2011年11月10日

リヒテルとギレリスを育てた伝説のピアノ教師

しばらく自分の感性(耳)を育てていないということに気づき、
これじゃぁいかんと、久々に聴いたCD。


ロシア・ピアニズム名盤選-11 1949年ショパン・コンサート・ライヴ/1958年ジュビリー・コンサート・ライヴロシア・ピアニズム名盤選-11 1949年ショパン・コンサート・ライヴ/1958年ジュビリー・コンサート・ライヴ
アーティスト:ネイガウス(ゲンリヒ)
コロムビアミュージックエンタテインメント(2003-05-21)
販売元:Amazon.co.jp
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リヒテルとギレリスを育てた、ロシアでは伝説となっているピアノ教師、
ゲンリヒ・ネイガウスの演奏です。
ネイガウスはリヒテルを絶賛していました。
この演奏を聴くと、その理由がよくわかります。
2人には俯瞰した視点という共通点があるように思うから。
楽曲の全体を掌握してしまう能力。

楽譜という記号。
彼らには一体どんな風に見えている(聴こえている)んだろうと思ふ。
どんな風に頭の中で鳴り響き、
どんな風に全体が見えているんだろう。
究極のソルフェージュ力。

私はここ数年”精神性”を音楽で表現するにはどうすればよいのか、
ということについて悩み続けています。
リヒテルもネイガウスも、
自身が解釈した感情や情景というものを、
どう音作りしたら表出するのかを熟知していると感じます。
でも、私にはそれがない。
こうしたいと思っても、それをどう音作りしたら、
それらの感情や情景が表出するのか・・・。

リヒテルも天才。
ネイガウスも生まれた時代に恵まれなかったというだけで天才です。
彼らはきっと、感情や情景と音作りという技術が一体化しているのだと思います。
あとは、その通り演奏できるよう技術を磨くだけの練習。
私はというと、それが一体化していないものだから、
ああでもない、こうでもないと、音作りの段階で右往左往してしまう。

生まれ持ってそういう能力がないのだから、
あとは盗んで、ひとつひとつ自分のものにしていくしかない。
そこで、こういう名演を分析してしまうことになるのデス。

私が俯瞰した名演に共通していると感じることは、
経過句の絶妙さです。
これはピアノソロだけでなく、オケ曲にもいえますね。
私は経過句の演奏がすごく下手。
それから楽曲の切り替わりの呼吸、
間を空けるのか詰めるのかの選択、その表現の絶妙さ。
これも私は稚拙でわざとらしくて、全くなってない。

少しでも近づきたいと思うのに、
テクニックも楽譜を読む能力も、
ソルフェージュ力も、感性も、なにもかもが稚拙。
これだけの能力で楽譜を眺めるということは、
どんな奇跡的な体験なんだろうと思ふ。

ショパンのピアノソナタ第3番第3楽章。
楽譜からこの響きを読みとるネイガウスの感性!!
私は、実際にピアノの前に座って、
あぁだこぅだと、実際に弾きながら響きを探します。
でも、ネイガウスは違うのだろうと思ふ。
楽譜を眺めることで読みとった響きなのだろうな、と。
ネイガウスのこの世のものとは思えぬ響きは、
俯瞰していないと作りだせない音だから。

ところで、この演奏、
テクニック的にみなさんの耳を満足させる演奏にはなっていないと思います。
1941年、逮捕・投獄・流刑されたネイガウスは、
大病で悪くした右手の状態を、さらに悪化させたからです。
この演奏は右手に麻痺が残った状態での演奏です。

このショパンのピアノソナタ第3番に対する感想ですが、
私の感想は稚拙すぎるので、
他の言葉をご紹介しようと思います。


「これ以上に優れた演奏を聴いたことがない」(ゴドフスキ)

「第1楽章の柔和でうっとりするほど優美な旋律の第2主題は、
ネイガウスの手にかかると、
いわゆる夜想曲風の詩情とはまったく別のものになる。
彼は、それを格調高く、朗々たる音で奏でるのだ。」(ミリシテイン)

「ネイガウスの弾く第2楽章は驚くほど軽やかで、
完全な響きを持っていた。
さながら真珠のこぼれ落ちる滝のようだった。」(ミリシテイン)

「(第3楽章)耳を傾けよ!これこそは美なるものの行進---
ミューズに付き添われたアポロンの静かな、
しかし厳かな行進である。」(ネイガウス)

「そこには、不吉な地獄の影などなかった。
ネイガウスは、激しい闘争のイメージを喚起し、
緊迫感に満ちた音楽を演奏した。
ロ長調のファンファーレのコーダを、
ネイガウスは”勝関の声、勝利に翻る旗”と解釈していた。」(ボシュニアコーヴィチ)


ピアノ演奏芸術―ある教育者の手記ピアノ演奏芸術―ある教育者の手記
著者:ゲンリッヒ ネイガウス
音楽之友社(2003-06-01)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

ネイガウスの著書。
ピアノ指導者にとって教科書のような本です。
お勧めですヨ。


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emksan at 16:57│TrackBack(0) 音楽/本・CD 

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この記事へのコメント

1. Posted by ゆか   2011年11月12日 08:13
5 初めまして、こんにちは。

7歳になる娘は演奏家の好みが激しく、聴いている
バリエーションがとっても狭いのですが、
ネイガウスの視聴を親子でしてみて、娘は
この人凄いね!上手やな〜!と絶賛してました。

手に麻痺が残りながらの演奏なんだって、
と私が言うと、

「凄いなー、でもそんなに無理して弾かなくてもいいのにね」

と言っていました。
私もネイガウスの演奏初めて聴きましたが、
好きです。
2. Posted by 中嶋   2011年11月14日 13:18
>ゆかさんへ

子どもは素直で面白いですね〜。是非、無理しているわけではなく、弾きたくて弾いているんだよ〜と伝えてあげてくださいネ♪