2012年11月13日

幼児の世界「どうして?」ではなく幼児とはそういうもの(図形の方位知覚について)

幼児の世界については、
出版した「あきらめないで!ピアノ・レッスン」の冒頭にも書きましたが、
同じような内容をブログ記事にも書いています。

・自己中心性について
http://musestown.livedoor.biz/archives/50636776.html

・自己中心性と中心化について
http://musestown.livedoor.biz/archives/50636801.html


私は幼児と発達障碍の子の世界は、
とても似ているなぁと感じているんです。
だからなのか、発達障碍の子と出会っても、
「どうして?」と疑問に思うことがありません。
自然と「そういうものなのね」と受け入れることができます。

「どうして?」という思いに固執していると、
レッスンがそこから先に進みません。
「幼児って、発達障碍児ってそういうものなのね!」と思えれば、
「じゃぁ、どうアプローチしようかな?」と思考を前進させることができます。
目の前にいる生徒さんの個性を知り、
その個性を受け止めるということは、そういうことと私は捉えています。

とはいえ、情報がなければ「どうして?」になってしまうもの。
私は大学時代幼児教育学を学んでいたため、
そういうものなのだと思えますが、
そういう情報のない人は「どうして?」と思ってしまいますよね。



【図形の方位知覚】


先日セミナー後のランチ会で、

「見比べながらCDEF〜と書いているにも関わらず、
反転させて書いちゃうんです。
あれってどうしてなんでしょう?」

という質問を受けました。
私は、

「そういうものなのよ〜。それが幼児!」

と答えました。
4,5歳になってくると、子どもの饒舌さや、
ちょっとした生意気な口調に、
思わず大人視点で子どもを見てしまいがちですが、
生まれてまだ4,5年しか経っていない幼児。
あらゆることがまだ発展途上にあります。

図形の方位もそのひとつ。
絵本を逆さにして読んでいても平気だったり、
前述の質問のように見比べながら書いているにもかかわらず、
左右を反転させてCDEFと書いてしまったり。

これは、まだこのような知覚が発達していないということです。
私が持っている『児童心理学入門』(培風社)には、
以下のように書かれています。


児童心理学入門
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1)方位知覚は3歳〜8歳まで着実に上昇して、7〜8歳でほぼ完成する

2)左右方位の混同が最もよく起こる

3)上下方位の混同はこれに次いで多い

4)90°および45°の方位差の混同は比較的少ない


8歳くらいまではこのような混同がある、ということです。
私は子どもの頃、ひらがなの「め」や「あ」の縦線のカーブで、
よく混乱していました。
どっちにカーブさせるんだっけ?と。(笑)
みなさんもそういうご経験ありませんか?

このような幼児の世界を理解した上で、
レッスンアプローチを考えると、
そこまでCDEFGABCと正しく書けるようになることに、
どこまで意義があるのだろう?という疑問が生じてきます。

私はまずは読めればよいと思うんですよ。
書くには混同が混じりますが、読むことはできます。
また、幼児期には学ばなければならないことが山ほどありますね。
音の並びという概念がまだ理解できていない生徒さんに、
このような書き方を指導したところで、
生徒さんの理解には繋がらないでしょう。

音楽する上で必要不可欠な知識&感覚は、
音の高低を伴った音の並びという概念であり、
音名をひらがなやカタカナ、英語で書くことではないですよね。
書き方については、方位知覚が十分に育まれてから、
音の高低を伴った音の並びという知識&感覚に結び付けていくのでも、
十分遅くはないと思うのです。

私はセミナーで「できることを教える」とお話しています。
できないことは教えないということです。
これは、知覚できるようになってから指導する、ということでもあります。
まずは知覚できていることを発展させていく、
それぞれの成長過程に合わせたアプローチをする、
ということを大切に思います。


「どうして?」


幼児の世界に関する情報がないことで
この疑問に固執してしまいがちと思いますが、
今は発達途上であり、
いずれこういった知覚が正常に作動する時期がくるのだということがわかれば、
気持ちに余裕を持って、
現在のレッスンを組み立てることができるのではと思います。


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emksan at 09:00│TrackBack(0) ピアノ/レッスン | 障碍&幼児

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