2018年07月02日

もっと知りたい!フォルテピアノ・アカデミーSACLA(9)



今年の夏、歴史的な幕開けになるであろう第1回フォルテピアノ・アカデミーSACLAが開催されます。フォルテピアノの第一人者である小倉貴久子さんがプロデュースする、古典派時代のフォルテピアノにどっぷり浸れる贅沢な3日間です。主催は《知っておきたい!トレンド古典派音楽》の塚田聡さんが代表のメヌエット・デア・フリューゲル

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会期中開かれるコンサートはどれも事前予約不要。当日急に思い立って足を運ぶのもアリという、とても気軽なコンサートです。アカデミー中日となる21日は2つのコンサートがあるのですが、今回はそのうちの一つ、入場無料のランチタイムコンサートをご紹介しましょう。

《第2回 ランチタイムコンサート》 
演奏:毛利美智子、加藤美季(フォルテピアノ)、圓谷俊貴(テノール)
2018年7月21日(土)13:15~13:45 
入場料:無料 
使用楽器:ブロードウッド製スクエアピアノ

使用楽器は、第5回でご紹介したスクエアピアノです。当時ブルジョワの家庭では、自らが演奏するという形で、このようなプログラムが愉しまれていたのではないでしょうか。娘のピアノに合わせて父親が歌ったり、お客様がいらっしゃると「ほら、何か弾いて差し上げなさい。」と母親に促されて娘がピアノを披露したり。家庭内に音楽がある光景は、日常だったに違いありません。

J.C.バッハ 1735-1782
 クラヴィーアソナタ イ長調 作品17-5 (毛利)
G.F.ピント 1785-1806
 グランドソナタ ハ短調 (加藤)   
 歌曲「自然への祈り」「羊飼いは清らかなニンフを愛した」(圓谷&毛利)
J.ハイドン 1732-1809
 歌曲「船乗りの歌」(圓谷&毛利) 
 
ヨハン・クリスティアン・バッハは、J.S.バッハの末息子。シリーズ演奏会《小倉貴久子のモーツァルトのクラヴィーアのある部屋》の第3回と第30回で取り上げられた(第30回は《J.C.バッハとW.A.モーツァルトのクラヴィーア協奏曲》としてCD化)、モーツァルトが最も影響を受けた作曲家です。「ロンドンのバッハ」と呼ばれ、ロンドンではスクエアピアノの普及に貢献しました。
  
ジョージ・フレデリック・ピントは、前述のシリーズ演奏会第26回に取り上げられている作曲家です。イギリスに生まれた早世の天才で、なんと20歳という若さでこの世を去ってしまいました。ハイドンをロンドンに招いた音楽興行師として有名なザロモンは、「もし彼が生きながらえていたならば、イギリスは第2のモーツァルトを生み出す名誉を得たであろう」と評したそうです。
  
プログラム最後はハイドンの歌曲。入場無料のランチタイムコンサートでこの贅沢なプログラム! これはアカデミーだからこそではないでしょうか。

《塚田 聡さんのミニコラム》

このスクエア・ピアノによるコンサートで取り上げられる曲は全てイギリスで書かれた作品になります。中嶋さんがおっしゃられる通り、イギリスでは特に新興のブルジョア市民たちによってこうした曲が広く演奏され、また作曲家自身の演奏により〈ハノーヴァー・スクエア・ルームズ〉など、市民の集う気軽なコンサート会場で披露されていました。

このコンサートで演奏する、毛利さん、加藤さんは現在、東京藝術大学の大学院で、フォルテピアノを専門に小倉貴久子の元で勉強している学生です。圓谷くんは、藝大にまず歌で入学し、その後、チェンバロ科で入り直すという才能の持ち主。今でも小倉貴久子の元で熱心に鍵盤楽器演奏を学んでいます。

ところで、リート歌手にフォルテピアノが密かに好まれていることをご存知ですか?繊細な表情を出したいのに、爛々と鳴る現代のピアノにかき消されてしまう声。息を混ぜたり、ささやいたり、ため息をついたり、そんな表情に寄り添ってくれるフォルテピアノと共演したいという歌手が少なくないのです。

また、木目で小ぶりのフォルテピアノの前に、ヴァイオリンやチェロを置いてみましょう。想像するだけで素敵なアンサンブルになりそうでしょう? フォルテピアノは歌や他の楽器とのアンサンブルで、その良さがより発揮される楽器なんです。

フォルテピアノ・アカデミーSACLAでは、できる限り、次回からも様々な楽器とのコラボレーションを楽しみたいと考えています。

アカデミーリンク用画像

《フォルテピアノ(ピアノ指導者限定)》
FBに非公開グループを作成しています。小倉貴久子さんもメンバーに加わってくださっている、とても贅沢なグループです。フォルテピアノについてよく知らないという方も大歓迎。投稿を読むだけでも面白いグループなので、どうぞお気軽にメンバーリクエストしてくださいね♪
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2018年06月29日

知っておきたい!フォルテピアノ・アカデミーSACLA(8)



今年の夏、歴史的な幕開けになるであろう第1回フォルテピアノ・アカデミーSACLAが開催されます。フォルテピアノの第一人者である小倉貴久子さんがプロデュースする、古典派時代のフォルテピアノにどっぷり浸れる贅沢な3日間です。主催は《知っておきたい!トレンド古典派音楽》の塚田聡さんが代表のメヌエット・デア・フリューゲル

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このアカデミーでは、会期中毎日コンサートが開かれます。聴講生は、1日の聴講費4000円に同日のコンサート代も含まれているので、とってもお得。連載8回目となる今回は、アカデミー1日目に開催される《第1回オープニング・コンサート》をご紹介しましょう。

《第1回  オープニング・コンサート》 
演奏:小倉貴久子
2018年7月20日(金)11:00~12:00
入場料:2,000円
使用楽器:A.ヴァルター、J.L.デュルケン、クラヴィコード

使用楽器は、この連載第4回第6回に登場した楽器です。塚田さんが第4回のミニコラムで「デュルケンは軽やかに転がるモーツァルトの音楽そのもののような楽器です。ヴァルター・モデルの楽器は、ベートーヴェンがウィーンで最初に手にしたピアノに近いもので、デュルケンより音がしっかりとしてきます。」とお話しくださったように、ヴァルターでベートーヴェンを、デュルケンでハイドンとモーツァルトを、というプログラム。

〔デュルケンで〕
J.ハイドン 1732-1809  
 クラヴィーアソナタ ニ長調 Hob.XVI:37より第1楽章
W.A.モーツァルト 1756-1791
 クラヴィーアソナタ イ長調 K.331《トルコ行進曲付き》

〔クラヴィコードで〕
C.Ph.E.バッハ 1714-1788
 「わがジルバーマン・クラヴィーアとの別れのロンド」 ホ短調 Wq.66 (H.272)

〔ヴァルターで〕
L.v.ベートーヴェン 1770-1827
 クラヴィーアソナタ「幻想曲風ソナタ」嬰ハ短調 作品27-2《月光》

トルコ行進曲は、ぜひみなさんに一度は聴いていただきたい1曲。耳慣れた、流れるようなトルコ行進曲に「何故これが行進曲なんだろう?しかもトルコ風って?」と不思議に思われている方、きっと小倉さんの演奏を聴いたら「なるほど!これぞトルコ行進曲!」と腑に落ちるだろうと思います。

デュルケンとヴァルターの間に挟まれたクラヴィコードによる演奏は、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハの作品です。エマヌエル・バッハはJ.S.バッハの次男。チェンバロよりクラヴィコードやフォルテピアノを愛用したといわれ、なんとクラヴィーアの独奏曲を200曲近く作曲しているそうです。
  
今回演奏される「わがジルバーマン・クラヴィーアとの別れのロンド」は、シリーズ演奏会《小倉貴久子のモーツァルトのクラヴィーアのある部屋》の第31回でも取り上げられた曲目で、悲哀がひしひしと伝わってくる曲です。クラヴィコードの繊細な響きと、ベーブンクと呼ばれるビブラート効果が存分に味わえますよ。

最後のヴァルターによるベートーヴェン第1楽章は、ベートーヴェン時代のフォルテピアノだからこそ実現できるペダリングに注目! そして、小倉さんの勢いある第3楽章も聴きどころの一つとなるでしょう。魅力あふれるプログラムに、ワクワクが止まらなくなります♪
  
《塚田 聡さんのミニコラム》

〈第1回フォルテピアノ・アカデミーSACLA〉のオープニング・コンサートは、小倉貴久子のトークつきのコンサートになります。 ここで初めてフォルテピアノの音を耳にされる方もいらっしゃるかもしれませんね。

最初に聴くフォルテピアノの音はどのように感じられるでしょうか。小さな音に物足りなさを抱かれるかもしれません。

しかし、リズムの生き生きと跳ねるハイドンの音楽、トルコの軍楽隊のもつジャラジャラとした鳴り物を模した音楽がピアノから飛び出してきたら、防備することなく捉えてみてください。その等身大の音楽の中には作曲家の想いがたくさん込められているはず。

カール・フィリップ・エマヌエル・バッハは興が乗ると、涙を流し涎を垂らしながらクラヴィコードの前に座り即興を奏で続けたと伝えられています。 クラヴィコードはとりわけ小さな音の楽器ですが、耳が慣れてくると、心が共振して体の細胞の隅々まで情感が行き渡るような感じを覚えるはず。

ベートーヴェンの月光ソナタ。第1楽章はダンパーペダルを解放し続けながら演奏します。「そんなこと可能なの?」「ベートーヴェンの指示なの?」・・・小倉貴久子のトークと演奏で秘密が明かされることでしょう。

最終楽章は、ヴァルター・ピアノがフルに鳴り、ベートーヴェンの情熱が露わになります。この100%の全力感が、フォルテピアノを用いた演奏の大きな魅力。ぜひ体感してみてください!

アカデミーリンク用画像


《フォルテピアノ(ピアノ指導者限定)》

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2018年06月25日

もっと知りたい!フォルテピアノ・アカデミーSACLA(7)



今年の夏、歴史的な幕開けになるであろう第1回フォルテピアノ・アカデミーSACLAが開催されます。フォルテピアノの第一人者である小倉貴久子さんがプロデュースする、古典派時代のフォルテピアノにどっぷり浸れる贅沢な3日間です。主催は《知っておきたい!トレンド古典派音楽》の塚田聡さんが代表のメヌエット・デア・フリューゲル

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クラヴィシンバルムってご存知ですか? 私は今年1月《藝大130周年記念音楽祭 未来永劫》という企画で、初めてこの楽器を知りました。15世紀の楽器とのことですが、とにもかくにも情報がない!アカデミー公式サイトには、

打弦タイプのクラヴィシンバルム(久保田彰製作)c~c3

とあるのですが、ということは打弦タイプではないクラヴィシンバルムもあるということなのでしょうか? しかもアカデミーで使用するクラヴィシンバルムは、製作者である久保田彰氏の「想像と経験」から作られた楽器とのこと。本当に製作されていたとしたら、ピアノの最も古い祖先になるそうなのですが、私にはこれ以上この楽器について語る術がありません!
  
ということで、ここは塚田聡さんのミニコラムにすべてを託そうと思います。あとは、当日のお楽しみ!ですね♪ 

《塚田 聡さんのミニコラム》

1440年ごろにブルゴーニュ公国ツヴォレのアルノーさんが残した鍵盤楽器の平面図がありまして、これが実際に作られたものならばチェンバロの祖先!と近年注目が集まっています。
  
平面図の余白には3種の発音機構の図と説明文が。何が書かれているのか私には判読できませんが(なんでも暗号じみているという話)、どうもそこには撥弦システムだけでなく、打弦システムもあるようなのです。 世界中のチェンバロづくりがこの平面図に興味を示し、想像をふくらませながら復元に取り組んでいますが、我が国の誇るメーカーである久保田彰さんもその発明心をくすぐられたようです。
  
久保田さんは撥弦と打弦の2種類のクラヴィシンバルム(clavisimbalum)を復元させました。当アカデミーは、打弦にあくまでこだわっていますので、打弦システムのクラヴィシンバルムのみお持ちいただきます。 詳しいことは私にも分かりません。アカデミー期間中、7月21日の17:30からの久保田彰さんとともにお届けする小倉貴久子のコンサートで、どこまでその秘密が明かされるのか!私自身、楽しみにしているところです。


IMG_2089
《会期中のコンサート》
我こそがピアノの発明者!コンサート
2018年7月21日(土)17:30開演(1時間)
会場:さいたま市プラザウエスト内 多目的ルーム
入場料:2,000円
使用楽器:クリストーフォリ、タンゲンテンフリューゲル 、クラヴィシンバルム

  
アカデミーリンク用画像


《フォルテピアノ(ピアノ指導者限定)》
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2018年06月22日

もっと知りたい!フォルテピアノ・アカデミーSACLA(6)



今年の夏、歴史的な幕開けになるであろう第1回フォルテピアノ・アカデミーSACLAが開催されます。フォルテピアノの第一人者である小倉貴久子さんがプロデュースする、古典派時代のフォルテピアノにどっぷり浸れる贅沢な3日間です。主催は《知っておきたい!トレンド古典派音楽》の塚田聡さんが代表のメヌエット・デア・フリューゲル

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このアカデミーをプロデュースしているフォルテピアノ奏者の小倉貴久子さんは、クラヴィコードでの練習を強く勧めていらっしゃいます。クラヴィコードの単純な機構は、指の動きがそのままハンマーに伝わり音に反映されるため、指(タッチ)を育んでくれるからです。

特に第1関節と手のひら。手のひらとしか上手く表現できないのですが、指の付け根部分から第2関節あたりの動きですね。クラヴィコードは、この部分が意識できていないといい音がしません。そのうえ、この部分と第1関節の連携が保たれていないと、これまた上手くいかないのです。

J.S.バッハの次男、C.P.E.バッハはクラヴィコードについて、以下のように述べています。

「よいクラヴィコードは、音が弱いということを除いては、 音の美しさではピアノフォルテに劣らないし、 ベーブンクやポルタートをつけることができる点で、 ピアノフォルテよりも優れている。」

「よいクラヴィコード」という言葉が印象的ですが、モダンピアノにも質のよいピアノとそうでないピアノがあるように、ピリオド楽器にも質の違いがあるものです。もちろんアカデミーで使用されるクラヴィコードは、フォルテピアノ第一人者の小倉さんに選び抜かれたクラヴィコード。コンサートでは、エマヌエル・バッハが述べているような演奏が堪能できることでしょう。

このクラヴィコード、書物に初めて現れるのは1404年のこと。15世紀半ばには楽器の図面が記録されます。現存している一番古いものは1543年製のもので、3オクターブ半ほどの音域があるそうです。ルネサンス期になるとヨーロッパ各地に普及するのですが、このころ日本へ初めてヨーロッパ船が到着しました。1542年のことです。そして、フランシスコ・ザビエルがその7年後に上陸。ザビエルの持ち物にはクラヴィコードがあったようで、当時の文書には「十三ノ琴ノ糸ヒカザルニ五調子ヲ吟ズ」とあります。

クラヴィコードは小型なため持ち運びしやすく、旅行ばかりしていたモーツァルトは、その中でも極めて小型のクラヴィコードを愛用していました。クラヴィコードには脚のないものも多く、容易に持ち運びができるだけでなく、机の上に置いて弾くこともできたんですよ。現代のキーボードのような手軽さですね。

《塚田 聡さんのミニコラム》

打楽器は叩いたら即座にバチを発音体から離すのが基本です。叩いたその場に留まれば、叩いたバチが消音材となってしまうからです(お能の太鼓のように意識的に消音して効果を出す場合もあります)。

ピアノ(打弦楽器)のハンマーも弦を叩くやいなや即座に弦から離れ落ち、その後は弦が振動するままに任せます。 ところがこのクラヴィコードという楽器、弦にタンジェントという金属片が触れている間だけ音が鳴り続ける、という逆発想からなる楽器になります。

タンジェントはそのかわり非常に小さく、弦との接地面は、面というよりほとんど線。その金属の線が金属の弦に触れている間だけ音が出るのです。 この逆発想の発音機構は、非常に音が小さいという条件下のみに許される仕組みです。

しかし、弦に接地したタンジェントを揺らせばヴィブラートがかかるという副産物も。 ピアノを弾きながら、キーを揺らして歌いたい衝動にかられた方は少なくないはず。その指を揺らしてヴィブラートをかけるという欲求を満たしてくれるのです。

この小さな音しかでないクラヴィコードですが、小さいながらも大変な世界をもっていて、その虜になった作曲家は数知れず。 心の機微の襞の中まで描き切るという感じでしょうか。クラヴィコードの世界に暮らすと、次第にこのミクロコスモスの世界だけで心が満たされるようになってゆくから不思議なものです。


新クラヴィコード2

《会期中のコンサート》
2018年7月20日(金)11:00開演(1時間)
会場:さいたま市プラザウエスト内 多目的ルーム
入場料:2,000円
使用楽器:A.ヴァルター、J.L.デュルケン、クラヴィコード 


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2018年06月19日

もっと知りたい!フォルテピアノ・アカデミーSACLA(5)



今年の夏、歴史的な幕開けになるであろう第1回フォルテピアノ・アカデミーSACLAが開催されます。フォルテピアノの第一人者である小倉貴久子さんがプロデュースする、古典派時代のフォルテピアノにどっぷり浸れる贅沢な3日間です。主催は《知っておきたい!トレンド古典派音楽》の塚田聡さんが代表のメヌエット・デア・フリューゲル

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前回ほんの少し触れたスクエアピアノ。このアカデミーでは、1814年製ブロードウッドのスクエアピアノが使用されます。ブロードウッドはイギリスを代表する製作家です。当時イギリスではスクエアピアノが大流行しました。何故これほどまでにイギリスでピアノが流行したのでしょう?

18世紀半ばまで鍵盤楽器の製作といえばドイツが主流で、19世紀後半の研究が世間に広まるまで、そこで活躍していたジルバーマンがピアノの発明家だと誤解されていたほどでした。このジルバ―マンのもとで多くの技術者が育ったのですが、ジルバーマンが亡くなった直後、プロイセンとオーストリアの間に7年戦争が起こります。ジルバーマンの技術を受け継ぐ弟子たちは、1760年に集団でイギリスへ渡りました。

弟子たちのリーダーだったツンペは、1761年に自分のアトリエを持ち、そこでスクエアピアノを製作します。現存している最も古いスクエアピアノは1766年製のもの。ツンペのスクエアピアノは、ジャックがハンマーレヴァーの根本を突き上げるという、イギリス式シンプル・アクションと呼ばれるものでした。スクエアピアノは小型で経済的だったため、イギリスで爆発的な人気を得ます。なんと1770年代には1年に何百台も製作されたそうですよ。

先日、この楽器を修復なさった太田垣至さんの工房にお邪魔させていただき、なんとみなさんより一足先にこの楽器を弾いてきてしまいました。あまりの美しい響きに感激! 深さのある箱型ならではの響きに、私は海を感じました。浅瀬、中くらいの深さ、深海。これらを弾き分けられる感覚が得られたからです。これはフリューゲル型(グランドピアノのような)のフォルテピアノにはない感覚でした。
  
ヴァルターに比べるとかなり弾きやすかったのですが、シンプルなアクションとはいえイギリス式だからでしょうか? ほんの少し弾いただけなので、思い返してみると大きな音では弾いていません。ヴァルターは大きな音を響かせるのが難しく、抑揚の幅がどうしても狭くなってしまう私ですが、果たしてこの楽器はどうなのか? アカデミーで試してみなければ!

《塚田 聡さんのミニコラム》

1814年に作られたオリジナルのスクエア・ピアノの登場です。ブロードウッドは、ベートーヴェンに絶賛されたピアノ・メーカー。ベートーヴェンは送られてきたフリューゲル(グランド)型の音域の広くなったピアノに感激して、あの低音和音連打で始まる 〈ヴァルトシュタイン・ソナタ〉を書きました。

まさに時代は産業革命の槌の音が響き始めていた頃。ピアノ自体は強固なつくりを備え音域が広がり、家庭的工房では製作が難しくなってゆきます。 そして一般市民が力をつけ裕福に、生活の時間にも余裕が生まれてきた時代。

彼らの需要に応えたのが、家庭にも置けるこういったスクエア・ピアノだったのです。 飛ぶように売れたこのタイプのピアノは、子女に弾かれることが多かったのでしょう。作曲家は、愛好家向けにソナチネを書いてその要望に応えました。

心を楽に、気軽にかしこまらずに弾くと、活気づいた19世紀初頭の響きが立ち現れるかもしれませんね。


新スクエアピアノ

《会期中のコンサート》
2018年7月21日(土)13:15開演(30分間)
会場:さいたま市プラザウエスト内 多目的ルーム
入場無料 使用楽器:スクエアピアノ 


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2018年06月15日

もっと知りたい!フォルテピアノ・アカデミーSACLA(4)



今年の夏、歴史的な幕開けになるであろう第1回フォルテピアノ・アカデミーSACLAが開催されます。フォルテピアノの第一人者である小倉貴久子さんがプロデュースする、古典派時代のフォルテピアノにどっぷり浸れる贅沢な3日間です。主催は《知っておきたい!トレンド古典派音楽》の塚田聡さんが代表のメヌエット・デア・フリューゲル

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今回ご紹介するアカデミー使用の楽器は、デュルケンとヴァルター。どちらも1795年製の復元楽器です。のちほど登場するスクエアピアノはイギリスで大流行した楽器なので、たくさん現存しているのですが、18世紀のフリューゲル型フォルテピアノ(グランドピアノのような)はそうはいきません。現存する楽器が少ない上に、劣化も激しい。

私は18世紀のフォルテピアノについては、現存する楽器より復元楽器の方がよい音色がすると感じています。実際、当時は劣化した音ではなく、劣化する前の音が響いていたわけで、復元楽器の方が当時の音色に近いのではないか?と想像したり。アカデミーで使用されるデュルケンは太田垣至さんが製作したもので、受講生は毎日の練習で弾くことができます。ヴァルターは小倉貴久子さんご所有の楽器でマーネによる製作です。

これら2台とも、ダンパーペダルは足ではなく膝にあるのですが、これが試してみるととても難しい! タイミング通りにできたとしても、指に影響が出てしまう。モダンピアノのペダルのように足先を動かすだけとは異なり、太もも全体を持ち上げることになるわけで、動きが大きく結構な運動量なのです。そのうえ、弾いている鍵盤の真裏でそれが行われるわけで。

当時のフォルテピアノは簡単に大きな音が出せるわけではなく、何度かレッスンを受けている私には、まだつかめずにいるコツのようなものがあります。指だけですら思い通りの音色や音の抑揚にならないのに、それに加えて膝レバーというのは、かなりハードルが高い。

アカデミーの受講生は、会期中フォルテピアノで練習ができます。連続3日間フォルテピアノで練習できるというのは、本当にありがたいこと。私のようにモダンピアノしか持っていない人は、フォルテピアノで練習できる機会がないのです。第一スタジオがない。チェンバロのスタジオはあっても、18世紀のフォルテピアノが置かれたスタジオはありません。

私がこのアカデミーに飛びついた理由はここにあります。毎日フォルテピアノで練習できるのですから、膝レバーに挑戦するつもり。聴講生に定員はありませんが、受講生は定員8名。今年は定員いっぱいになってしまいましたが、フォルテピアノで練習してみたい方は、ぜひ来年挑戦してみてくださいね!

《塚田 聡さんのミニコラム》

この2台のフォルテピアノは、モーツァルトとベートーヴェンに愛奏されたことで知られるウィーン式アクションの楽器です。

ウィーン式アクションとは別名、跳ね上げ式とも呼ばれ、原理がとてもシンプルで、キーを押すと奥にあるハンマーが跳ね上がって打弦するというもの。 アクションが軽く複雑性がないということは、指の細やかな動き・表現をダイレクトに弦に伝えることができることを意味しています。

特にデュルケンは軽やかに転がるモーツァルトの音楽そのもののような楽器です。ヴァルター・モデルの楽器は、ベートーヴェンがウィーンで最初に手にしたピアノに近いもので、デュルケンより音がしっかりとしてきます。作品2のソナタ集のような細かく動き回る音楽は、このような楽器を前にして書かれたのか、と納得するはず!5オクターブしか音域がありませんが、なんと作品31までのソナタはこの楽器で演奏することができるのですよ!

ウィーン式アクションをものにするには、相応しいタッチを身につける必要があります。抜けの良いダイナミックな表現から、静かに歌うテクニックまで、このふたつの楽器と向き合ってウィーン古典派の音を追求してみてください!作品が生命力をもって蘇る姿を見ることができるはず!


《デュルケン》
新デュルケン2

《ヴァルター》
新ヴァルター2

《会期中のコンサート》
2018年7月20日(金)11:00開演(1時間)
会場:さいたま市プラザウエスト内 多目的ルーム
入場料:2,000円
使用楽器:A.ヴァルター、J.L.デュルケン、クラヴィコード

  
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