2008年09月27日

褒めてあげるコト

01558前のお教室で自信がなくなってしまった子。
頭がとてもよくて、毎日しっかり練習をして、
すごく力のある子にも関わらず、自分に自信が持てない・・・。

褒める作戦を決行しましょう!





と、お母様とのやりとりの中で決まりました。
今の時代、メールがあるのでとても便利。
お母様とのコミュニケーションを密にとりやすいからです。
レッスン中はレッスンに夢中になってしまい、
なかなかお母様とお話する時間が持てません。
でもメールなら、お互いの気持ちを整理して、
きちんと言葉にした状態でやりとりができる。
普段のやりとりの中で、お互いの信頼関係が築けていれば、
表情のわかりづらい言葉だけのやりとりであるメールも、
誤解を招くことなく、いいコミュニケーションツールになります。

このメールのやりとりの中で、
お母様に私の失敗談などをお聞かせしました。
そして、思ったのですよ。

「褒めるのが下手なんですよ〜。」

とおっしゃるお母様、結構いらっしゃるなぁと。
そして、私自身褒めるのを忘れてしまって、
お子さんのやる気を失わせてしまった失敗談を持っています。
そこで、このお母様にお送りしたメールの一部、
私の失敗談と、褒めるということについてを、
ここにコピーしちゃおうと思ったのデシタ。


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yotuba2この文章に出てくる私の失敗談の生徒さんは、
発達障害のある子とない子が混ざっています。
このメールのやりとりをした生徒さんには、障害がありません。
この文章に出てくるBちゃんにも障害はありません。
発達障害のある子もない子も同じ内容で出てくるということは、
要するに、障害のあるなしは関係ないってことなのデス。

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〜略〜
褒めることにしても、義務感にかられてお母様ご自身が苦しくなってしまっては・・・と思います。ということで・・・またまた長いメールになってしまいますが、私の失敗談を聞いていただけますか?以前、褒めたいのに褒められない!というジレンマにかられて空回りしてしまった子のことです。生徒さん自身も辛い思いをしたでしょうし、何よりも私が辛かった。でも、あることをきっかけに褒めることができるようになって、そうしたらとってもラクで、しかもとってもとってもその子とのレッスンが楽しくなったんです。

その子は、お母さんもご存知のA君です。あの子が家へやってきたのは中学1年のときのこと。小学6年間通常の学校に通っていて、お母様は発達障害があると知らないまま6年間を過ごしてきました。障害がある、ない・・・のボーダーラインにいる子なので、わかりづらかったんだと思います。でも、ボーダーラインとはいえ、障害のあるなしにはやはり明らかな一線があるのですよ。だから、本人はとても辛かった。学校へ行っても、何もわからない、何もできない、誰にも理解されない。それで、不登校になって、ほとんど学校へ行けなかったそうです。

01573「なんとかこの子に自信を付けさせたくて。お友達みたいにピアノが弾けるようになってくれたら。」と、中学に入って落ち着いた頃、私のお教室へやってきました。私もお母様の意向を受けて、また、実際にA君と接していて、なんとか自信をつけさせてあげたい、と強い思いにかられました。「できた」ということが自信に繋がります。でも、がんばれないとなにもできない・・・。最初の3ヶ月、ここですごく空回りしてしまったんです。ちょっとだけ、本当にほんのちょっとだけがんばってくれれば、できるようになって自信に繋がるのに!そういう空回りでした。

ちょっとしたことでもプレッシャーになってしまい、不安げなつらそうな表情になるので、少しずつがんばることを減らしていきました。最初は毎日10分の練習。次に週に4日→3日→2日→1日。ちょっとがんばるの「ちょっと」とは、A君にとって一体どれくらいのものなのか?その3ヶ月の間に、A君は学校も辛くて不登校になったりもしました。がんばることのできない子だったからです。中学の先生もそれがわからなかったのでしょう。発達障害の子の学校って、かなぁり子どもたちにがんばることを強いるのです。そうやって子どもたちを強くしていき、そうやって社会に少しでも適応できるように指導していくからです。でも、A君にはそういう経験がありませんでした。ただただ引きこもっていた6年間だったのですもの。

不登校になると、何も口にしなくなるA君。ごはんも喉を通らず、部屋にこもったまま。お母様はとにかく病気にならないか、このまま死んでしまわないか・・・不安な日々を過ごすことになります。もちろん不登校の時期は、外へ出られないわけですから、ピアノのレッスンへも来られなくなります。そういうA君を見て、私はやっと気付いたんです。A君にとって「がんばる」ということは、レッスンに来ることそのものだったのだ、と。家での練習はまだまだ先のこと。まずは、レッスンに来たことをたくさん褒めてあげる。レッスンに来るたびに「よく来たね。」とシールをあげました。レッスンに来るとシールがたまる、という方法に切り替えました。(以前は、家で練習してきたらシールをあげる・・・だったので。)

褒めたくても褒められない、なんとか自信をつけさせたいのに、褒められない自分がいる・・・そんな風に空回りしていた3ヶ月からの卒業でした。レッスンで褒める回数が多くなりました。あれもこれも褒めたくなることばかりになりました。何故あの3ヶ月、これらのことに気付かなかったのか?こんなにも褒めたくなることがあったはずなのに!家で全く練習しない、ということにこだわりすぎていた私の視野が狭かったあまりに、A君のいい部分を見逃してしまっていたのだなぁと思います。もうA君も高校生。最近では、ほんの少しの課題であれば家でやってきてくれるようにまでなりました。少しずつではありますが、自分に自信が持てるようにもなってきました。不登校の回数が減りました。不安げな表情が激減しました。自信のある言動が増えました。そして、レパートリーも増えてきて、ピアノを弾く楽しみにも目覚めてくれました。

00477何を褒めるのか?って難しいですね。それぞれの子によって違う。障害のあるなしに関わらずそうなのですが、出来る子であれば出来る子であるほど、褒めるのが難しい。「もっとできるはず」という思いが募ってしまうからです。Bちゃんも頭のいい子(お教室のお友達)ですよね。だからね、褒めるのを思わず忘れがちなんですよ。私もお母さんも。そうすると、気の強い率直なBちゃんは、「私も褒めて!!なんでお姉ちゃんばっかり褒めるの!私だってがんばってるもん!!」と大きな声で叫びます。そうすると、私もお母さんも「そうだった、そうだった!」と反省するのです。実は、これはBちゃんだけではなくお姉ちゃんについてもいえること。お姉ちゃんは一見物分りが良さそうな、程度の軽い障害に見えがちです。お母さんも「なんでそれくらいわからないの?」と思ってしまうほど。わかりそうでわからない・・・の障害のラインがとってもあやふやで微妙なんですよね。だから、思わず「もっとがんばって!」という態度で接してしまう。でも、本人にしてみたら、もうすでにいっぱいいっぱいのところでがんばっているわけです。それが見えにくい。

障害のあるなしに関わらず、このがんばりの見えにくさ、できるできないのラインの見えにくさっていうのは、出来る子であれば出来る子であるほど見えにくいものなのだなぁと感じます。出来る子だと、「もっとできるはず」という思いの方が先行してしまって、褒めるのを忘れてしまう。私も何度このことで失敗を繰り返していることか!!!もう、反省だらけです。でも、ありがたいことに、これまでのお教室の雰囲気のお陰で、生徒さんの素直な表情、素直な言動が生きているので、そこから自分の狭い視野や間違った観点に気付かされるのです。生徒さんたちの素直さが見られなくなったら、私は路頭に迷ってしまうだろうな・・・と思います。彼らの素直な率直な態度があるからこそ、気付くことができるのですもの。

Cちゃん(このメールの生徒さん)は、すごくすごく頭のいい子です。理解力が抜群!!だから、思わず私も「もっとできるはず」と思ってしまう。そういう自分をいつもとても危険だと感じます。Cちゃんの表情や言動に敏感になっていないと、CちゃんのがんばりやCちゃんの精一杯に気付かないままレッスンを進めてしまい兼ねない。テレマンのガボットのときの私は、まさにそういう状態だったと反省しています。お母様に相談して、レッスンでテレマンを中心に(家での練習を1人でやるには難しかったので、レッスンで一緒にやってあげる、という意味)・・・・に切り替えたとたん、私自身たくさん褒めることのできる自分がいて気持ちが楽でしたし、レッスンも生き生きと楽しいものになった上、Cちゃんも前向きになってくれたように思います。

01562これからもこういう失敗がたくさん出てくるかと思います。でも、こうやって密にお母さんとコミュニケーションをとることで、家でのCちゃんの様子を伺いながら、Cちゃんが伸びやかにピアノに向かい、自分の能力を過小評価するのではなく、自分で自分を認めてあげることのできるCちゃんへと導いていくことができたら・・・と思います。Cちゃんはとってもとっても頭がいい子なので、私もお母さんも「もっとがんばれそう!」と思いがちで、立ち止まって褒めるのを忘れてしまいがち。だから、2人でブレーキを掛け合いましょう!お母さんも私にブレーキをかけてくださいね。テレマンのガボットのときのように・・・。

それでは また♪褒める作戦、一緒に炸裂させて楽しんでいきましょう!!!


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emksan at 07:00│TrackBack(0) ピアノ/レッスン 

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この記事へのコメント

1. Posted by NY   2008年09月27日 12:11
こんにちは。はじめまして。

いつも楽しくブログを拝見しています。
ブログを読んでいて、長島一茂選手(だったと思います)の発言を思い出しました。たしか、「みんなあと少しとか足らない部分は見えているんだけど、そこに至るまでに努力して達成した部分は見えにくい」という趣旨の発言だったと思います。


その子に本気になればなるほど、あと少しの部分を達成させてやりたくてその部分に集中してしまいますが、実はその部分を達成するための力はそれまでの努力で埋められてきた部分をほめることによって生まれるのかも知れませんね。
2. Posted by 中嶋   2008年09月28日 11:47
>NYさんへ

はじめまして!コメントどうもありがとうございます。一茂選手がそんなことを言っていたのですね〜。本当に、その言葉に共感させられます。10歩先を目標にしていても、1歩歩むと、11歩先が見えてしまう。2歩進むと12歩先が見えてしまって・・・。そうやって、自分を褒めることすら忘れてしまいがちなのがピアノですネ。奥が深いので、いくらでも求め続けることができちゃう。

自分のがんばりを褒めてあげられたり、子どもたちの一歩を褒めてあげることのできる自分がいると、とても柔らかな気持ちになれます。NYさんのおっしゃるように、一歩一歩の達成感(1歩1歩を褒めてあげること)が、その先を達成するための最大の力になるような気がしています。