2009年01月14日
作曲のレッスン
SYOTAくんのレッスン。
作曲のレッスンとはいえピアノレッスンのプラスアルファ、
たいしたレッスンではないのですヨ。
私は作曲専門ではないですし、
相手のSYOTAくんは自閉症の男の子。
通常の作曲レッスンでは通用しないだろうし。
ってことで、手作りの私なりのレッスンとなるのデス。
いつも彼の個性を伸ばせるレッスンを心がけたいと思っているのですが、
果たして私のレッスンは理想的なレッスンになっているのだろうか?
いつも自問自答しながらのレッスンです。
SYOTAくんの作品は、とても素敵な曲が多いのですが、
まだまだ不思議ちゃんです。
彼の個性を生かしたまま、この不思議ちゃんを脱出できないものか。
これがここ2,3年の課題でした。
2年前の彼の作品は、
4小節ごとに曲想が変化して、
サビのオンパレード・・・みたいな作品ばかりでした。
それぞれのサビはとても美しいのに、
パッチワークのようにそれらを繋ぎ合わせているので、
聴いているほうは「???」となっちゃうんですよね。
せっかく素敵なサビを思いつくのに、これはもったいない。
そこで、ここ2,3年やってきたのが
1つの曲想をアレンジしてみるというアプローチと、
構成へのアプローチでした。
まずは”アレンジ”という概念を伝えるのが大変デシタ。(^_^;)
なかなか伝わりません。
これではABAという曲を作れても、ABA’という曲は作れません。
なんとかそこを乗り越え、
なんとなく一体感を感じる作品を作曲できるようになってきたのは最近のコト。
でも、突然変異のように曲調が変わるので、
どうしても不思議ちゃんを抜け出せずにいます。
そこで、ここ数ヶ月は、”繋ぎ”に焦点をあててアプローチしています。
最近自然に移行する・・・という意味合いがわかってきたようで、
そこを注意すると、
私には逆立ちしても真似できないような経過句を作曲してくれるようになりました。
もちろん、まだ”注意する”というアプローチが必要で、
何も言わなくてもそれができる、というところまではいっていないのですが。
先日SYOTAの部屋にアップした楽曲。
何故不思議ちゃんに聴こえるんだろう?と改めて考えてみたのですが、
1つの楽想が短すぎるからなんぢゃなかろうか・・・と思うに至りました。
以前は1つの楽想を4小節以上続けることができなかったSYOTAくん。
それが8小節になり、今では8小節じゃ足りないくらいになったんだなぁと。
いつも構成へのアプローチで、
作曲前に小節数をある程度決めているのですが、
その決め方が、彼の楽想に合わなくなってきたのを感じたのです。
もう少し規模の大きな曲、1つの楽想16小節くらいが、
今のSYOTAくんには丁度よいのではないか、と。
そこで、これらを課題にした冬休みの宿題を出すことにしました。
かなぁり高度なことを要求してしまいました。
でもね、昨日のレッスンですごくイイ感じの曲を作曲してきてくれていて、
そりゃぁ、驚いちゃったのですよ。
課題に沿っていない部分があったので、
それは手直ししてくるよう宿題に出したのですが、移行部分はとってもいい感じ。
今回の課題は、物語に曲を付ける・・・というものでした。
どんな物語がいいかなぁ、とかなり探したんですヨ、素材を。(笑)
私には物語を作るような才能はないですし、
その上、楽曲構成しやすい物語を選ばなきゃならない。
そこで見つけたのが、オルペウスの物語でした。
まずは、オルペウスが冥界へ行くまでの物語。
序曲のようなものですね。
これを作曲してもらうことにしました。
【イントロ/4小節以内】
竪琴の調べと悲しい歌が遠くの山から聞こえてきます。
心を引き裂かれそうになるほどの悲しい歌声。
声の主はオルペウス。
愛する人を永遠に失ってしまった竪琴の名手。
【A/16小節以上】
かつてオルペウスの竪琴は、明るく楽しい音色を響かせていました。
彼が竪琴を奏でると、森の動物たちはこぞって集まり、その音色に耳を傾けたものでした。
あるとき、オルペウスは愛らしい妖精(ニンフ)エウリュディケに出会いました。
二人は恋に落ち、結婚をしました。
二人は深く愛し合い、幸せな日々が続くかに思われました。
しかし、二人の幸せはあっという間に失われてしまうのです。
【B/16小節以上】
ある日のこと。野原で花摘みをしていたエウリュディケは、毒蛇を踏んでしまいました。
毒蛇は彼女のかかとにかみつきました。毒蛇の毒がエウリュディケの体を襲います。
エウリュディケは摘み取った花を手にしたまま死んでしまいました。
【A1/16小節以上】
オルペウスは深く悲しみました。
エウリュディケとの楽しかった日々を、思い出せば思い出すほど悲しみは増してゆきます。
エウリュディケは死んでしまい、もうオルペウスの前にはいないのです。
【コーダ】
とうとうオルペウスは死んだエウリュディケを取り戻そうと、冥界へ行こうと決心します。
冥王ハデスを説得し、エウリュディケを取り戻そうと!
作曲の課題は”移行部分”です。
そこで、SYOTAくんにわかりやすいように、
次のような注意事項を書いて渡しました。
突然曲調が変わるのも、驚きがあって面白いものです。
しかし、突然ばかりでは落ち着きのない曲となってしまいます。
●イントロ→A
ここは自然に移行させましょう。
たった4小節しかないイントロから、突然曲調が変わるのは落ち着きがなさすぎます。
●A→B
突然に曲調が変わってもおかしくない場所です。
もちろん、自然にBへ移行させてもよいのです。
どちらか好きなほうを選びましょう。
●B→A1
この規模の曲で、2回も3回も突然曲調が変わるのは落ち着きがなさすぎます。
A→Bで突然曲調を変えたのであれば、ここでは自然に移行するほうがよいでしょう。
しかし、A→Bの変わり目が自然で突然さを感じないものだったなら、
ここで突然A1になる、という驚きを演出するのもよいでしょう。
●A1→コーダ
【自閉症/本---Amazon.co.jp】
A1と全く違う音楽として作るのではなく、AやA1で使った音の流れを使って、コーダを作りましょう。
A1の音楽から自然にコーダへ流れていくことが大切です。
SYOTAくんに伝える難しさが、現れている文章ですよね〜。(^_^;)
自然に移行するということは、とても大切なことですが、
急に場面転換するということもあるわけで・・・。
その時々の使い分けがあるのだということを伝えたかった。
これが絶対だよ!と教えてしまうと、
自閉症の彼は、真面目にそれを受け入れすぎてしまうので、
それだけになってしまう。
そうすると、楽曲が偏ってしまい、彼の個性をつぶしてしまい兼ねません。
ここいら辺のバランスの取り方、難しいですぬぇ〜。
とはいえ、昨日のレッスンではここら辺はクリアしてたのですよ。
この感覚を身につけつつあるのかもしれません。
ということで、昨日のレッスンでは課題以外のことを注意しました。
Bの部分の曲想が、明るすぎたんですよね〜。
そこで、もう一度物語りを読み解き、
毒蛇がエウリュディケに噛み付く瞬間って、
どんな感じだと思う?ピアノで表現してみて!とお願いしました。
いやぁ、すごいです。
その瞬間にぴったりのハーモニーをジャン!と鳴らしてくれました。
次に難しいのがA1。
Aは明るい音楽だったにも関わらず、
A1にはオルペウスの悲しみが入っていなければならないのだから。
その上、SYOTAくんはそのままAを持ってきていてA1になっていなかったのです。
そこで、悲しい響きを一緒に考え、
長調の響きの中に、短調の響きを入れると悲しくなる・・・という話をし、
その場でいろいろ試してもらいました。
SYOTAくんのすごいところは、この試しの段階で、
即興でパラパラパラパラ素敵なハーモニーを奏でてしまうことです。
私にはとてもとても真似できないぃぃ。<(;~▽~)
ってことで、音に関しては全く手出しできない私です。(笑)
そして、最後はコーダ。
SYOTAくんのコーダからは、オルペウスの決心を全く感じさせない内容だったので、
ここがどのような内容になっているのか、もう一度お話し、
どうしたら”取り戻すぞ!”というオルペウスの気概と決心を感じさせる音楽になるのか、
いろいろ試しました。
ここは宿題にする必要はなく、その場で書き直し終了。
この作品が仕上がったら、
オルペウスの続きを作曲してもらう前に、
今度は”アレンジ”という概念を、
もう一度見つめ直すレッスンをしようと考えています。
”動機”について説明し、それらをどう曲に取り入れていくのか、
といったあたりを突っ込んでやっていきたいなぁと。
しばらくこれをテーマに試作してもらって、その後、オルペウスの続きかな・・・。
SYOTAくんの音を、あーでもないこーでもない、
と手出しすることはSYOTAくんが嫌がるのでできませんが、
それがかえっていい結果を生んでいる気がしている今日この頃。
私に作曲の才能がないというのも、
彼の個性を育てる上で、実はイイことだったんぢゃないかとまで思う始末。(笑)
なんとも自分勝手な先生ですぬぇ〜。<(;~▽~)
でもね、本当は作曲を習いたい子は
作曲の先生に預けるべきというのが私の考えなのです。
自閉症の生徒さんだからとはいえ、
果たして彼をいつまでも私の手元に置いていていいものなのか。
難しいところですよね。
その見極めを誤らないようにしなきゃ、といつも思います。
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この記事へのコメント
いつも勉強になっています、ありがとうございます。
文章長すぎですよね。<(;~▽~)
長い文章にも関わらず、
最後まで読んでいただきどうもありがとうございます。
・・・リンクですが、せっかく書いていただいたコメントをセールスと勘違いされてしまいそうな内容のサイトだったため、リンクは外させていただきました。ご了承ください。m(__)m