2010年06月04日

気のパワーで自分を治す?!

中学生の自閉症の男の子。
気持ちがいっぱいいっぱいになると、
自傷行為が出てしまう生徒さんです。

体がビクンッビクンッと固く動き出し、
突然その腕が自分の顔や手を叩き出します。
レッスンではそれほどひどい自傷行為はなくて、
一瞬で終わる上、痛そうに見えるほどのものではないのですが、
ここのところ、どうも精神不安定な様子。


「僕を壊します。
僕の体も、頭も、腕も、手も、内蔵も全部、
全部壊します。」



これらの言葉を聞いているだけで、
胸がキーンと痛み、切なくなってくる私。
ここのところ、こういうことなかったのにな・・・なのデス。

彼が小学生の頃、
思い通りにピアノが弾けないと、


「この手が悪いんだ!!
治してやる!治してやる!!」



と自分の指をあらぬ方向に折り曲げて、
痛めつける彼がいました。
これは見てるだけでも、指が折れそうで怖かった。
彼の手を優しく包み込んで、
その行為を止めてあげることくらいしか私にはできなくて・・・。

先日、最近精神不安なようで、
思春期に入ったからということもあるのだろうけれど・・・と、
お母さんに相談のお電話をしました。
自傷行為が出たのには、原因がありました。
こだわりの強い彼は、そこから抜け出ることができなくて、
自分の気持ちを解消することができないまま、
一週間が過ぎていた様子。

いろいろとお家での様子を伺っているうちに、
お話はお母さんのレッスンの話や、
妹さんのレッスンのお話。
いろぉんな話題で話が盛り上がりました。
そして、ひょんなことから、


「治す」


という言葉の意味が判明したのです。
小学校時代の先生が、
この子がいっぱいいっぱいになって自傷行為に走ったとき、
○○マンに変身して、


「治してあげよう!キー、ガシャン、ガシャガシャッ!!」


と治療するまねごとをして、
彼の気持ちを鎮めていた・・・というのです。
そういうことだったのね〜!!なのです。


というのも、先日彼が自傷行為に及んだとき、
何度も何度も、


「僕を壊すんだ!」


と言うので、


「○○君が壊しても、先生は何度でも○○君を治すよ!」


と言ったのです。
そうしたら、あっという間におさまったんですよ。
そのあとハグしたいな・・・と言うと、
私の胸の中にスゥ〜ッと私を頼るようにもたれかかってきてくれたので、
ぎゅうぅ〜〜っと抱きしめてあげました。
その後は、何もなかったかのように、
すっきりした表情でレッスンを受けてくれて。


そっかそっか。
なんで、あのとき気持ちがおさまったんだろう、と不思議だったのですが、


「治す」


という言葉がキーワードだったんですね〜。
お母さんとお話をするって、だからすっごく大切。
私は障害あるなしに関わらず、
なるべく親御さんと会話する時間を設けたいと考えています。
学校での様子、お家での様子、
いろんなことが見えてくると、レッスンアプローチが柔軟になるからです。
不思議とそういう情報って、何の気なしに話が盛り上がったときに、
入ってくるんですよねぇ。


この子のお母さんにはお電話で、


「今後3年間、思春期ということで、
たぶん気持ちが不安定になりやすいかと思うのだけれど、
○○君はこの期間に、
自分をコントロールする、自分を抑えていくコツみたいなものを
身につけていけたらいいのかもしれないですね〜。」



とお話しました。
その後2、3日かけて、いっぱいいっぱいになった自分を、
どのように抑えていったらよいのか、
何かアイディアはないかな・・・と私なりに考えました。

そして先日、思いついたアイディアをレッスンで試してみることに。
その日の彼も気持ちが不安定で表情も暗く、
突然、体がビクンビクンッ!!
彼の腕が彼の顔にガツンッ!
すかさず今だ!!と思った私は、
彼の手を優しく包み込みながら言いました。


「○○君。先生の手のひらにはね、
気のパワーが宿っているの。
この気のパワーで、○○君を治してあげるね。」



そして、彼の胃の上に手を当て、
気のパワーを送り込むしぐさを10秒。


「治った!!!」


あっという間に、顔が明るくなって、
落ち着きを取り戻してくれたのです。
そこで、すかさず次のアプローチ段階へ。


「先生のこの気のパワーを、
これから○○君に分けてあげるね。
そうしたら、○○君の手のひらにも気のパワーが宿って、
これからは自分で自分のことを治すことができるようになるよ。」



彼の手のひらと私の手のひらを固く握りあわせ、
ググッといかにもパワーを送っているかのように装いながら、


「目をつぶってねっ!!」


と気合い十分の感じで声をかけ、10秒。


「今、先生の気のパワーが、○○君の手のひらに宿ったからね。
これからは自分の気のパワーで治せるよ。」



とお話しました。
彼の表情を見ると、納得してくれているようです。
そしてその後、しばらくレッスンをしていたら再びフラッシュバック。
嫌なことを思い出して、彼の腕がビクンッビクンッと動き出しました。


「○○君。気のパワーだよ。
自分の気のパワーを胃に当ててごらん。」



すかさず、彼の手のひらが胃を押しあてます。
とてもとても真剣な表情。
こんな風にいっぱいいっぱいになった自分を抑えられなくて、
一番辛いのは自分。
そして、少しでもその辛い心境から抜け出たいと、
誰よりも強く願っているのも自分。
こちらが切なくなるほど思いつめたような眼で、
押し当てている手を見つめる彼。


「治ったっ!」


彼のこの言葉を聞いたときは、本当にほっとしました。
自分には治せない・・・と思われたら、
この方法は使えなくなってしまうので。

その後、レッスン中何度か自分の気のパワーを使って、
自傷行為を留める彼がいました。
このアイディアが、どこまで彼の気持ちのコントロールに役立つのか、
これからしばらくやっていってみないとわかりません。
一過性のものかもしれないし、
これをきっかけにして、少しずつ自分をコントロールする術を
身につけていってくれるかもしれない。

でも、何もアプローチしないよりはマシ。
そして、一過性のものだったとしても、
それからしばらくの時間は、気持ちが楽になれるのだから、
しないよりはマシ・・・と思うのです。

その後、お母さんがご自身のレッスンにいらしたとき、
このお話をしました。


「これが定着するには、ここだけじゃだめだと思うんですよ。
お家でも、学校でも、どこでもいっぱいいっぱいになったら、
胃に手を当てて自分を落ち着かせるクセをつける必要があると思います。」


「それから妹さんとお母さんに、
○○君の気のパワーをわけてもらう動作を一度して、
○○君が1人の力でどうしようもないときは、
お母さんや妹さんの気のパワーで手助けしてあげてください。」
とも言いました。


お母さんもこのアイディアを快く受け入れてくださって、
早速学校にも伝えるとお話してくださいました。


このアイディア・・・彼の気持ちを少しでも楽にするのに一役買ってくれたらよいのだけれど。
これから思春期という難しい時期。
お母さんとの連絡を密にとっていき、
お母さんと一緒に思春期の彼を見守っていけたらと思っています。


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emksan at 09:00│TrackBack(0) 障碍&幼児 

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この記事へのコメント

1. Posted by よしこ   2010年06月08日 12:29
涙が出てしまいました。

そう。何度も何度でも治してあげればいいんですよね。元に戻るんですよね。

今週末がコンクールなのですが、少し気持ちが乗ってきません。疲れてるのかな。。。と思います。特に私が乗ってないような気がします。それが娘に伝染しているのかも。。。

何かアドバイスをいただけませんか
2. Posted by 中嶋   2010年06月08日 19:55
> よしこさんへ

気分が乗らないときは、そういう自分に付き合う・・・が私の方法です。ただ、今は本番が目の前に迫っているので、基礎テクニック(ハノンなど)と、弾く曲を音楽的にゆっくり弾く。私だったらそれだけに抑えて、それ以上は練習しないかな、と思います。それよりも、他のピアノ曲を聴く、オーケストラの曲を聴く、などして、感性を新鮮にしてくれる何かを自分に与えるかな、と思います。まずは、閉塞感に陥っている気持ちに空気を入れ替える何かが必要ですネ。
3. Posted by 中嶋   2010年06月08日 19:58
> よしこさんへ

補足です。聴くのであれば、今現在の自分を忘れさせてくれるようなものがいいですよ。コンクールの他の子の演奏よりも、他のコンサートに出かける方が新鮮に感じるのでは〜と思います。また、ピアノ曲そのものよりも、室内楽とかオーケストラとか・・・。全く違う世界を聴く方が、新鮮さが増していいかもしれないですネ。

とはいえ・・・、確か幼稚園のお子さんでしたよネ。大人にとっては新鮮さが増してよいだろうけれど、この年齢の子にコンサートは、どこまで新鮮に感じるのか・・・う〜ん・・・。それよりも、どこか自然のある場所に散歩へ行ったり、川の水に触れたり、花を愛でたり・・・そういう方が効き目があるかもしれません。
4. Posted by よしこ   2010年06月09日 12:47
いつもありがとうございます。

少しずつ自分を取り戻してきてます。

穏やかに過ごそうと思います。