2012年12月06日

発達障碍ってこんな障碍(2)

「発達障碍ってどんな障碍?」
http://musestown.livedoor.biz/archives/52041791.html

「続:発達障碍ってどんな障碍?」
http://musestown.livedoor.biz/archives/52042008.html

「発達障碍ってこんな障碍(1)」
http://musestown.livedoor.biz/archives/52042661.html




今日は、医学的・療法的視点ではなく、
ピアノ指導者の視点で捉える発達障碍のあれこれ第2弾です。


・3歩進んで2歩下がる

時間をかけてできるようになったのに、
新しいことを導入したとたんにできなくなってしまう。
これは知的障碍の子によくみられる現象です。
新しい事を覚えようとすると、
以前覚えた箇所にほころびが出来てしまうのです。

最初の8小節の譜読みが済んだので、
次の4小節の譜読みを開始し始める。
そうすると前の8小節がほころび始めます。
このほころびを最小限に食い止めるため、
私は最初の8小節をかなり入念に地ならしした上で、
次の小節の譜読みに入るようにしています。

また、1曲の譜読みがある程度進んだときに、
多くの子が見せる混乱があります。
混乱が生じると弾けるようになっていた、
あちらこちらにほころびが生じ始めます。
理由は「似ていることによる混乱」です。
Aの3・4小節目とA1の3・4小節目を混乱してしまうのです。
そんなときは、AとA1の違いが生じる箇所をチェックしてあげ、

「Aを歌おう!(弾こう)」

「次はA1を歌おう!(弾こう)」

「じゃ、またAだよ!」

と、違いのある2つを交互に練習します。
AやA1という言葉は、ブログ記事用に便宜上使っている言葉です。
レッスンではニコニコマーク1、
ニコニコマーク2といった印を使っています。
これをゲーム感覚でやっています。

「今度は引っかからないで弾けるかな〜?」(私)

「あ、やられた!引っかかっちゃった!(笑)」(生徒さん)

こんな楽しいやりとりが生まれ、
その箇所に対する生徒さんの印象が強くなり、
強い記憶に結びつきます。

自閉症スペクトラムの子の多くは、
ひとつのことを手に入れたら忘れない、
という強固な記憶力を持っている子が多いように感じます。
何かの理由で1週間練習できない日があったとしても、
前回のレッスンで覚えたことは忘れていないのです。

しかし、全ての自閉症スペクトラムの子がそういうわけではなく、、
3歩進んで2歩下がるタイプの子もいるので、
一概に自閉症スペクトラムの子だから、
覚えたことは忘れない、
新しいことを導入しても混乱が生じないとは言い切れません。

3歩進んで2歩下がる子のレッスンには、
「せっかく覚えたのに」
「また1からレッスンのやり直し?!」と肩を落としたり、
「これじゃなかなか前へ進まない」と、
教材の進み具合に焦りを感じたりするのではなく、
じっくりとその子のペースに付き合ってあげたいですね。

3歩進んで2歩下がっても、確実に1歩前進しているのです。
ゆっくりとした歩みではありますが、
その地道な1歩1歩から生まれる、
生徒さんの思いの詰まった1音1音には、
ときに人の心を揺さぶる力があり、
そういう音に出会えたとき、
私はこの上ない幸せな気持ちになります。


【補足】

自閉症スペクトラムで間違えるとパニックになったり、
多動が激しくなったり、イライラしたりする子には、
ゲーム感覚で「引っかかっちゃった!」というのはNGと思います。
こういうタイプの子には、
AとA1の違いについて伝えるだけで十分ではと思います。
それでも間違える場合は、
部分練習を理解してもらった上で、
淡々とA⇔A1を交互に練習するのがよいのではと思います。
部分練習を理解してもらう方法については、
以下のブログ記事をご参照ください。
http://musestown.livedoor.biz/archives/52041863.html


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emksan at 13:18│TrackBack(0) 障碍&幼児 

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