2012年02月06日

楽器支援岩手へ行ってきました

1泊2日で楽器支援先の岩手へ行ってきました。


地図


新幹線で盛岡へ。
盛岡から宮古へはバスで2時間。峠を越えます。
この106号という道は、宮古の命綱なんですね。
宮古へ出るにはこの道しかありません。
電車もあるようですが、1日に3本程度とのこと。
バスは1時間に1本出ています。

午後1時に宮古に着き、
5月からお世話になっている小成という楽器店さんの、
向口さんにお会いしました。

向口さんと


向口さんは、私がずっとお会いしたいと思い続けてきた方です。
岩手から宮城や福島への楽器配送も、
すべて送料無料で請け負ってくださっている方で、
かなり頻繁にメールでやりとりをしてきました。
私のぶしつけな質問にも快く誠実に答えてくださり、
被災地のピアノの先生方の実情や、
宮古市にひとつしかない楽器店さんである小成さんの現状など、
いつも快く情報を提供してくださっていました。
だから、もう他人とは思えない・・・そういう方なのです。

小成さんの本店は、沿岸地域にあり、
そこではOA機器・事務機・文具や教材などを販売。
そのほか盛岡にも1店舗教材や理科教材などを取り扱っている店舗があります。
この本店は、津波でダメになってしまいました。
そして、楽器店は1階部分が膝丈まで浸水しました。

当初、向口さんは楽器店はもう無理と判断され、
みんな首になってしまうだろう、と思ったそうです。
しかし、従業員のみなさんで説得し、
なんと4月から音楽教室を再開しました。
泥だらけだった店舗の泥かきを、
水がまだ出ていなかった震災直後から始めたのです。

楽器店所属のピアノの先生方も懸命でした。
いつまで落ち込んでいても意味がない。
子どもたちに少しでも日常を・・・・。
そうみんなで一致団結しました。
その気持ちは被災地の親御さんと共鳴し合いました。
震災直後の新規の生徒数は、前年度を上回りました。

この小成さんの伝手で、
加藤先生が私のメールアドレスを知り、
私に「楽譜ではなく、楽器の支援はしていないでしょうか?」という
問い合わせのメールをくださったのが5月初旬のことでした。

加藤先生の生徒さん、そして加藤先生の支援が終わった後、
加藤先生はこの小成に所属している先生方へ声をかけてくださり、
間に入ってこの支援活動を取り持ってくださいました。
私はずっと加藤先生お1人とやりとりしてきていたのですが、
この日、向口さんと加藤先生のお心づかいで、
楽器支援を受けた先生方をご紹介いただきました。
グレードなどで来られなかった先生もいらっしゃるとのことでしたが、
急だったにも関わらず4名もの先生方にお会いすることができました。


宮古の先生方と


みなさんが口をそろえておっしゃっていたのは、
楽器支援を受けた子どもたちは、
明らかに他の子どもたちより練習熱心だ、ということでした。
楽器を失い、欲しくても手元になかった時期がある。
支援を受けることのありがたさを痛感している。
だから、みんな練習熱心だ、というのです。
とても印象的で、とても嬉しかった!

山田町というところは、津波と火災で被害が大きかった地域。
この山田町出身の先生は、今仮設に住んでいるとのことでした。
この先生は今、仮設から小成の教室へいらしています。

10月頃まで避難所にいて、
ピアノのことなど考えられなかった生徒さんがいます。
5月に加藤先生から声をかけられても、
「楽器なんて・・・」
と思われていた先生もいらっしゃるのです。
無事生徒さんが仮設に入って、
ふと楽器支援のことを思い出しました。
そして、加藤先生に、
「あの支援って、まだやっているのかな?」と問い合わせをしてくださいました。

家族が多くて、それぞれの用事で必死。
子どもはピアノが大好きでレッスンを再開してくれたのに、
お父さんは全くピアノを買ってくれそうにない・・・。
これから家を建てるなどの出費を考えると仕方がない。
それでもこの子はピアノが本当に大好きで、
お兄ちゃんの結婚式で「ピアノを弾く!」と言ったそうです。
でも、家にはピアノがない。
それから本番1週間前、毎日先生のところへピアノを練習しに来ました。
それを見たお父さんがようやく了承してくれて、
楽器支援を受けることが叶いました。

仮設が狭いなどといった理由で、
支援を受けたくても受けられない子どもたちもいます。
家の事情で楽器を置く場所がないと、
家族会議の結果、支援を断念するご家庭もあるのです。
被害の大きかった田老地区に住んでいた兄弟。
支援初期に支援要請があった兄弟です。
もうすぐ仮設に入るので、と要請がありました。

しかし、実際仮設を見てみると、あまりの狭さに愕然。
楽器支援など受けられる状態ではないと判断せざる得ませんでした。
そして秋になり、仮設を出てアパートに住み始めたと、
改めてこの兄弟から支援要請が入りました。
このときは本当に嬉しかった!!

みなさんいろんな事情を抱えています。
加藤先生は震災直後からピアノが弾きたくてたまらなかった先生です。
しかし、私のように1か月弾く気になれなかった人もいる。
秋になって、ようやく楽器支援を受け止められるようになった人もいる。
これでも宮古は心の回復が早い地域です。
釜石の方々は、まだここまで前向きになれていないようだ、と聞きました。

先生方とひとしきりお話した後、
大槌町へ向口さんの車で向かいました。
車を南に走らせます。
その中で、こんなお話を聞きました。
このあたりの人たちの年収は200万程度。
サラリーマン男性の初任給が15万、女性が12万が平均。
貯金しようったって、貯金なんかできない。
だから、貯金のなかった人が大勢いる。


児玉先生と


大槌町の児玉先生は、ご実家でピアノを教えていらっしゃいました。
1階部分が被災。
家の中には外から標識などが飛び込んできていたそうです。
石巻もそうですが、被災地はリフォームの人出が足りなくて、
なかなかリフォームが進みません。
石巻には11月にようやく1階部分のお風呂場を直してもらえた、
という先生がいらっしゃいました。
児玉先生のお宅は、まだ完全にはリフォームできていません。

被災した大工さんは大工道具がない。
その上、全国的に材料が不足しているそうです。
この写真の背景。
ふすまがまだ手に入らなくて、とりあえずでベニヤ板が収まっています。


大槌町


児玉先生のお宅から見える景色。
大槌町に入ると一面何もなくなります。
目の届く範囲内に、一軒も家がないのです。
人の気配も全くありません。
その中にあって、児玉先生のご実家とその裏にある家の2軒だけが残っているのです。
児玉先生のご実家の目の前にあった家は、もうありません。

誰もいない。電燈もない。信号機もない。
人の気配が一切ない地域となってしまいました。
児玉先生のご実家はリフォームもまだ完全に終わっていない上、
防波堤が直っていないので津波がいつくるかもわからない。
そのため、ご両親は仮設にお住まいです。
児玉先生が住んでいた、ここから5分の借家は被害に合わずに済んだので、
現在児玉先生はそちらでレッスンしていらっしゃいます。


児玉先生の家


外からみた児玉先生のご実家。
ご両親はあの日、裏の山へ逃げたとのことでした。
震災後、児玉先生はここから楽譜やドレスなど、
救えそうなものを右側の崖の上を越えて運びました。

児玉先生とお別れした後、宮古から盛岡へ。
盛岡には夜9時頃到着し、一泊。

今日は、午前中「いつか絶対にお会いましょう!」とお約束していた
加藤先生とお会いしました。
この楽器支援のきっかけを与えてくださった先生です。
加藤先生は現在、前沢で別のお仕事をしていますが、
隔週で前沢から宮古へ行き、6名の生徒さんをレッスンしています。
片道4時間の距離。
その日は家族のいる家に泊まるそうです。

加藤先生のご実家は海が目の前。
家はもうありません。
ご両親は2年の約束で借家に住んでいます。
宮古市の復興計画はなかなか進まず、
残りあと1年、いったい1年後はどこへ住めばよいのか。
ご両親とも頭を悩ませているそうです。

でもね、嬉しい報告もありました。
加藤先生、結婚が決まったんです♪
これまでの加藤先生を理解し、受
け止めてきてくださった方。
嬉しい!すごく嬉しい!

「いつ報告するのがいいかと思って〜。」というので、
「今日で嬉しいっ!」といいました。

加藤先生とも一緒のお付き合い!
そうメールで言ってきていました。
会ったことなどなくても5月からの深い付き合い。
メールとはいえ、心を心を通わせてきた間柄です。
今日お会いしただけで、
もう長い付き合いみたいな感覚で話に花が咲きました。
向口さんともそうだったんですヨ。
なんか、初めてじゃないみだいだね、と。(笑)


加藤先生


この写真、私の顔歪んでますね。(^_^;)
2人で会ったので、手を伸ばして撮るしかなくって。
加藤先生はすらりと細くて背の高い先生でした。
私はチビデブです。(笑)
顔の写真だけでわかっちゃいますね。
すらりとして小顔な加藤先生の花嫁姿、絶対きれいに決まってる!
花嫁姿の写真送ってくださいね〜!とお願いしました♪

大急ぎの1泊2日ではありましたが、
来てよかった!心底そう思えた2日間でした。
私を暖かく迎えてくださったみなさんに本当に感謝です。

嬉しいついでにご報告♪
楽器支援のHPが立ち上がります。
ボランティアで作成してくださる、という助っ人が現れたのです!
今までブログ内に散乱していた情報の数々。
もっと見やすくなる予定です。嬉しいっ!!

この支援は、被災地のピアノの先生方、
楽器店の方、楽器を提供してくださる方、
支援金をくださる方、運搬交渉をしてくださる方、
HPを作成してくださる方、発信してくださる方、
多くの方に支えられています。
本当に本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

支援を途切れさせずに、
被災地の声に耳を傾けながら、
独りよがりにならないように、
そして様々な反省点を生かしながら、
これからも活動を続けていけたらと思っています。
どうぞこれからもよろしくお願いいたします。


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emksan at 21:10│TrackBack(0) 東日本大震災支援 

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