳で体感するためにスペースが必要になる、ということ。

コントラストには様々なケースがありました。
高低による問いと答えのコントラスト。
長短という響きのコントラスト。
それから、ニュアンスのコントラスト。

ポッジャーのニュアンスの引き出しはとても豊富で魅力的!
ポッジャーの手にかかると、
生徒さんたちのモノクロだった世界が、
あっという間にカラフルに生まれ変わります。

このニュアンスはバスのリズムの変化、
バスのハーモニーの変化、
メロディの音型の変化からくるものですが、
ポッジャーはそれらを鋭敏な感覚でキャッチし、
体現に結びつけるのです。

ポッジャーがよく使う単語に「アーティキュレーション」があります。
ポッジャーのいうアーティキュレーションと弓の動きには、
密接な関係があります。
実際、ポッジャーの弓使いはとても柔軟で、
表現力に富んでいるんです。
しかも、そこにはわざとらしさが一切ない。
音が求めているものをそのまま表現しているといった感じ。

生徒さんたちの弓使いはとても固く、
アーティキュレーションも16分音符のパッセージも、
棒読みに聴こえてしまいます。
しかし、ポッジャーが弓使いの柔軟さについて指導したとたん、
生徒さんたちの音が語り出すんです。

ピアノでの腕や手首の柔軟性に通じると感じました。
もちろんバロック音楽をロマン派の音楽のように、
抑揚をつけすぎるのは私は好きではありませんが、
音が自然に語れるよう、
手首や腕を柔軟に保っておくことは大切と思います。

また、このDVDを観て、
ポッジャーのニュアンスは「音の切れ方への意識」にあると強く感じました。
弓使いが柔軟になるということは、
音の切れ方への意識が行き届きやすくなるということ。
ブチッと音が切れないんですよね。
だから、音が切れていたとしても、
次のフレーズとの自然な繋がりが生まれる。

ピアノもそう。
音の切れ方の意識がとても大切。
そのためにはアーティキュレーションへの意識、
スペースの意識、コントラストの意識、
すべてが必要なのだと感じました。

そうそう!
このDVDを観て、新たに私に足りない点を発見しました。
この発見はとても嬉しい!
音楽が昇りつめたとき、
ポッジャーは最後まで音楽を行ききる!といった感じの動作で指導していました。
ウワァン!と音が昇りきる感じです。
このとき、生徒さんの演奏と共に、ポッジャーは腕を高く振り上げます。


あっ!私にはこの感覚がない!


まさに、目から鱗。
呼吸でいうと吐ききるという感じ。
なんて伸びやかな!
私の表現が小さくまとまってしまいがちな盲点は、
こんなところにあるのかも、と思いました。

このDVD、とてもお勧めです。
日本語訳はありませんが、
ポッジャーの動きでわかります。(笑)
それくらいポッジャーの動きによる表現は豊かで、
生きたアナリーゼがあるのです。

DVDを観た後、とても幸せな気持ちになれます。
ポッジャーのオーラはとってもハッピー。
生演奏を聴きに行くと、
ポッジャーから放出されるハッピーなオーラが、
いつも私を幸せな気持ちにさせてくれるのですが、
DVDでも同じでした♪


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emksan at 16:33│TrackBack(0) ピアノ/レッスン 

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この記事へのコメント

1. Posted by starfield   2013年02月05日 20:35
5 バッハを意識して聴くことはないのですが聴きたくなってしまいました。
日本語訳がないということですが音楽だと伝わりますよね。きっと。
2. Posted by 中嶋   2013年02月05日 21:43
> starfieldさん
私、語学はからきしダメなんですよ。英語もしゃべれないし、聞きとれないし、なにより単語力がないし・・・デス。(^_^;) そんな私が楽しめたDVDなので大丈夫ですよ〜。