2012年11月27日

発達障碍ってどんな障碍?

ムジカノーヴァに連載することになったとき、
編集の方から「発達障碍について知らない人に向けて、
どんな障碍なのか冒頭に書いてもらいたい」と言われました。

しかし、発達障碍について手短に説明することは
私には不可能に思われました。
例えば、下記のウィキペディアを見てみてください。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3

とても2ページの連載に収まる内容ではないですよね。
しかも、結局どういう障碍なのか、
全く具体的に想像することができません。
下記は自閉症についてのウィキペディアです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E9%96%89%E7%97%87

「他者とのコミュニケーション能力に困難が生じる」

一体どんな風に?
文字にされてもさっぱりわからないですよね。

また、私が書いた本の目次を見るだけでも、
一言で説明できるようなものではないということが、
おわかりいただけるのではと思います。


第1章 その子の個性を知ろう

幼児の世界
 (1)自己中心性と中心化
 (2)アニミズム

自閉症スペクトラムの子
(1)具体的に伝える
   _箸任領習方法を伝える
   ▲譽奪好鵑慮通しが立つ
   H表会のための練習を説明する
   げ士未鮨値化する
   ァ閥饌療!はすべての生徒さんに通じること
(2)視覚に訴える
   ‘虻遒畔源による説明
   音の長さを視覚化する
   レッスンそのものを視覚で説明する
   っ躇佞鯊イ靴燭た搬琉媼韻鮖覲个冒覆┐
(3)新しいことへの不安を取り除く
   _箸涼罎魄篤發垢
   ¬詰のない新しい要素の取り入れ方
   H表会の準備
   い教室お引っ越しの準備
(4)完璧主義な子へのアプローチ
   〆能蕕ら完璧に弾けないとイライラする子
   間違えるのを極度に恐れる子
   4岼磴い鮖愿Δ気譴襪肇ぅ薀ぅ蕕垢觧
   ご岼磴┐襪肇ぅ薀ぅ蕕垢觧
(5)こだわりの強い子へのアプローチ
   〇間に固執する子
   曲に執着する子
   重度の知的障害を持った子のこだわり
   た靴靴ぅ櫂献轡腑鵑鮗け入れられない子
   ジ納垢防佞合う
(6)多動の子へのアプローチ
(7)感覚異常のある子への理解
   ゞ貅蠅焚擦ある子
   靴下が嫌いな子
   触られるのが苦手な子
(8)睡眠異常がある子への理解 
(9)おかしくない状況で笑う子への理解

知的障害の子
 (1)がんばりたいのにがんばれない子
 (2)理解力と精神年齢がアンバランスな子
 (3)ダメ!が通じない子


第2章 その子の理解力を知ろう

言葉が通じますか?
(1)発語がなく、こちらの言っていることが伝わらない子
   .團▲里亡靴譴襦複泳椹悗罵靴屐
   属音を利用する(1本指で遊ぶ)
   4蔽韻淵螢坤爐伐擦魴茲瓩特討(1本指で弾く)
   ぅ疋譽澆亡靴譴A(1本指で弾く)
   ゥ疋譽澆亡靴譴B(1本指で弾く)
   ξ昭蠅巴討(両手とも1本指で弾く)
   Ч鍵に慣れる(2・3・4指をのばす)
   ┌海弔旅鍵で演奏する(2・3・4指で弾く)
   親指を使う(1・2・3・4指で弾く)
(2)発語がある、もしくは、発語は少ないがこちらの言っていることが伝わっている子

文字が読めますか?

2つの黒鍵と3つの黒鍵の区別がつきますか?
(1)区別がつかない
(2)区別がつく
   々鍵把握へのアプローチ
   ◆屮疋譽漾廖屮侫.愁薀掘彷聴へのアプローチ
   それぞれの音名と鍵盤一致へのアプローチ
   ね諭垢淵櫂献轡腑鵑悗離▲廛蹇璽

リズム譜が読めますか?
(1)リズム教具によるリズム譜導入
   _刺笋猟垢気鮓た目で把握する
   拍子の基本音符を変身させる
   これから取り組む楽曲のリズムを読み取る
(2)リズム譜は読めるのに、5線譜に書かれた音符のリズムがわからない子
   
指番号を覚えられますか?
(1)指番号による指の運動
   〇愴峭罎隼悗琉戝
   ∋愴峭罎鰺用した指の運動
(2)指番号の読譜
   ヽ敝茲暴颪れた数字に気づいてもらう
   楽譜に書かれた指番号を読み取ってもらう

線上と線間の区別がつきますか?
(1)区別がつかない
   _悉猗
   ▲譽奪好鵑修裡
   レッスンその2
(2)区別がつく
   _擦粒段を書く
   見本の音符と見比べる
   3敝茲慮廚隆を利用する
   
音の長さを理解できますか?
(1)理解できているが、鍵盤上で音を伸ばせない子
(2)理解できているが、テンポが安定しない子


第3章 その子の身体能力を知ろう

幼児の身体発達の順番

それぞれの身体能力に応じたアプローチ方法
(1)握力がない
(2)指が弱い ○○ちゃん、なぁに(2音間スラーの指の形)
   。泳椶困弔了悗鮹辰┐
   ■臆惨屮譽ートのために指を鍛える
(3)指が思うとおりに動かない
   〇悗某┐譴道惻┐垢
   ∋悗某┐譴困忙惻┐垢
(4)それぞれの部位への意識が弱い
   〇慇茲飽媼韻いかない
   ▲撻瀬襪鯑Г爐箸かとへ意識がいかない
(5)手首が下がる
   /道悗龍化
   ⊃道悗離灰鵐肇蹇璽
   “つま先”という声かけ
   ぞ指の強化とコントロール
   コ擽米發任亮茲蠢箸
(6)鍵盤から指が離れない
(7)スタカートができない
   仝鞍廚ら指を離す
   ⊆蠎鵑鮟斉陲砲垢
(8)“右は繋げて左は切れる”ができない
   〆犬鮹討ながら、右メロディを歌う
   体で覚える
(9)両手ユニゾンで混乱してしまう
   _仕てゲームで即時反応を養う:レヴェル1
   音当てゲームで即時反応を養う:レヴェル2



編集担当の方にこういった点を説明させていただき、
雑誌には障碍の詳細は書きませんでした。

ムジカノーヴァ12月号では、
多動の子について書かせていただきましたが、
注意欠陥多動症の子だけでなく、
ダウン症の子にもこういった子はいるものです。
実際、あの質問を受けた子はダウン症の子でした。

私は生徒さんの障碍名を知る、
ということにあまり固執しないようにしています。
障碍名を知ったからといって、
レッスンがスムーズにいくかというとそうではないからです。

私の本の目次、自閉症スペクトラムの子の
(1)から(9)の特徴は、
自閉症スペクトラムの子すべてが持っている特徴というわけではありません。
この中のいくつかの特徴がみられる子が、
自閉症スペクトラムの診断を受けるのです。
しかも、自閉症スペクトラムは、
自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障碍など、
さまざまな障碍名に分けられています。

さらに、見られる特徴の強度は決まっているわけではありません。
この特徴は強く見られるけれど、
この特徴はちょっと垣間見られる程度・・・といったように、
10人いたら10通りの個性があるのです。

生徒さんを受け入れる前に、
障碍についてよくよく勉強しなきゃ!
と思われている先生も多いのではと思います。
でも、実際は、
接してみないとわからないことが99%と言っても、
過言ではないのではと思います。

障碍名について勉強するのではなく、
目の前にいる生徒さんの個性を知ろうと思うこと。
それがレッスンの第一歩と思います。
そのため、私は本の中でも、セミナーでも、
そしてムジカノーヴァの連載でも、
障碍名に応じた書き方はしていません。

こういう個性の子に出会ったとき、
私はこういうアプローチをした、という経験談が中心です。
確かに自閉症スペクトラムの子の場合、
知っておいたほうがよい接し方があります。
でも、それはほんの少しのことで、
あとは実際に接してみて、
あれやこれや試行錯誤しないとわからないんですよね。

発達障碍ってどんな障碍?
文字で説明するには限界がある障碍。
実際に出会ってみないとわからない障碍。
そんな風に思います。

ところで、発達障害情報・支援センターのHPでは、
かなりわかりやすい説明をしてくれています。
下記は、支援方法「こんなとき、どうする」についてです。
http://www.rehab.go.jp/ddis/

そして、下記はこの支援センターによる、
発達障害の理解のためにというパンフレットです。
こちらもとてもわかりやすいですよ。
http://www.rehab.go.jp/ddis/?action=common_download_main&upload_id=550


こういった情報をもとに、
目の前の生徒さんがどういう個性を持っているのか、
親御さんに伺ったり、生徒さんを観察したりして、
とにもかくにも「どうして?」などと疑問を持たずに、
そういうものなのか、これが障碍なのかと、
まずはその個性を受け入れ、
それをもとに「じゃ、どうやってアプローチしようかな」と考える。
その繰り返しなのではと思います。

私が出会ったことのない個性を持っている子も、
世の中には大勢いるはずです。
10人いたら10通りだからです。
発達障碍の子を何人か教えたことがあるからと、
発達障碍について知っているとは言えないんですよね。
毎回毎回、新しい生徒さんに出会うたびに、
どんなアプローチがいいかな?と試行錯誤することになるんです。

先日ある先生がおっしゃっていました。
発達障碍の子に教えるようになって、
障碍のない定型発達の生徒さんたちに対し、
こういう目線で指導してきただろうか?と
これまでの生徒さんたちに申し訳ない気がしている、と。

私はよく障碍あるなし関係ないと書いているのですが、
目の前にいる生徒さんを知ろうと思い、
ひとりひとりに合わせたレッスンをするということは、
障碍のない定型発達の子にもいえることなんですよね。

「うちの子自閉症です」とやってきた生徒さん。
私はそれ以上詳しい診断名を聞くことはしていません。
アスペルガー症候群なのかもしれないし、
注意欠陥多動性障害なのかもしれないし、
広汎性発達障碍なのかもしれないし。
でも、そういった障碍名を知らなくても、
生徒さんと信頼関係を築き上げることはできますし、
レッスンアプローチすることはできるんですよね。

かえって知らないほうがよいのだろうとも思います。
障碍名に固執することなく、
目の前にいる生徒さん自身を知ろうと思えるからです。
それに、セミナーでもお話しているのですが、
子どもの成長に応じて、
障碍名が変わることってよくあることなんですヨ。

自閉症と言われていた子が広汎性発達障碍に変わり、
知的障碍と言われていた子が自閉症に変わる・・・。
そのたびにレッスンアプローチも変わるのかといえば、
目の前の生徒さんに合わせている限り、
障碍名が変わっても、
レッスンアプローチは全く変わらないんですよね。

私たちピアノ指導者は、
お医者様ではないので、
生徒さんを診断しようと思うのではなく、
ただただその個性を受け入れて、
それに合わせたアプローチを編み出していくのでよいのではと
私は思っています。


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emksan at 22:56│TrackBack(0) 障碍&幼児 

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