2010年04月27日

変化を感じる

illust-lihgt9ピアノを教えていると、
なんかしっくりこないまま弾いているなぁ、という演奏によく出会います。
とりあえず音符とリズムは合っている。
だけど、しっくりきていない・・・そんな演奏です。

例えば、次のメロディへ移り変わる瞬間。
どんな風に呼吸したらよいものかわからないままに、
とりあえず次の音楽を奏でている、といった具合。

私はよく、


「ここの音は、大きくても小さくても、どっちでもいいんだよ。」


と言うことがあります。
生徒さんの演奏でしっくりきていないのは、
音量ではなく音楽の流れ。
自然な流れが生まれていれば、
次にくる音は、大きかろうが小さかろうがしっくりくることが多いのですヨ。


「この音を大きく弾いて。」


とか、


「ここはもっと小さく。」


なぁんて注意したって、
どれくらい大きくてどれくらい小さいのかという具合探しが大変なだけ。


何故その音を大きく弾きたいのか
何故その音を小さく弾きたいのか



そのことを知っていることの方が大切。
それがわかっていれば、自然に音楽は流れていくものだと感じています。


pakira例えば大きな跳躍。
跳躍の幅を感じて弾けば、自然な呼吸が生まれます。
メトロノームのような機械的なテンポに支配されなくとも、
拍子を感じながら音楽を自然に流すことができる。
そのとき、跳躍直後の音を大きく弾こうが小さく弾こうが、
跳躍そのものを感じて弾いていれば、自然に聴こえるものなんですよね。

そんなときレッスンでは、幅についてお話しすることにしています。
これまで流れてきた順次進行の音たち。
それが突然跳躍することで何を感じるのか?ということ。

楽譜を読むってそういうことだと感じています。
だから、クラシック音楽をやる人は楽譜が読めないとだめなんだなぁ。
楽譜という”模様”に何かが必ず隠されている。
そこには演奏しながら自然に呼吸できるヒントがたくさん散りばめられていて、
それがわかると自由になれる。

演奏が不自然になるのは、
音の幅だったり、ハーモニーの変化だったりを全く感じずに、
音符通りに弾いているだけだから。
それってとっても不自由。
書かれた記号にしがみついて、縛られて、自由を失っている演奏。
楽譜はあくまでも記号。
そこから演奏の自由を得るためには、
「変化」に気づけるということなのかもしれません。


illust-girls4それまでその調の音ばかりで成り立っていたハーモニー&メロディに、
突然違う調の音が現れたとき。
その音には必ず何か秘密があるものです。
それを感じて弾けば、そこに自然な呼吸が生まれ、
自然な表現が生まれ、自分にしかできない表現が生まれる。

こういうときも、


「この音をもっと出して。」

と伝えるよりも、
それまでの音とどう違うのか・・・という
楽譜の読み方について気づきを与えてあげる方が、
ずっとずっと自然な音楽になります。
表現の自由ってこういうことなんだなぁと、
ピアノ講師になったばかりの頃、
悩みまくった答えが今わかる気がしています。

こういったことに気づくと、
自分なりにそれを表現しようという意思が生まれる。
そこから先は、私の指導なんていらないんですよね〜。
本人の自由なのだから。
あ、そっか、そんな風に弾くのか!
という表現に出会えるのが嬉しい♪


pakiraクレッシェンドをかけるとき。
音を大きくしていこうと考えるよりも、
何故そこをクレッシェンドしたくなるのか?について、気づく方が手っ取り早い。
というか、その方が自分らしい演奏になると感じています。
ただ無心にクレッシェンドしてても機械的なだけで、
どうもしっくりこないことが多いから。

そこには契機となる音があるんですよね。
ハーモニーの変化。
メロディの音と音の幅の変化

普通の2度ばかり散りばめられていたメロディに、
突然増音程が入ってきていたら?
そういう音が契機になる。

こういう変化って歌うと一目瞭然。
増音程なんて歌いづらいですもん。
歌っていたら自然とその音程に気づいて、
その音程の幅を感じた歌い方になるハズです。
ピアノだってそう。
まずはピアノから離れて、歌ってみること。
跳躍という幅を体感できる最高の方法は歌うことなんだもの。


双葉もうひとつ、
しっくりこないままに演奏しているなぁ〜と感じる原因のひとつに、
拍子感というものがあります。
特にロマン派以降の音楽のとき。
適当にルバートをかけても自然には聞こえてこない。
なんかヘン。みょうちくりん。
リタルダンドもしっくりこないし、
次の音楽への橋渡しも上手くいかない。

要するに、呼吸がはまってないんですよね。
クラシックの呼吸って、拍子感次第だなぁと感じることが多々あります。
拍子とフレーズと、その兼ね合いで自然な呼吸が生まれる。
フレーズがどんなに歌えていたって、
拍子感がなければ片手落ち。
自然な呼吸は生まれないんですよね。

そんなとき、子どものソルフェージュで指導するのと
まぁったく同じ方法をとります。

2拍子の曲の場合は、膝打ち→手拍子→膝打ち→手拍子。
もちろん2拍目にあたる手拍子は軽めに打ちます。
こんな風に拍子の重みを体感しながら、
上手く弾けない部分を歌うのです。
リタルダンドもこの拍子ありきで歌います。
小さい音は小さく拍子打ち、クレッシェンドはクレッシェンドで拍子打ち。
歌の呼吸は演奏の際の手首の呼吸と同じに。
歌で上手く呼吸ができていない場所は、絶対にうまく弾けない場所だから。
この段階で正しいブレスを手に入れることが大切なんですヨ。

ちなみに、4拍子の場合は、
膝打ち→軽く膝打ち→手拍子→軽く手拍子
という4拍子の動きで歌います。

3拍子でも、2小節ひとつに感じたいときは、
1とと2とと・・・という感じで、
膝打ち→軽く膝打ち→軽く膝打ち→手拍子→軽く手拍子→軽く手拍子
という動きに変化させることもあります。

ちなみに、どうしても1拍刻みで体が動いてしまう生徒さんの場合、
頭を押さえることがあります。(笑)
こういう演奏の仕方を、私は1拍子・・・と呼んでいるのですが、
1拍子ってことは拍子がないってことですネ。
そこで、あまりにも深くそれが定着してしまっていて、
頭が1拍置きに動いているような場合は、頭を止めてしまうのです。
それだけで音楽が流れたりするんだから面白い。

あとは、無理やり動きをつけちゃって呼吸を感じさせる方法。
1小節目は体を前に出していき、2小節目で体を後ろに後退させていく。
そんなに大きく体を揺らすわけではないですが、
フレーズの大きさ、呼吸を体感できる方法なので取り入れることがあります。



木拍子感・音の幅・ハーモニーの変化以外にも、
ノリの変化というものがありますネ。
これまで横に流れるような拍子感だったのが、
キチッキチッとした縦ノリの拍子感に変わる・・・といった具合に。
これも大概、楽譜の模様を見るだけでわかるものです。
でも、音符やリズムにとらわれすぎてしまって、
その変化に気づいていない。

この変化に気づきさえすれば、
変化直前の呼吸が自然に変わって、
調子よく自然な流れで次の音楽へ向かうことができるのですが・・・。
拍にしても、音の幅にしても、音の変化にしても、ノリの変化にしても、
いずれも変化の瞬間っていうのは、
変化を感じる呼吸が生まれて、
その呼吸が自然な音楽の流れを生み出しているんですよね。

ピアノで”表現する”ということを指導するとき、
大切なのは、この変化に気づいてもらうということなんだなぁと、
いつも思わされます。
ああしなさい、こうしなさい、じゃない。
それだと表現の自由がなくなってしまうから。
それに、呼吸抜きで指導したって音楽は流れていかないですもんね。


夏私自身は、しっくりこないなぁというとき、
指揮もどきをしながら歌うことがよくあります。(笑)
どんなノリなのか体現しながら、
拍子感を感じるということを目的にした動きで、あとは自由です。
(だから指揮”もどき”なのですが。)
これをすると、演奏がガラリと変わるのですヨ。
生徒さんとおんなじ、上手く歌で呼吸できない箇所は、
絶対にしっくりきていない場所なので、
なんどもしっくりくるまで歌います。
歌えれば弾ける・・・デス。(笑)


楽譜が読める


これって、いかに気づけるか・・・ってことなんだなぁと感じます。
その気づきに実感が伴っていて、
その気づきへの意識が深ければ深いほど、演奏がよくなる。
私はというと、まだ気づけるようになって日が浅いデス。
気づきが深くなってきたのは、ここ数年ぢゃぁないかなぁ。
まだまだデス。


気づければ気づけるほどピアノの演奏は楽しい。
気づければ気づけるほどピアノの練習は楽しい。


さてさて、お教室も10周年。
私も10周年。
次の20周年を迎えるまでに、
どれだけ気づき体質が作れているか・・・。
目標は今の私より成長していというコト♪
マイペースにね。(*^_^*)


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emksan at 16:25│TrackBack(0) ピアノ/レッスン 

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