2010年01月21日

アーサー王宮廷のヤンキー

先日話題にした小説を読み終えました。


トウェイン完訳コレクション  アーサー王宮廷のヤンキー (角川文庫)トウェイン完訳コレクション アーサー王宮廷のヤンキー (角川文庫)
著者:マーク・トウェイン
販売元:角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日:2009-12-25
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前回の記事のときは、まだ読み始めて3分の1くらいだったから、
なんとなぁく感じたままを書いていましたが、
いやぁ、読後感は読み始めてからの感想とちょいと違う。

面白いのですよ。
だからお勧めの本なのですが、私はかなぁり混乱しましタ。
これが児童書だというのだから驚き。
子どもはどんな風にこの本を読むのだろぉか?
中学生でも難しいよなぁ。

表面をつらつらと読むのはいいかもしれないけれど、
結構グロテスクな話題をサラリと書いているので、
それを読んで子どもはどう思うのか・・・も気になりマス。
子どもにとってはこういうグロテスクさを、
そのまま嫌悪感を伴って読むことができれば、
それで十分なのかもしれません。

でね、読み始めと読後の違いなんですが。
私は最初、よくある啓蒙思想万歳系統の本かなぁと思って、
読み進めていたのですよ。
主人公が理想に燃えて世界を変革していくので。
ただ、ちょいちょい「あれ?」という違和感を感じるのです。
ところどころに、そういった違和感が散りばめられているんですよねぇ。

で、びっくりするのが最後の数十ページ。
いやぁ、主人公をこんな風に持ってくるなんて!なのですよ。
この本は出てくるものすべてを批判しているような本で、
読んでいて拠り所がない。
最後の最後は主人公まで非難の対象。

ドイツのヒットラーも、ソ連のレーニンもスターリンも、
中国の毛沢東も、フランス革命の恐怖政治も・・・。
理想を追い求めていた当初は限りなく美しい。
でも・・・独裁者ってこんな風に生まれていくものなのかも。

それにしてもあれもこれも批判の対象で、
拠り所がないというのは、読んでいてきつい。
貴族を皮肉ったかと思うと、奴隷の悲しい性が描かれたり。
これが児童書かぁ・・・と改めてため息が出てしまう。
子どもの感想文が読んでみたい気がしますヨ。

なんだよなんだよ。
一息つくつもりで読んだ本が、こんなに重たい本だったなんてぇ。(^_^;)
でも、目を背けてはいけないものが、ここには詰め込まれていたんですねぇ。
あぁ、でも背けたくなってしまう。
美しい詩でも読むとするか。(笑)

今日からは、再び須賀敦子の世界へ。
今度は須賀敦子さんが翻訳した詩を堪能したいと思います。

須賀敦子全集〈第5巻〉イタリアの詩人たち、ウンベルト・サバ詩集ほか (河出文庫)須賀敦子全集〈第5巻〉イタリアの詩人たち、ウンベルト・サバ詩集ほか (河出文庫)
著者:須賀 敦子
販売元:河出書房新社
発売日:2008-01-05
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emksan at 15:17│TrackBack(0) 読書 

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この記事へのコメント

1. Posted by 田澤泉   2010年01月29日 14:21
中嶋さん
マーク・トウェインのこの本、昔見た「夢の宮廷」というアメリカ映画が、とことん娯楽仕立てで楽しかったので、原作に挑戦してみましたが、ちょっと今の私の頭には重た過ぎましたなあ。
飛ばし飛ばし読みながら、やっと読了。
それにしても、この本は、タイムスリップした中世のイギリスの愚かしさを書いているようでいて、当時のアメリカ文明や、人間性の本質を考察・批評しているのでしょうか。
2. Posted by 中嶋   2010年01月29日 20:38
>田澤さんへ

> 当時のアメリカ文明や、人間性の本質を考察・批評しているのでしょうか。

私もこのように感じました。マーク・トウェインは開拓時代の人。アメリカを建国した人たちは啓蒙思想家ばかり・・・という印象が私にはあるのですが、文明化を推し進める当時の人たちの風刺・・・という感じもしますネ。結局人間の愚かな本質は変わらない・・・という悲観的な小説という気もしないでもないデスネ。(^_^;)