2009年02月10日

こんなに読みやすくなっていたなんて♪

ホメロスの『イリアス』と『オデュッセイア』を読み返しています。
『オデュッセイア』から読み返し、今は『イリアス』を読んでいる途中です。

いやぁ、それにしても驚いてしまったのですよ。
『オデュッセイア』はそれなりに最初から読みやすかったのですが、
『イリアス』は、最初かなぁり読みにくかったハズなのです。
なのになのに、読み返しの今回は驚くほど読みやすい!
こぉんなに読みやすい本だったのに、
なんであんなに苦労したんだろう?

あの頃の私は、ギリシャ軍がポリス諸都市の寄せ集めだった、
ということすら知らなかったんですよね。
”ギリシャ軍”なんて単語は出てこないんですヨ。
まずはそこで戸惑い「???」となってしまったのです。
その上、ポリス諸都市の名前は知らない都市名ばかりだったので、
ギリシャ軍なんだかトロイア軍なんだか、ちんぷんかんぷん。
 ・・・・ホメロスの『イリアス』は、トロイの木馬で有名なトロイア戦争の話です。
    伝説だと思われていた『イリアス』の記述をもとに、
    シュリーマンが発掘したのは有名な話ですネ。
    但し、現在でも確固たる歴史的事項とはなっていないようです。
    ちなみに、シュリーマンのこの本は、
    薄くて読みやすい上に面白いのでお勧めですヨ。
    古代への情熱―シュリーマン自伝 (新潮文庫)古代への情熱―シュリーマン自伝 (新潮文庫)
著者:シュリーマン
販売元:新潮社
発売日:1977-08
おすすめ度:4.0
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この状態で戦闘シーンなんて読もうものなら、
どっちの軍が優勢で、どっちの軍がやられてるの??
これはギリシャ側?それともトロイア側?と頭を悩ませてしまうだけ。
これでは読んでいる意味がありません。
そこで、記憶力の悪い私は、メモしながら読んでいたんですよね〜。
これは本に挟まっていた、あの頃のメモの一部。


〈ギリシャ軍/ダナオイ・アルゴス・アカイア〉
アガメムノン:アトレウスの子、アカイア軍総帥
アキレウス:ペレウスの子、女神テティスの子
ディオメデス:テュデウスの子



こんなのがザッと続くのですが、
この本を読みにくく感じたもう1つの原因は、
”○○の子”という表現がそこかしこに使われていることでした。
例えば、アトレウスの子であるアガメムノンにアキレウスが語りかける場面。


「誉れも高きアトレウスの子よ、あなたは世にも欲の深いお人だな。」


アトレウスの子というのが誰を指しているのかわからなければ、
アキレウスが誰に話しかけたのかがわかりません。
そこらじゅうに○○の子・・・という表現があるので、
頭が混乱するのですよ。(笑)

ところが読み返しの今回は、
何度も出てくる名前は刷り込み刷り込みで覚えているし、
注釈もほとんど読まずに読み進めることができるので、
すごくすごく読みやすい!
流れを持って読むことができるので、
前回より全体像が把握でき、面白さ倍増です。

ところで、私は『オデュッセイア』より『イリアス』が好きみたい。
私の五感に訴えてくる『イリアス』はすごく新鮮!
『オデュッセイア』は登場人物の1人1人が克明に描かれ、
その人の性格や心情が『イリアス』よりしっかりと伝わってくる作品なのですが、
私の五感に訴えてくるということはほとんどありません。

『イリアス』に使われる比喩表現は、五感に訴えるための効果が絶大。
それに対し『オデュッセイア』では、比喩表現があまり出てこないんですヨ。
どうやら私は『イリアス』の五感に訴えてくる比喩表現が、
たまらなく気に入ったみたいデス。



「兵士らが息せききって駆けつける有様は、
蜜蜂の群が犇めき(ひしめき)つつ、
岩の凹み(くぼみ)から次々に繰り出して、
葡萄の房さながらに一団となり、
春の花に舞い降りながら、
こなたかなたに群をなして飛び交うのにも似ていた。」


「集会の場はわたつみに立つ大波のごとく
-----東の風と南風が父神ゼウスの集めた雲の間を破って吹きつけ、
イカロスの海を湧き立たすその大波にも似て激しく揺れ動く。
あるいはまたその混乱の有様は、西風が豊かに稔る麦の畑に
勢い激しく襲いかかって吹き乱すと、
麦の穂が頭を垂れて靡き(なびき)伏すかのよう。」


また、以前は苦しめられた表現方法ですが、
今ではそれがないと物足りないとまで思うようになった枕詞(まくらことば)。
これは『イリアス』だけでなく『オデュッセイア』でも使われていますが、
名詞の前に、それぞれの性格を表現する枕詞がつくんですヨ。
それは神様の名前にもつきますし、ポリス名や人名にもつきます。


アカイア勢→脛当美々しき(すねあてびびしき)アカイア勢、髪長きアカイア人
ゼウス→雲を集めるゼウス、遥かに見晴るかすクロノスの子
ヘレ→白い腕(かいな)の女神ヘレ、牛眼のヘレ
アキレウス→脚速きアキレウス、駿足のアキレウス
アガメムノン→馬を駆る豪勇無双のアトレウスの子、軍勢の牧者アガメムノン
アテネ→眼光輝くアテネ
オデュッセウス→機略縦横のオデュッセウス、堅忍不抜のオデュッセウス



この枕詞があることによって、神や人物の特徴が鮮やかになるんです。
オーラというか雰囲気というか、
五感で登場人物を感じることができるんです。
五感で登場人物を感じるなんて経験は、
なかなかないことなので気に入っているんですヨ。

それから、私が一番好きな言葉。
夜が明けたことを表現する常套句です。


朝のまだきに生まれ指ばら色の曙の女神が姿を現わすと・・・


夜が明けるたびに出てくる常套句。
でもね、飽きないんですよ。
この言葉が出てくるたびに、朝を感じます。
清々しい朝のかおりを五感に感じることができるんです。
すごく音楽的!

ところで、最近気づいたことなのですが、
私って五感に訴えてくる芸術が好きみたい。
音楽でいえばドビュッシー。
ドビュッシーを弾いていると、五感で弾いているような気がしてきます。
ドビュッシーの音楽は映像的で、
映像的ってことは自然の香りや、風が頬に触れる感触や、
水の冷たさや、日差しの暖かさなどを感じるってこと。
絵画でいえばモネ。
あの光の微妙な変化、まるで香りまで漂ってくるよう。
モネは私が一番好きな画家なんですヨ。

ってことは、この映像的な『イリアス』を何度も読み返していくうちに、
私のドビュッシーの演奏にも深みが出てくるってことかしらん?
そう想像すると楽しくなるので、そういうことにしておきましょっ。


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emksan at 13:55│TrackBack(0) 読書 

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