2012年11月17日

幼児に拍子を視覚的に経験させる(拍子感その2)

昨日は、拍子を「体感させる」というアプローチでしたが、
今日は、拍子を「視覚的に経験させる」というアプローチについてです。
ドレミファソ程度の楽譜が読めるようになっている子が対象です。
(読譜のアプローチについては、
「幼児の思考は非可逆的(読譜の指導法)」をご一読ください。)

論理的に考えることが無理な幼児に、
論理を提示しても生徒さんに理解してもらうことはできず、
先生も生徒さんも苦労するだけですね。
そこで私は、まずは論理的説明は抜きにして、
視覚的に拍子というものがどのように表示されているのか、
を経験してもらうことにしています。

私はソルフェージュに、呉暁さんの教材を使用しています。
そこに、以下のように1212と拍子を書き込みます。

拍子1


7歳くらいまでは私が書き込みます。
論理的に説明することは一切ありません。
私が生徒さんに求めるのは、分子の数字を見て、
その楽譜が何拍子かを判断するということだけです。

生徒さんに判断してもらったら、
私が1212という数字を書き込みます。
そして、拍子打ちをしながらリズムを唱えてもらいます。
(拍子打ちについては昨日の記事をご参照ください。)
これはこの教材の「ふよみ」のアプローチでも同様です。

1小節に4分音符何個という理解は、
論理的な思考が必要になりますね。
この写真の2小節目は、
4分音符ではなく8分音符ですが、
幼児はこの2小節目は音符が4つという理解しかできず、
4分音符2個分という理解には至らないでしょう。

そこで、そのような理解は求めずに、
2拍子のとき先生が書き込む数字はいつも1212というパターンだな、
3拍子のときは123123というパターンだな、
という経験を積んでもらうのです。
昨日の記事の「体感」と合わせてアプローチすると、
拍子というものへの本質的な理解が深まり、
ピアノ演奏が安定していきます。

生徒さんが小学1,2年生になった頃、
これまで私が書いてあげていた拍子を、
生徒さんに書いてもらうというアプローチを始めます。
きちんと小節内を正しく分割できるか、というアプローチです。
そのとき必ず見られる現象が、以下のものです。

拍子2


2小節目が正しく分割できていません。
拍子というものは、小節内を正確に分割することですが、
ここでも私は論理的なことは説明しません。
まずは見た目で1小節を分割できるということに重きを置きます。
私が間違いを正すと、
これまで何度も私が1212と書いてきているのを見ている生徒さんは、
何の疑問も感じずに、「あ!そうだった!」と言ってくれます。

こういう経験を積むことで、
生徒さんは小節内を正しく拍子で分割するということを身につけていきます。
この方法は、2分の3拍子というリズム譜が出てきたときに、
生徒さんの混乱を防ぐよい方法だと感じています。
私の生徒さんで2分の3拍子に混乱した子はひとりもいません。
(発達障碍の子も含め)

みんな当たり前のように、拍子打ちをしながらリズム譜を唱えてくれます。
しかし小学生になり、123を自分で書き込むとき、
多少の混乱が伴います。
この年齢ではある程度論理的思考が育ってきているので、
「2分音符が3つ分」という論理的アプローチをすることで、
混乱はあっという間になくなります。
123と書き込むときはある程度考えながら書き込むにしても、
拍子打ちしながらリズムを唱える際には、
一切混乱せずに3拍子のノリで唱えてくれます。

ところで、リズムへのアプローチについてですが、
私は単体でリズムを指導することはありません。
まとまりを見せることにしています。
単体で指導すると音楽的な「まとまり」を感じずに、
機械的にリズムを唱えてしまいがちだからです。
また、8分音符、付点4分音符といったものは、
論理的思考が育まれていないと理解できないものですね。

そのため、論理的思考へのアプローチは一切せずに、
これは8分音符、これは2分音符といった具合に、
名前だけを覚えてもらいます。
そして、リズムそのものは「まとまり」として体験させています。

これは私がエクセルで作成したものを、
知り合いの作業所で製作していただいた、
マグネットシートのリズム教材です。
http://www.terra.dti.ne.jp/~emikosan/rhythm.html
使用方法は上記URLに詳しく書いていますが、
論理的に言葉で説明するのではなく、
事象を経験させることで理解を促すことが目的です。

幼児教育を学ぶ学生は、
ピアジェという児童心理学者が唱えた発達段階を必ず学びます。
彼は、思考の発達にいくつかの段階があると唱えました。
その中で、2〜7歳は前操作期といいます。
前操作期の子どもは目の前にないものを使って、
推論するという論理的な思考が未熟です。

http://musestown.livedoor.biz/archives/50636801.html
また、以前ブログに書いた上記URL記事に、
コップの水を移し替える実験がありますが、
この時期の子どもは「見た目」に左右されやすいのです。

そこで、リズムへの理解も、
理論ではなく「見た目」を取り入れ、
目の前に起こる事象を経験してもらうことにしています。
ここでいう事象というのは、
4分音符が8分音符2つに変身する、
4分音符2つが2分音符に変身する、ということです。

生徒さんの目の前で、
4分音符が8分音符に変身するところを見せ、
4分音符の中に8分音符が平均に入るよう、
タンタタ・タンタタというリズムを聴かせてあげます。
このとき指先で4分音符の拍を刻みながら聴かせてあげると、
より理解が深まるのではと思います。

ところで、私は付点のリズムについても、
付点4分音符の論理的な説明は一切せずに、
「ターアタ」というまとまりでアプローチしています。
このとき、多くの先生方が苦労するのは、
「ター」の長さを正確に伸ばせず、
次にくる8分音符「タ」が前のめりになってしまうという、
付点の長さへの指導ではないでしょうか。

しかし、この付点の長さの問題は、
拍子打ちを利用することであっという間に解決します。
私は「タータ」とは書かずに、「ターアタ」と書きましたが、
この「ア」は2拍目を感じるための「ア」です。
何度か拍子打ちをしながら、
「ターアタ、ターアタ」と聴かせてあげることで、
幼児は混乱することなく、
正しく拍子の中で付点のリズムを唱えることができるようになります。

ターアタを正しく唱えることができるようになったら、
今度は楽譜の中から
「ターアタ」というまとまりに着眼してもらうためのアプローチをします。
「この中からターアタを見つけよう!」というアプローチです。
幼児は、ターだけ、タだけ、と視点が1つに定まってしまいがちです。
たぶん幼児の目には符頭しか見えておらず、
符頭から伸びる棒(符幹)までは、見えていないのだろうと思います。

幼児の目の動きを実験したものがありますが、
ひとつの絵柄を判別するのに、
幼児の視線はあまり頻繁には動きません。
絵柄のほんのいち部分しか見えていないのです。
この視線の動きは6歳になると複雑になっていき、
全体像が把握しやすくなっていきます。

このように視線の動きが少なく、
目の前に見える絵柄の全体像を把握できない幼児は、
「タタ」や「ターアタ」というまとまりを、
なんの働きかけもなしに見出すということができません。
しかし、このアプローチを何度か経験することで、
容易に楽譜から「タタ」や「ターアタ」というまとまりを
見出すことができるようになっていきます。
(タタやターアタを見つけて○で囲もうといったアプローチは
とても効果的で、生徒さんたちみんな楽しんでくれるアプローチです。)

これらリズムは、常に拍子打ちをして体感することで、
拍子感を伴ったリズムになります。
これは音楽が安定して横に流れるということです。
生徒さんのピアノ演奏のリズムは生き生きとし、
拍子も安定感を伴っていきます。

ところで、これらのアプローチは、
読譜の際、リズムの間違いを正すのにも効果的です。
ブルグミュラーなどを演奏するようになった生徒さんでも、
リズムの読み間違いはよく見られるものですが、
これは小学生になっても、
まだまだ視線の動きが狭いからだろうと感じます。
そのため、生徒さんの目はひとつひとつの音符に偏りがちです。
頭の中では「タン」「タ」「タカタカ」とわかっていても、
一定に流れる時間軸の中でそれらを正確に刻む、
という視点を忘れてしまいがちなのです。

こういう生徒さんは、いくらリズムを訂正しても、
家に帰るとその感覚を忘れてしまいます。
そして、次のレッスンでもまた同じようなリズムの間違いを見せ、
なかなか直りません。
感覚的なことはなかなか直らないものですね。
しかし、「時間軸」という安定した理解が伴うと、
このリズムをお家に持ち帰っても忘れず直しやすくなるのです。
まず、生徒さんに質問をします。

「この曲は何拍子?」

次に、生徒さんが間違えて譜読みしてきた小節を指し、

「ここに正しく拍子を記入してごらん」

と言います。
そうすると、リズムの譜読みを間違えていた子は必ず躊躇します。
これは、その小節内の拍子の刻みを理解していなかったということです。
拍子というものは、安定した時間軸の刻みでもあります。
時計でいう秒針のようなものですね。

この安定した時間軸がなくなってしまうと、
生徒さんのリズムの譜読みは間違いやすくなってしまいます。
しかし、この時間軸の混乱を訂正してあげるだけで、
リズムの譜読みはあっという間に直るのです。
あとは、拍子打ちをしながら、
その小節を歌うというアプローチをするだけで、
生徒さんのリズムは安定し、再び間違えることはなくなり、
生徒さんも「わけがわからない!」という混乱が消え去るので、
すっきりとした嬉しそうな表情を見せてくれます。


明日は、拍子感アプローチの(3)です。
2拍子と4拍子、3拍子と6拍子の体感による比較、
拍子の中でクレッシェンド?拍子の中でリタルダンド?
といった疑問を、ブルグミュラーの楽曲&動画を使用して書く予定です。


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emksan at 09:00│TrackBack(0) ピアノ/レッスン | 障碍&幼児

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